ペッパーランチ事件「何も考えていなかった」
ペッパーランチ事件「何も考えていなかった」
拘束帯やピルの購入に10万円、「もう1品買ったら送料無料だったから」軸丸 靖子(2007-08-02 15:00)
先週金曜に公判が始まった大阪・心斎橋のペッパーランチ事件は8月1日、大阪地裁で(杉田宗久裁判長)第2回公判が開かれた。ステーキ・チェーン店の店長らが、夜中に訪れた女性客に睡眠薬を飲ませて拉致し、ガレージで強姦・監禁した事件。この日は、前回から引き続き供述書朗読と、同店元店長の北山大輔被告(25)、元店員の三宅正信被告(25)人に対する被告人尋問が行われた。検察や裁判長からの尋問は、犯行にどの程度の計画性があったのかという点に集中。「このまま監禁を続けてどうなるかは考えなかったのか」「店長の地位があって、しかも婚約者が妊娠しているのに、なぜこんなことをしたのか」などの尋問に対し、両被告は「何も考えていなかった」と繰り返し、大した考えもないままにレイプを計画し、凶行に及んだことを述べた。
公判が行われている大阪地裁=8月1日(撮影:軸丸靖子)SMプレイ用の拘束帯を1時間かけて装着
警察の供述調書では、女性を襲って現金を奪った後、店(ペッパーランチ心斎橋店)を出て、泉佐野市の三宅被告が所有するガレージまで車で移動する過程、強姦の詳細が明らかにされた。
両被告が女性を襲ったのは午前0時過ぎ。その後、三宅被告が泉佐野市まで北山被告の車を取りに行くのを待って、店を出発した。途中、99円ショップとコンビニでガムテープやコーヒー牛乳、焼酎、ウーロン茶などを購入。コーヒー牛乳の空パックで焼酎のウーロン茶割りを作り、睡眠薬の効きが悪かった女性に飲ませて再度眠らせた。
用意していたSMプレイ用の拘束帯を装着したのはガレージに到着する前。三宅被告が運転する車中で、女性のジーンズなどを脱がせ、両手首、首、肩、太もも、腰、アイマスクの順に1時間ほどかけて装着した。肩の拘束帯は、下肢のベルトとチェーンでつないで開脚させるため、腰のベルトはバイブレーターを固定するために使うものだという。
ガレージに到着したのは午前7時前。ガレージ内にある三宅被告の車の後部座席にビニールシートを敷き、ガムテープで固定してから、北山・三宅両被告で女性を抱えて三宅被告の車に移しかえた。
その後、三宅被告が滞納していた駐車場料金を払いに行っているあいだに、北山被告が1回目の姦淫に及ぶ。「女性の手首の拘束帯を運転席のシートに固定し、拘束帯を使って下肢を開かせたら興奮した」。さらに、戻ってきた三宅被告と、バイブレーターを挿入したり、口淫(こういん)、姦淫を繰り返したが、午前9時過ぎに女性の足の拘束帯を緩め、車と駐車場に施錠して、通常通り店に出勤した。「バイブ使って、一体だれが気持ち良いの?」と裁判長
被告人質問では、いつからどの程度の計画性を持って犯行に及んだのかについて、検察、裁判長の追及が繰り返された。
犯行に使われた道具は、4月24日から27日のあいだに、睡眠薬や緊急避妊用ピル、精力剤、女性用興奮剤といった薬類、スタンガン、バイブレーターと潤滑剤、SMプレイ用の拘束帯――の順で、携帯電話のインターネットサイトから購入した。だが、この時点まで、女性を襲うのに何を使うのかは、明確でなく、商品を買いそろえるうちに計画が具体化していったという。
以下、興味深いやりとりをいくつか紹介する。
弁護人 「バイブは何のために買ったの?」
北山被告 「興味本位。女性を辱めるためというより、気持ちいいと思って買った」
裁判長 「ちょっと、意味よう分からんな。襲った女性にバイブを使って、一体だれが気持ち良いの?」
北山被告 「……僕…ですかね」
裁判長 「それは女性を辱めることにならないの?」
北山被告 「……そういうことになりますね」弁護人 「三宅被告は小学4年ごろから不登校になり、中学も行かず引きこもっていた。お父さんの名前も漢字で書けない。2人のお兄さんは夜逃げして行方不明。被告は働いて1人暮らしをしていたが、本も読んだことがない。そうですね」
三宅被告 「はい」
裁判長 「弁護士さん、何を尋ねられたいんですか?」検察 「このまま女性の監禁を続けて、どうなるかとか考えなかったのか」
三宅被告 「考えなかった」
検察 「女性を解放しようとは考えなかったのか?」
三宅被告 「考えなかった。なぜ考えなかったのかは分からない」
検察 「女性の気持ちは考えなかったのか?」
三宅被告 「考えなかった」
検察 「襲う意図が明確でない時点で、睡眠薬と一緒にピルや興奮剤を買ったのはなぜ」
北山被告 「一定額以上の買い物になれば送料が無料になる。一括で買ったのは、その金額に届かせるため」裁判長 「4月24日から27日のあいだに一挙に全部買っている。かなり(お金が)かかったでしょう」
北山被告 「そんなでも。全部で10万円くらいです」
裁判長 「10万は大金でしょう。あなた給料はいくらだったの?」
北山被告 「45万から47万くらいです」
裁判長 「1回強姦するだけなら、こんなにいろいろいらんでしょう」
北山被告 「……はい」* * *
裁判長と検察官が、「何を考えているのか分からない」と再三質問を投げかけるのに対し、被告も「分からない」を繰り返す。こんなアホらしいやりとりしかできない事件に巻き込まれ、傷つけられた被害者の気持ちはどうか。
強姦は、デートレイプやDVも含めれば決して珍しくない。女性なら、知人や友人の中に被害者を1人、2人は知っているだろう。男性の犯罪意識も希薄なのだろうと感じられる。だが、強姦は許されない犯罪だ。この事件で、検察はかなりの年期の実刑を要求している。
この日の公判は午後1時から6時過ぎまでの長丁場だったが、39席の傍聴席は満席だった。また、前回に引き続き、法廷には衝立(ついたて)が設けられ、被害者本人が傍聴に臨んでいた。次回8日には結審の予定。
この事件は、探偵ファイルで「都市伝説」と言われ、一応の追跡調査をすると書かれたものの、一切続報なし。
各マスコミの報道も、営業中の店舗で、店長、従業員ぐるみで起こされた、衝撃的な事件にもかかわらず、その扱いは非常に小さい。*1
しかも、事件発覚から一週間以上報道されず、その間に事件現場となったペッパーランチ心斎橋店は閉店され、看板が撤去されるなどの事件隠蔽が行われていた。
そして、おわびについても、僅か二ヶ月も経たずにページから無くなるなど、企業側も隠蔽に必死と言う始末。
さて、その裁判の顛末も、「考えなかった」の連発。
この事件、監禁・傷害・強姦罪辺りで結審したあと、連続殺人、人身売買、死体損壊とかの余罪が出てきても一事不再理でOKなんて展開になったら嫌だなぁ。
参考:ペッパーランチ心斎橋店 女性客拉致監禁強姦強盗事件 まとめ - トップページ
*1:直後にショッキングな事件が連続した事もあるが、それを差し引いても少ない