“TPPは特異な協定”は本当か?:日経ビジネスオンライン
どうにも、TPP推進論者は、経済のグローバル化が不可逆的に展開し続けるという、確信を前提に「乗り遅れるな」「置いていかれる」という論旨を展開しているように見える。
しかし、今の世界状況は経済のグローバル化の行き過ぎの結果、世界恐慌を経てブロック経済に移行した、世界大戦前夜に近い状況にある。
もちろん、過去の世界大戦に学んだ米国や欧州は、同じ過ちを繰り返さないように、そして既に得ている権益を失わないように、戦争回避と同時にグローバル化による利益拡大に向けて様々な手を打っている訳だが、一世紀遅れた帝国主義を抱えたままの中国、ロシアという亡霊が、欧米に握られている既得権益を奪い取るべく、戦力強化に余念が無い。
早ければ2020年代、遅くとも2030年には中国のアジア地域における戦力は米国を追い抜き、インドや日本といった国々が米国と連携して当たらない限り、アジアでは中国一強時代がくるだろう。
これは、中国が内乱でも起こして分裂しない限り、経済崩壊しようが、確定している。(既にそれだけの軍事費を投入済みで、計画が動いているので。中国国産空母もとっくに起工している)
今でこそアメリカ相手に勝ち目が無い中国は、領土的野心を口にするだけに留めているが、アメリカ相手に勝ち目が出た上で、中国の経済状況が今より悪化しているだろう将来では、必然的に実力行使に移る事は、ほぼ確定した歴史的必然だ。
上記の歴史が繰り返されるなら、必ずその前にグローバル化に対する「揺り戻し」が発生する。
当然、TPPはもちろんFTAも、「揺り戻し」に際して「障壁」以外の何物でも無いが、2国間協定であるFTAに対して、多国間協定であるTPPは「破棄」が極めて困難だ。(というより破棄する仕組みが存在しないらしい)
もちろん、韓国のように国際社会の信頼を失っても良いなら、一方的に破棄することは可能だが、日本と韓国では失われる物の質量が違いすぎる。*1
簡単に言えば、FTAで間に合う話なのに、なんでFTAより圧倒的にリスクの高いTPPにしなきゃならんのか、という部分に関するリスクとリターンを、TPP推進論者は説明できていないのだ。
多分、前提として「経済のグローバル化が不可逆的に展開し続ける」から、協定破棄に関する心配をする必要が無い、と考えているのだろうが、無責任な経済屋ならともかく、政治が常に最悪のリスクを検討しないのは、単なる怠惰だと思う。
本当に、TPPのメリットは、そのリスクをFTAでヘッジするより大きいのか否か、どうにも楽観論と無邪気な平和ボケで目先の利益に右往左往する経済屋の話は、どうにも信用できない。
尖閣問題が発生するまでは、日中間の戦争なんて「(日中の経済相互依存が大きいので)絶対起きない」と豪語していた連中の無責任なタワゴトだしね…。