gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

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いとも簡単に妨害できるGPS、待たれる代替技術  :日本経済新聞

(2013年7月27日付 英エコノミスト誌)
ロンドン証券取引所の近辺で、衛星から送られてくる全地球測位システム(GPS)信号を何者かが妨害している。その現象は毎日発生し、日によっては10分間も続く。車のナビゲーションシステムが機能を停止したり、金融機関が取引の発生日時を記録するタイムスタンプが影響を受けたりすることもある。
だが外国勢によるサイバー攻撃というわけではない。このような事象をモニターする英クロノス・テクノロジーの創業者で専務取締役のチャールズ・カリー氏によると、最も考えられる「犯人」は、上司からの位置追跡をかわそうとする運搬トラックの運転手だ。
■入手しやすいGPS電波妨害装置、武器にも
GPS信号は微弱だ。カリー氏は、20ワットの電球1つを1万9300キロ先から見ているようなものだと言う。一方、GPS電波妨害装置は安価で販売されている。ダッシュボードに取り付けるタイプは50ポンド(約7500円)ほどで手に入れることができる。
(中略)
米国ではこうした装置の販売や使用を法律で禁じている。
(中略)
妨害装置は、しかるべき者の手に渡れば武器にもなる。英国軍はウェールズのブレコン・ビーコンズ国立公園で装置のテストを行っている(同公園は軍事演習場としても使われている)。北朝鮮は、韓国内のGPS信号を遮断するためにトラック搭載型の妨害装置を使っている。北朝鮮からの電波妨害は2010年8月から始まった。最初は4日間だった。以降、北朝鮮内の3カ所から発せられる電波妨害攻撃は1回当たりの日数を延ばしている。2012年5月には16日間連続となった。この時は、1016の航空機と254の船舶が異常を報告した。
カリー氏は、犯罪者やテロリストが都市全体、あるいは海上航路を狙ってどこでも瞬時にGPSを妨害する可能性を懸念している。北朝鮮のような規模の仕掛けがなくとも相当な妨害が可能だ。
(中略)
正常に動作しない衛星や太陽活動時の自然干渉がGPS信号に作用し、船舶が航路から外れるケースも発生している。ナビゲーションの専門家であるデビッド・ラスト氏は、GPS妨害装置を装備したクルマがカーフェリーに乗船することで不慮の停電が起き、船が難破する危険もあると説明する。
また、発信元になりすまして偽情報を送信する「スプーフィング」も脅威だ。2011年12月、イランは米国の無人偵察機を捕獲した。この時、捕獲する前にスプーフィングを行ったと発表した(専門家の大半はこの主張をまともに取り合っていない)。
(中略)
■国によるGPS代替技術の導入始まる
GPS妨害を解決する方法の1つは、別のナビゲーションシステムを採用することだ。韓国政府は4月、拡張型の長距離航法システム(eLoran)と呼ぶ地上電波塔43機から成るネットワークを構築する計画を発表した。eLoranは第2次世界大戦で初めて使用された長距離航法システム技術を基にしている。GPSよりずっと強い信号を発信するこの技術を使用することで、2016年までに、飛行機や船舶に今以上に安全な信号システムを提供できるはずだ。韓国は、中国とロシアの支援を受けつつ、このシステムを国全体に広げたいと考えている。
(中略)
国防総省の傘下にある国防高等研究計画局(DARPA)は、単一チップによる時間慣性測定ユニット(TIMU)の実験を行っている。プロジェクトリーダーのアンドレイ・シュケル氏によると、完成した装置は小さなジャイロスコープ(回転儀)と加速度計を用いて自らの位置を測る。衛星や電波塔は使わない。
(中略)
米空軍の新しい地中貫通型爆弾は、同軍の衛星システムが敵に遮断されるのを防ぐ機能を備えている(この爆弾はイランの核施設を破壊する作戦を意図して設計されている)。欧州のミサイルメーカーであるMBDAも同様の製品を開発している。
だが多くのユーザーにとって、GPSやその他の宇宙ベースのナビゲーションシステム――ロシアの「グロナス」、中国が一部完成させている「北斗」、欧州連合(EU)が遂行中のプロジェクトなど――は今後も生活に不可欠で、どこにいても利用するものだ。そして、これらのシステムもGPSと同じく脆弱性を抱えている。生活や生計のために位置情報に頼らざるを得ない人にとって、障害や妨害があっても素早く復帰できる代替システムの登場はいくら早くても早すぎることはない。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK06022_W3A800C1000000/

GPSなんて、単なる電波信号なんだから、そら妨害は簡単だわなぁ。
それ故に、軍事分野においては、GPSだけでなく計器航法やら画像誘導なんかを併用する訳だし。
ちなみに、韓国が導入しようとしているロランは日米では既に廃止が決定している「古い技術の焼き直し」に過ぎない。*1
なので日本がコレを理由にロラン復活だとか、アップデート再整備とかはしないと思われ。
単なる、電波出力の違いなら、より強力な電波で妨害できるって話だから、記事中にある北朝鮮イラクのような国家組織による準軍事攻撃に対しては心もとない。*2
閑話休題
平時における重要インフラとして、GPS一辺倒に頼る事の危険性は確かに存在するが、実のところ、記事にあるような懸念は、北朝鮮の韓国に対する電波テロのような「戦争時」レベルの話だったりする。
少なくともトラックの運ちゃんの使うGPS電波妨害装置なんて、彼らが普段使う違法無線機同様に、国内法で取り締まれる話であり、個別のGPS利用機器に軍事レベルの対策するのはコストの面で折り合わないからだ。(民生用に普及できるほどコストダウンできれば別だが)
そもそも米国の軍用インフラであるGPSは、アメリカの都合で使えなくなってしまう事は最初から利用前提になっている物だ。*3
なので、今のGPSに頼り切ったインフラは、あくまでも平時の民間利用の範疇で構築されて居る筈で、日本のように独自のGPS網を持たない国が、GPSが使えなくなって社会レベルの深刻な問題や脆弱性が露呈するとしたら、それこそ国家方針自体が間違ってるというべき話だろう。(実際には、かなり依存してるヤバイ状況らしいが…)
代替システムはあるに越した事は無いけれど、現状で、本気で社会がマヒするレベルで電波テロが発生したら、戦争モンの情報攻撃なんで、平和的に代替策を探すより、攻撃元の電波妨害装置を物理破壊する方が速い気がする。

*1:だから韓国は中露と協力してる

*2:駄目な双発機と一緒で、同一延長線上の対抗技術でダメになってしまう対策なら、代替システムとしては不完全な為

*3:精度劣化は撤廃されたが、サービス提供地域の限定は可能である