gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

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クルーグマン教授、「緊縮財政」をメッタ斬り | The New York Times | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト

FRB米連邦準備制度理事会)議長のジャネット・イエレンを始め多数のエコノミストが、2008年以降の世界の経済危機はだいたいが「デレバレッジ」に絡んだものだと見ている。つまり、あらゆる地域の人々が一斉に負債を減らそうとしている、ということだ。
では、なぜデレバレッジが問題なのか。それは、「誰かの収入」は「誰かがおカネを使った結果」だからだ。私が使えば、それはあなたの収入になる。だから、全員が同時に支出を減らしたら、世界中の収入が減ることになる。
(中略)
実際のところ、緊縮政策は前代未聞のレベルで進められている。IMF国際通貨基金)が指摘したように、利払いを除いた実質政府支出は富裕国全体で減少している。なかでも、多額の債務が問題となっている南欧の国々で大きく削減されている。しかし、ほかの国々でも削減は行われており、ドイツや米国など、史上最低水準の金利で借り入れができる国でも支出は減っているのである。
(中略)
この緊縮政策は問題を悪化させただけだ。そして、それは予想されたことだった。なぜなら、誰もが財布のひもを締めるべきだという要請は、経済において負債が果たす役割が誤解されたために行われていたからだ。
負債についての誤解があることは、「子供たちにつけを回すな」などのスローガンとともに批判が行われるときに示される。こうした言い分は一見正しいように思われる。しかし、次の点について考えてみよう。負債を膨らませた世帯はそれにより貧しくなる。では、この状況を国の負債全般に例えられるだろうか。
そうはできない。
(中略)
欧州における負債削減策と政治危機とは、直接的に結びついている。
欧州の指導者たちは、経済危機は分不相応に暮らす国がおカネを使い過ぎたために起こったと完全に信じている。ドイツのメルケル首相は、質素な生活に戻ることが打開策であると主張した。同首相は、倹約家として有名な「シュヴァーベン地方の主婦」を、欧州は見習うべきだと言い切る。
(中略)
それでは緩やかに大惨事に向かおうとしているようなものだ。負債を抱える欧州の国々はたしかに財布のひもを締める必要があった。しかし、彼らが強いられた緊縮政策は信じ難いほど厳しいものだった。
一方で、ドイツなどの主要国は、緊縮政策をとっている国々の削減分を埋め合わせるために支出を増やす必要があったのに、やはり支出を減らそうとした。その結果として生じたのは、負債比率の低下は起こり得ない環境だ。つまり、実質成長率は鈍り、インフレ率はゼロに近いものとなり、最も状況の悪い国ではデフレが根を下ろしつつある。
(中略)
本当にユーロがダメになったら、その墓碑にはこう記されるべきだ。「(国の負債を個人の負債になぞらえるという)ひどいたとえによって死去」と。

http://toyokeizai.net/articles/-/60520

日本の失われた20年も、本当にコレが原因の一つと言っても過言じゃないんだけど、ただ日本の不幸は、政府がその失敗に気付き、国債を発行して財政支出に励んでも、与党批判しか能の無い野党はそれを無駄な投資だと非難し、マスコミはその尻馬に乗って国民の財布の紐を締めさせるようなマイナス報道しかせず、低能な国内銀行はその雰囲気に乗せられて国内融資を渋りに渋り、結果的に日本政府が1000兆円もの借金を背負う羽目になった金の多くは「流動性の罠」によって海外へ流れ、世界は未曾有の好景気に沸き立つった一方、日本だけは長く辛い不況を託っていたという体たらくだったからな。
中国は日本のバブル崩壊と失われた20年を十分に研究し、その回避に自信があるって話を10年くらい前に聞いた事があるんだけど、今の体たらくを見る限り、その勝算は「日本と違って経済統制がしやすいから」という体制の違いに基づく自信だったようにしか思えない。
…とは言え、リーマン直後に超大型の公共投資をぶち上げて、景気の腰折れを回避したのは、研究の結果と言ってもよいのではないかと思うが。(それはそれで、問題の先送りと爆弾の肥大化を招いたが…)
閑話休題(それはさておき)
欧州に限っていうなら、ユーロという単一通貨のお蔭で、国ごとの経済対策で打てる手が少なくなっているから、結果として間違った選択と言われようとも、これ以外の方策は無かったと思うわ。
仮に、アメリカのように金融緩和をユーロでやった場合、ユーロ安はドイツの輸出を後押ししてEU内の経済格差を大きくしてしまい、今より酷いEUによるドイツ搾取がドイツ国民を怒らせて「ドイツのEU離脱」という最悪の結果を招く可能性だってあり得たわけで。
記事中にあるように、仮にドイツだけが支出を増やすような政策を強要されたとしても、同様である。「なんでドイツだけが」という雰囲気は、すでに深刻なレベルに達していると思う。
個人的に今のEUの経済政策は、「みんなで不幸(しあわせ)になろうよ(by後藤隊長)」という奴だと思っている。