gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

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トルコのクーデターはなぜ失敗したのか : 地政学を英国で学んだ

トルコのクーデターはなぜ失敗したのか
今日の横浜北部はどんよりとした曇り空です。まだ梅雨は明けないのでしょうか。
さて、今回のトルコでのクーデター未遂事件に関して、デビュー作で『クーデター入門』を書いている本ブログでも同じみのルトワックが、さっそくフォーリン・ポリシー誌に興味深い記事を掲載しておりましたので、その要訳を。
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トルコのクーデターはなぜ失敗したのか
by エドワード・ルトワック
「軍事クーデター成功のためのルール」の第2条は、実行に参加しない機動部隊(これには当然だが戦闘機の飛行大隊なども含む)は、動員不可能の状態にしておくか、介入してくるには遠すぎる場所に置いておくべきである、というものだ(サウジアラビアの陸軍の部隊が首都から遥か離れた場所に配置されているのは、まさにそのような理由からだ)。
ところが今回のトルコのクーデター計画者たちは、実行に参加しない(戦車、ヘリ、そして戦闘機)部隊を活動不能にしておくことができなかったのであり、いざ実行段階になると、逆に軍の内部からの反発を強めることになってしまったのだ。
ところがこのような事実は、はじめから意味がなかったのかもしれない。なぜなら彼らはすでに、このルールの第1条である「まず最初に政府のトップを奪取(もしくは少なくとも殺害)すること」を守れなかったからだ。
(中略)
クーデターの計画者たちは、非協力的な指揮官たちをしっかりと拘束できていれば、わざわざ軍の大多数の兵士たちを導入する必要はなかった。初期段階で成功すれば、彼らも勝ち馬に乗るかたちでいずれクーデターに協力するはずだからだ。
(中略)
トルコの野党もすべて今回のクーデターには反対しているが、彼らはエルドアンの寛容的な態度に油断してはならない。独裁体制への動きは今後も続くであろうし、さらにそれが加速することもありえる。他のイスラム系の国々と同じように、トルコでも選挙の結果はそれなりに尊重されるだろうが、民主制そのものは尊重されない。 ===
個人的に「さすがルトワック」と感じるは、クーデターの手順や原則から分析しているのではなくて、さらにトルコの国内事情を細かく解説しながら書いていることでしょうか。
(後略)

http://geopoli.exblog.jp/26021504/

二・二六事件もそうだけど、軍の一部によるクーデターってのは、非常に失敗しやすい。
何故なら、軍の一部しか掌握していないので、同様の暴力装置である他の部隊にも「同じ事(武力制圧)が出来る」からだ。
過半数の部隊を掌握するか、自由に動ける敵部隊を自勢力以下に抑えられなければ、「暴力による抑止」という機能が十全に働かず、増援の無い籠城に等しいクーデターなんて、失敗が約束されている。
しかし、引用記事でも、引用者にも皮肉られているが、エルドアン大統領自身が、クーデター勢力が望む「非民主的でイスラム原理主義的なトルコ」を目指している大統領であり、独裁色を強める現在、本来ならオバマメルケルが支持を与えるような大統領ではない点は、本当に皮肉だ。
クーデターによる政権転覆を基本的に認めない欧米によって、独裁者を目指すエルドアンが信任を得てしまうという結果になったのだから。
しかし、一度は国民国家を目指して成立した国が、あっさりと独裁化してしまう辺り、民主化という物は、最低でも政教分離を徹底できる程度の文化成熟度が無い国には、無理なんだなぁ、と。
このクーデターが成功していても、民主主義からかけ離れた軍事独裁政権が誕生しただろうし、失敗した以上は、独裁者エルドアンが大手を振って軍隊内部に粛清の嵐を吹き荒らす事は確定している。
トルコは最悪、NATOからの離脱もあり得るで。