gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

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中国初の国産空母進水 軍事力増強へ懸念も | NHKニュース

中国は26日午前、初の国産空母の進水式を行いました。習近平指導部は「海洋強国」の建設に向けた重要な一歩だと位置づけていますが、周辺国の間では、海洋進出とともに軍事力を増強する中国への懸念も広がりそうです。
中国初の国産空母の進水式は、日本時間26日午前10時ごろから、東北部・遼寧省大連の造船所で行われました。
国営の新華社通信によりますと、進水式には中国軍の制服組トップ、范長竜中央軍事委員会副主席が出席し、周辺の船が一斉に汽笛を鳴らすなか、船体がゆっくりと、建造を行っているドックから出されました。
今回、進水した国産空母は全長300メートル余りで、排水量はおよそ5万トン、通常動力型で、艦載機が滑走して飛び立つ甲板はそり上がった形の「スキージャンプ式」を採用しています。大きさや外観はウクライナから購入して改修した初めての空母「遼寧」をほぼそのままコピーしていますが、より多くの艦載機を積めるよう改良を加えたとされます。
今後、各種装備の取り付けなどを行い、2020年ごろに就役すると見られています。習近平指導部は、初の国産空母の建造を「海洋強国」の建設に向けた重要な一歩だと位置づけています。
中国は今後も国産空母の建造を進め、将来は少なくとも4隻の空母を保有して海軍の活動範囲を広げる計画と見られます。日本を含む周辺国の間では、海洋進出とともに軍事力を増強する中国への懸念も広がりそうです。
空母開発の狙い
中国海軍は近年、「近海防御、遠海護衛」という2つの柱を掲げています。
東シナ海南シナ海といった近海だけでなく、経済発展に伴って拡大を続ける、中東やアフリカなど中国から離れた場所の権益を守る能力の強化を図っていて、空母はその中核に据えられています。
ただ、ウクライナから購入した「遼寧」や、今回進水した空母が採用している、そり上がった甲板を滑走して飛び立つ「スキージャンプ式」は、艦載機が十分な推力を得られず、搭載できる武器や燃料の重さに制約が生じているとされています。
また、通常動力型であるため、原子力を動力源とするアメリカの空母と比べると、速度や航続距離などで劣ります。このため、中国海軍は、将来的には、蒸気か電磁力を使って艦載機を発射する「カタパルト」という装置を使用し、原子力を動力源とする空母の開発を目指していると見られています。
中国は、今回、進水した空母に続く2隻目の国産空母の建造をすでに上海で行っているとされ、今後、少なくとも4隻の空母を保有する計画だと見られています。上海で、建造しているとされる空母が、中国が将来、保有を目指す本格空母のベースになると見られることから、発艦の方法や動力源にどのような形式を採用するのか注目されています。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170426/k10010961711000.html

ちなみに、この艦は形式番号的に遼寧(001型)級2番艦と言うより、遼寧改(001A型)級1番艦といった位置づけで、名前は「山東」。
もう一隻、上海で建造中の艦は「広東」という名らしいけれど、「広東」は「山東」の同形艦(001A型)とも、新型である002型と呼ばれる「蒸気カタパルト搭載艦」とも言われている。
…練習空母があるんだから、普通ならそっちでカタパルトの搭載テストをしてから、実際に搭載艦を建造するもんだと思うのだが、中国では、いきなり実績ゼロの搭載装備を、新型艦に載せて建造してしまうらしい。
それなら、なんで最初から「山東」に載せてないんだ?
もしかして、既に「使える」遼寧と、それのコピーである山東があれば、カタパルト搭載型の広東が失敗しても、2隻の空母が配備できる、と言う「戦力空白期を無くす事を優先した」結果だろうか。
なんとも、軍事費に余裕がある国らしい、贅沢なやり方である。
ぶっちゃけ、遼寧山東の艦載機だけでは、中国が空母を必要とする国…日本やインド相手に使うには、全く戦力不足であり、確実に長く使える戦力を揃える気なら、もっと時間を掛けて着実に歩を進めるべきなんだが、中国の「何が何でも急いで使える戦力を揃える」っぷりは、かの国が戦争を目前に控えているとしか思えない焦りが伝わってくるのよね…。
ちなみに、この「山東」、予定では2018年に「実戦配備」だとか。
…普通に考えて、進水が今日なら、艤装に1−2年、そっから海軍に引き渡して、乗員と戦力である艦載機を乗せて、完熟訓練に更に最低2−3年は掛かるだろうに…。
閑話休題(それはさておき)
山東は、基本的に遼寧のコピーではあるけれど、いくつかの点で新機軸を試している。
1つ目は、アドミラル・クズネツォフ航空母艦の主機である船舶用大出力蒸気タービンエンジンを開発出来ない中国は、電力駆動方式に切り替えている。
簡単に言えば、ガスなのかディーゼルなのかは不明だが、発電した電力を使って、モーターを回して推進すると言う事である。
アメリカではズムウォルト級に採用されている方式で、これはこれで、賢明な判断と言える。
ただし、アメリカは最新空母であるジェラルド・R・フォードでも蒸気タービン方式で推進しており、空母の様な大型艦に十分な推進力を与える方法として、少なくともアメリカは電力駆動方式を採用しなかった事は、間違いないので、何らかの問題はあるのだろう。
2つ目は、元々「重航空巡洋艦」であり、アイランド部分に「空母としては」無駄が多い設計になっていた部分を、アメリカの空母を参考に、シンプルなアイランドに再構築している。これにより、飛行甲板がより広く使えるようになっている。
これは、純粋な改良点と言えるだろう。
3つ目は、遼寧の場合、撤去と再構築であった、「重航空巡洋艦」としての装備であったVLSや対潜装備を「最初から無い物として新設計された」事。
当然だけど、改築より新築の方が、そういう「間取りの変更」は効率が良いので、遼寧より空間効率が向上しているし、後付けしたレーダーや火器管制システムなど、旧ソビエト時代には想定されていなかった装備を、より自然な形で搭載できるようになっている。
真偽不明だが、フェイズドアレイレーダーを搭載しているらしい。
電力駆動方式と合わせて、ズムウォルト級ミサイル駆逐艦をかなり意識した設計と言えるかもしれない。
とはいえ、根本的な問題として、ボイラーから高圧蒸気タンクへと高圧水蒸気を溜める為の余力が必要で、長大で複雑な蒸気配管の設置が必要な為、試験的な仮置きならともかく、蒸気カタパルトは「後付け」が難しい装備。
だから、蒸気カタパルトが無い遼寧山東は、これから劇的に性能向上する余地は無い。
そもそも、蒸気タービンエンジンが装備されている遼寧はともかく、電力駆動の山東では、スチームを得る為に専用のボイラーが要る可能性が高い。
となると、蒸気カタパルト搭載艦となるかもしれない広東が、幸運にもトントン拍子で上手く行ってしまった場合、遼寧山東は早い段階で退役する可能性もありそう…。
なんというか、本来ならテスト艦である遼寧でやるべき事を、時間短縮の為に「実際に作ってみよう」で試された山東って、不憫な気がしてきた。
もちろん、広東も蒸気カタパルト開発に失敗すれば、不憫な事になると思うが。
一応、電磁式カタパルトなら、蒸気カタパルトと違って、配管では無く配線だから、後付け難易度は下がる。
しかし、アメリカがようやく2015年に実用化したばかりの最新技術を、中国がコピーするには、まだまだ時間が掛かると思われるから、中国が原子力空母の建造に着手するのは、最低でも広東で蒸気カタパルト開発に成功してからなんだろう。