gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

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米ロが核ミサイルの軍拡競争に再び突入する危険性 INF条約を無視して開発進めるロシアに、米国も対抗する姿勢示す | JBpress(日本ビジネスプレス)

くすぶり続けるINF問題
以前の拙稿では、ロシアのINF(中距離核戦力)全廃条約違反問題について取り上げたが(「トランプ政権に踏み絵を迫るロシア」)、この問題が再び大きな注目を集め始めた。
欧州全域には届くが米本土には届かないソ連のミサイルが欧州に大量配備されたことにより、欧州での限定核戦争に現実味が出てきたのではないか・・・。
このような懸念から、米ソが互いの本土を狙う戦略核戦力(射程5500キロ以上)と、戦場で使用される戦術核戦力(射程500キロ未満)以外の中距離核戦力(戦域核戦力)は全廃してしまおうというのがINF条約の趣旨であった。
ただし、対象となるのは地上発射型の巡航ミサイル弾道ミサイルであり、艦艇や航空機から発射される巡航ミサイルは規制を受けない。
また、INF条約では既存のミサイルを全廃するだけでなく、該当するカテゴリーのミサイルの配備を今後も無期限に禁止している。ミサイル自体の生産はもちろん、その発射装置を製造したり、発射試験を行うことも認められない。
ところがロシアは近年、この条約に反して、米国が「SS-C-8」と呼ぶ地上発射型巡航ミサイル(GLCM)を開発してきたと見られている。
SS-C-8は「イスカンデル-M戦術ミサイル・システム」に似た移動式発射機から発射されるGLCMであり、その射程は1000キロから数千キロに及ぶと見られる。したがって、その生産や発射試験は明らかな条約違反だ。
それどころか、今年2月にはついにSS-C-8 GLCMが実戦配備されたのではないかという報道(『ニューヨーク・タイムズ』2月14日付)まで登場し、ロシアの条約違反問題はいよいよ深刻になってきた。
だが、ロシア政府はこのような疑惑を一切認めておらず、それどころか条約に違反しているのは米国であると主張し(例えば欧州に配備されたミサイル防衛システムからは巡航ミサイルも発射できるではないか、など)、双方の主張は全く噛み合っていない。
(中略)
ロシアの条約違反が仮に事実だとして、それはいかなる意図によるものなのだろうか。
一面において、米国によるGLCMの再配備はロシアにとって困った事態である。
INF全廃条約が破綻し、欧州に米露のINFが配備されれば、ロシアを攻撃し得る核弾頭の数は増加する一方、ロシアのINFは米本土には届かないという不均衡が発生する。
(中略)
戦術レベルと戦略レベルの間に戦域レベルの核兵器が存在していれば、全面核戦争へのエスカレーションを抑制しつつ戦術核兵器を使用できる可能性が出てくるためである。
ことに近年、ロシアは有事における核の積極使用を示唆するようになっており(もっとも、これが「戦略」と呼べるものなのか、「核による恫喝」なのかについては議論が別れる)、この意味ではロシアにもINFを配備する軍事的メリットがないとは言えない。
中国を意識しているのではないかという論者もいる。
(中略)
INFについても、従来はごく限られた数と性能のミサイルしか保有しなかったが、現在では質量ともに極めて高いレベルに達していると見られる。
しかも、中国はINF全廃条約に拘束されず、今後もこのような軍備管理を受け入れる意図は乏しい。
大洋の向こう側にいる米国はそれでも本土防衛に大きな支障をきたすわけではないが、中国と4000キロもの陸上国境を接するロシアにしてみれば極めて不気味な話であろう。
(中略)
当時のソ連は自国がINF配備を進めていることを隠し立てはしなかったのに対し、現在のロシアはINF全廃条約違反の事実そのものを認めていない。
米国は相当の証拠(例えば衛星情報や電波情報)を掴んだうえでロシアを非難しているはずだが、いずれも最高度の軍事機密であるために公開することができない。
こうした中で米国がGLCM開発を進めれば、むしろロシアは「米国への対抗措置」という口実で自国のINF全廃条約違反を正当化する可能性が出てくる。
こうした難題にドナルド・トランプ政権は今後、どう対処するのか。近く出揃う新たな国防政策文書群(国家安全保障戦略、国防戦略、核態勢見直し、弾道ミサイル防衛見直し等)の方向性が注目される。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51697

この分析は、的を射てると思う。
アメリカに届かない中距離核戦力をロシアが整備したところで、米露関係には本来的に関係は無いが、中露関係には大きな意味があるんだから。
ロシア民族は基本的に嘘つきで、約束の一つも守れない、信頼できない民族だが、アメリカのロシアアレルギーも病的で、同レベルか、それ以上に信頼できない中国に対しては激甘なのに、ロシアに対しては強硬極まる姿勢を打ち出し続けている。
結果として、ロシアはアメリカと対立しながら、陸続きの潜在敵国である中国にも飲み込まれないように身を守りつつ、対米と言う一点で協力しなければならないと言う、難しい立場になっているのだ。
特に、フランスや中国は戦術核の使用を前提に戦力を構築しており、アメリカやイギリス相手なら、戦略核を互いに向け合って居れば済むところを、フランスや中国を相手にするロシアは、戦術核も整備しなければならない。
ある意味、ロシアは仏中という、核兵器を実用前提で配備するならず者国家に対抗する為、アメリカより重い負担を背負っているのだ。
プーチンが日本に対して比較的融和路線なのは、アメリカの同盟国ではあるが、中国とは根本的な部分で対立関係にある地域大国だから、と言う事は間違いないだろう。