gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

はてなダイアリーが更新できなくなったので、泣く泣くこちらに移行。使いづらいようなら、別なサービスへの引っ越しも検討する予定。元ダイアリー:http://d.hatena.ne.jp/gayuu_fujina/

「ズムウォルト」主砲弾すらない現状とは あの異形の駆逐艦はその後どうなった? | 乗りものニュース

計画は頓挫、どうしてそうなった?
2016年にアメリカ海軍へ就役したばかりの、異形の新鋭駆逐艦ズムウォルト級が、はやくもその存在価値にかかわる重大な危機に直面しています。
ズムウォルト級は駆逐艦とは名ばかりに、日本海海戦で活躍した戦艦「三笠」に匹敵する満載排水量1万6000トンもの巨体を持ち、2基備える大型艦砲「155mm AGS(先進ガンシステム)」によって地上を精密砲撃するために建造されました。そして敵の反撃を受けやすい沿岸部で活動することを見越し、ステルス性を最大限追及しレーダー乱反射減を排除したユニークな設計を持つに至ります。
主兵装たる2基の155mm AGSは、まさにズムウォルト級の存在価値そのものと言えます。155mm AGSは「LRLAP(長距離対地攻撃弾)」と呼ばれる補助ロケットを有す砲弾を発射し、その最大射程は破格の153kmに達します。またGPS/慣性誘導を備え標的を確実に直撃できる精度を実現、ズムウォルト級では2基合計で1分間あたり20発ものLRLAPを正確に標的へ叩き込むという、とてつもない火力を発揮するはずでした。
ところが2016年11月、肝心のLRLAPの開発がキャンセルされてしまいました。155mm AGSによって射撃可能な砲弾はLRLAPしかありません。そしてこのLRLAPの開発が中止となってしまったのですから、ズムウォルト級の強力な艦砲は単なる2本の「棒」に過ぎないという、極めて深刻な事態に追い込まれてしまったのです。
LRLAPが開発中止となった最大の原因は、1発あたり約1億円という高コストにあります。一般的に大砲から打ち出される砲弾は単価が安いという利点を持ちます。たとえば陸上において使用される155mm榴弾砲における従来型の弾丸は、1発あたりの単価が数万円〜20万円程度に過ぎません。ゆえに大量に投射するような使い方に適しています。
しかし1億円にも達するLRLAPでは1分間で10発〜20発を集中的に叩き込むような本来想定した使い方が難しくなってしまいました。この1億円という価格は1500kmの射程距離を持つBGM-109「トマホーク」巡航ミサイルにほぼ匹敵し、さらにアメリカ海軍の主力艦上戦闘機F/A-18E/Fに搭載可能なGBU-39「SDB」誘導爆弾の10倍以上もの高値です。
(中略)
なぜズムウォルト級は砲があっても弾がないという、重大な状況を招いてしまったのでしょうか。
(中略)
原因は、ズムウォルト級の建造計画が当初予定の32隻からわずか3隻へ縮小されてしまったことにあります。
(中略)
LRLAPの生産計画も大幅な見直しを余儀なくされ、調達予定数は計画の1割を割り込む1800〜2200発にまで削減されてしまいました
(中略)
LRLAPのコストは1発あたり500万円以下の見込みから1億円へと実に20倍も膨れ上がってしまったのです。
(中略)
2018年現在、LRLAP中止による代替砲弾の開発は未定のままであり、もはや対地砲撃プラットフォームとなる当初の目的は完全に失われてしまいました。
(中略)
ズムウォルト級は軍用艦艇としては最大の発電容量を有しており、将来的には155mm AGSから大電力を必要とするレールガンに置き換えるといった計画もあるようです。
(中略)
「戦う軍艦」としての価値も根底から崩れてしまった3隻のズムウォルト級を今後どのように運用するべきであるのか、アメリカ海軍は難しい課題の答えを導き出す必要に迫られています。
(後略)

https://trafficnews.jp/post/80834

この艦の不幸は、F22もそうだけど、議会の反対で量産効果が見込める遥か手前の数量しか生産せずに中止し、「高い!」と、価格を理由に処断されてしまうところだと思う。
もちろん、近代戦争と言うのは札束で殴り合いして、より早く、より多くの相手の金を減らした方が勝ちと言う世界だから、コスト意識を重視するのは当然なんだけど、アメリカの場合、自分が世界最大の超軍事国家だという現実に甘えて、軍の調達すら政治にしてしまっている感があるのが…。
まあ、それでも今までは良かったが、冷戦時代と異なり、航空機や誘導兵器の性能が上がり、矛が強くなりすぎて、高価な大型艦に武装を集約するより、比較的安価なプラットフォームに武装などを分散搭載した方が、残存性などの観点から有利だ、と言う当たり前の結論が、中国の推し進める質より量の軍拡によって明らかになってしまった。
アメリカは、経済格差(人件費)の関係でどうしても中国より「安価な」兵器が作れない以上、質的優位を確保するしかないのだが、それすらも中国人民軍のスパイ活動で技術窃盗され、圧倒的と言えるほどには、質的優位を築けている訳でもない。
…LRLAPに関しては、いっそ日本に共同開発国になって貰って、弾を日本にも使わせて量産効果を高めれば良かったのに…。
閑話休題(それはさておき)
この未来的フォルムを持つアメリカの新鋭艦は、中国で大人気であり、中国では無敵兵器の様に考えられている空母の次に、「強い戦艦」と妄想されている。
結果、外観コピー艦である055型駆逐艦を開発し、大々的に量産を開始して、既に6隻目が起工されてたりするのだが、武装に関しては従来のミサイル駆逐艦の延長線上だし、ズムウォルト級で採用されている統合電力システムも無く、単なるCOGAG方式で、将来的にズムウォルト級と同様にレールガンを搭載すると息巻いているが、その電力を供給する元が無いのにどうやって?という疑問については、誰もツッコまない。
とはいえ、搭載するミサイル数的に見ても、イージス艦に匹敵する投射火力は持ち合わせているので、その艦体規模に応じた戦力はあるんだけど。
余談だが、アメリカではレールガン開発より、その弾体である超高速発射弾(hyper velocity projectile)を従来砲で撃ってもええんじゃね?的な議論が進んでいるとかで、この技術が完成した場合、055型駆逐艦でも超高速発射弾(hyper velocity projectile)は撃てる事になる。
なんつーか、アメリカって、自分で自分の首を絞めてねぇ?