gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

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新iPhoneの「A12 Bionic」は何が凄いのか(本田雅一) - Engadget 日本版

(前略)
A12 Bionicの何が凄いのか
今年のiPhoneでもっとも"思い切ったなぁ"と感じたのは、アップル独自設計のSoC、A12 Bionicです。スマートフォン用SoCとしては初めて7ナノメートルプロセスで生産されるこのチップには、69億個のトランジスタが収められました。従来のA11 Bionicは43億個だったので、26億個も一気に増えたことになります。
(中略)
A12 Bionicの場合、CPUにはほとんど投入されていないとみられます。15%高速になったと言っていますが、コア構成が同じとみられるため、動作クロックやメモリアクセスなどで高速化されたとみるのが妥当でしょう。
(中略)
プロセッサ名に入る「Bionic」とは、ニューラルネットワークを応用した処理を高速に実行するために特化したアーキテクチャを持つ専用プロセッサ(アップルはニューラルエンジンと呼んでいます)の搭載を意味しています。
A11 Bionicではこのプロセッサを1個搭載していたのですが、今回はなんと8個に増えています。おそらく動作クロックも向上しているのだと思いますが、その能力はA11が約6000億OPS(1秒あたりの処理回数)だったのに対して、5兆OPSまで増加。つまり、アップルはニューラルネットワークの応用にこそ価値がある、と考えて投資をしているということですね。
(中略)
アップル(そしてファーウェイもですが)が、ニューラルネットワークを利用し、画一的なアルゴリズムでは正しく認識できない情報や信号を"より確からしい"結果へと導びこうという強い意志を感じます。
その結果、今世代のiPhoneで、もっとも大きく進化したのはカメラでした。
(中略)
A12 Bionicを搭載したiPhoneでのみ利用できる機能として、ポートレートモードで撮影した写真に対して後編集で絞りを変え、被写界深度(ピントが合う範囲)を調整する機能も、そのままシングルカメラで実現できている点には本当に驚きました。
XRでポートレートモードが使えるところに、A12 Bionic(そして今後のアップル製SoC)が目指している未来の一端がもっともあらわれているように思います。
(後略)

https://japanese.engadget.com/2018/09/13/iphone-a12-bionic/

A11の時点で、スナドラ845はもちろん、今年発売の855相手にも優位を取っていたので、A12が7nmプロセスという新世代SoCの能力をNPUに極振りした事は問題ないし、将来的な方向性としてニューラルネットワーク処理を重視するという方向性も良いと思う…んだけど、現時点でその成果がカメラだけってのは、どうにも、微妙に感じた。
記事中にある、静止画に対する重ね合わせ処理や、静止画のみならず動画を含めたリアルタイム処理が可能になる、と言うスペックも技術的には素晴らしいのだけれど、「それで、スマートフォンの何が変わるの?」と冷静になってみれば、現時点ではスマホの1機能である「写真が綺麗に撮れる」なのだ。
ファーウェイがライカと組んで、スマホカメラのブランド化に成功しているが、やっている事は撮れた写真を「より良く加工する技術」の研鑽でしかない。
この技術は、進めば進むほどに、写真の価値の内「現実をそのまま写し取る」という部分が貶められていく。
なろう小説で「俺のロボ」というSF作品があるのだが、作中で「無修正で撮影可能な銀塩カメラを危険だ」と有識者が言いだして、規制されるという話がある。
そして、市販されているデジタルカメラでは絶対に写らず、銀塩カメラでのみ撮影できる「何か」について、情報を拡散しようとすると、治安警察に捕まり、行方不明になるのだ。
これは、ちょっとしたディストピアっぽいSF作品のフレーバーでしかないが、「一般人が普段利用する記録機械の全てから、加工済みのデータしか得られない」という、今の流れを考えると、技術的に不可能ではないのだ。
今でこそ、「天下一品ラーメンの看板と、一方通行の標識すら区別がつかない」程度のAI画像認識技術だけれど、日進月歩のこの分野であれば、数年以内に劇的な改善が予測される。
…話が横に盛大にずれてしまったが、個人的に「俺は加工ありきのデジカメって好きじゃない」という話。
そして、スマホ業界の2台巨頭が、揃ってその方向に全力振ってると言う現状もまた、気に入らない。
元々、ここ数年はスマホの機能の性能UPという方向ばかりが進歩し、スマホだからこそ出来ること、と言う部分はあまり進歩しなかった。
Appleの発表会の後、ファーウェイが「同じままにしてくれてありがとう。」というツイートをしたという。*1
個々のハード的にはともかく、ソフトウェアの部分でスマホの業界をリードし続けていたAppleが、一歩後ろを追いっていたファーウェイから見て、立ち止まった位置に見える。もう一歩で並んでしまうよ。
自分には、そう受け止められるメッセージだと思った。
そして、Appleの新型iPhoneを見て、今回の「カメラが高性能化しました」というだけの現状から、同じ停滞を強く感じた、というのが、A12というSoCの凄い所を知っても、変わらない感想。