gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

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F35A国内組み立て撤退 1機30億〜40億円コストカット - 産経ニュース

防衛省は、航空自衛隊のF35A最新鋭ステルス戦闘機について、国内で行っている最終組み立てから撤退する方針を固めた。完成した機体の輸入に切り替えることで、調達コストを1機当たり30億〜40億円削減する狙いがある。複数の政府関係者が5日、明らかにした。
F35Aは、米国を中心に英国やイタリアなど9カ国が国際共同開発したステルス戦闘機。日本もF4戦闘機の後継として42機導入することを決定し、配備を進めている。さらに、能力向上のための改修ができないF15戦闘機の後継として、今後も数十機単位での追加調達を予定している。
(後略)

https://special.sankei.com/a/politics/article/20181205/0001.html

F4代替で調達した42機の内、完成品購入した4機が1機96億円で、国内組み立て初年度調達分の2機が、1機140億円、その翌年度が159億円、その次が172億円、その次が181億円と、国産部品が増える程に、生産設備コストが上乗せされて、クッソ高くなってる。*1
数字を見て判る通り、F35選定の大きな動機になった「購入費用の40%を日本に」という話の実態は、「機体価格に日本に落とす費用分を上乗せ」している事が判るだろう。
もちろん、日本国内にFACOや部品生産用の設備投資などが必要だから、最大で1機181億円と言う目玉が飛び出るような高額についても、一時的な物である事は理解している。
実際、国内組み立て5年目に予定されているロット13では、一転して1機147億円まで下がり、最終ロットであるロット14では、131億円まで値下がりしているからだ。
しかし、ロット14の時点で、アメリカで完成品購入する場合、90億円を割ると考えられており、やはり国内組み立てすると、40億円近い「日本企業に落とす為の追加費用」を支払う事には変わりがない。
つまり、100機という多数を調達するにあたって、実質4割増しの費用を支払って、日本企業にバラまくのは辛い、と言うのが政府の本音だろう。*2
ただ、別に日本でF35の組み立てをしなくなったからと言って、日本国内で製造するF35の部品については、F35が全数生産完了するまで作られるので、製造ラインが無駄になる事は無いし、調達がひと段落しても、保守部品としての需要もあるので、最低でも2030年代までの需要はあるし、FACOは日本で142機調達されるF35の整備拠点として使われるので、十分に意味がある。
…問題は、国産機開発に必要なマネーパワーを、現存している航空分野の国内軍需企業に供給できなくなり、F2開発以降、20年の戦闘機開発の空白期間が生まれている中で、国内軍需企業が「諦めて撤退」するリスクが大幅に高まるだろう点にある。
苦い共同開発になったF2と同じ事が、F3でも繰り返されれば、「政府は本気で国産機開発をする気が無い」と参画企業は判断して、事業継続に消極的になるだろう。
1度なら「苦い失敗」でも、2度続けば「日本の開発はそういうもの」になってしまう。
なにせ、日本の軍需企業のほぼ全てが、軍需は副業なので、無くなっても困らないのだから、「国にやる気が無い」のに、企業だけが頑張っても意味が無い。
ボーイングの様に、自腹でF15SEを開発して海外に売り込むような真似をしなくても、事業継続に何ら問題は無い*3のだ。
政府が100機の調達を完成品購入で確定している以上、F3開発で国内企業に「大きな利益」を約す事が出来ないなら、日本の将来戦闘機開発に、大きな影を落とす結果になると思う。

*1:http://f35jsf.wiki.fc2.com/wiki/%E9%81%8B%E7%94%A8%E3%82%B3%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BB%E4%BE%A1%E6%A0%BC%E3%83%BB%E5%AF%BF%E5%91%BD%E3%81%AA%E3%81%A9#ocd7e251

*2:とはいえ、公共投資と同じで、日本が日本企業に支払う金は、乗数効果で国の経済を上積みするので、支払えるなら支払った方が、巨視的な視点ではメリットが大きい。とはいえ、100機1兆円ですら文句を言う平和ボケした国民に、100機1.4兆円とは言い辛いのはわかる。しかも同じ1.4兆出すなら、F35は1兆円にして、残りの4000億円を使って海自を強化すれば、艦船はイージス艦以外なら、ほぼ全額が国内に落ちるので、結果的な経済効果は同じだし、1案件の総額しか見ない国家財政を家計と同一視するようなマヌケな国民なら、それで誤魔化せるし、一石二鳥

*3:実はボーイングアメリカの軍産複合体には珍しく、民需割合の高い企業なのだが、民需は大型旅客機の販売であり、大型爆撃機開発なら方向性が一緒なので何とかなるが、戦闘機は事業方向性が全く違う為、戦闘機開発部門で大赤字が出ると、事業継続に難が出るのだ。かと言ってアメリカとしてはF15Eをまだまだ使う予定だし、軍産複合体の一角であるボーイングに戦闘機開発を抜けられると困るので、今年、TXをLMでなくボーイングが受注できた訳である