gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

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アマゾン書籍買い切り方式へ 年内に試行、値下げ販売も検討(毎日新聞) - Yahoo!ニュース

アマゾン書籍買い切り方式へ 年内に試行、値下げ販売も検討(毎日新聞) - Yahoo!ニュース

ネット通販大手のアマゾンジャパンは31日、出版社から書籍を直接購入し、販売する「買い切り」方式を年内にも試験的に始めると発表した。同社は同日の記者会見で、「書籍の返品率を下げるため」と説明し、本の価格設定についても検討する考えを示した。
同社によると、買い切る書籍について出版社と協議して決定。一定期間は出版社が設定した価格で販売するが、売れ残った場合は出版社と協議して値下げ販売などを検討するという。
本の流通は再販制度の下、出版社が価格を決めて取次店に卸し、取次店が書店に卸す方式が一般的になっている。書店は返品できる代わりに、出版社や取次店側からの条件を受け入れてきたが、高い返品率が問題となっていた。それだけに今回の同社の「買い切り」方式導入は、出版業界に大きな影響を与える可能性がある。
出版業界に詳しいフリーライター永江朗さんは「出版社と書店との力関係が大きく変わるのではないか。電子書籍同様、本の値引きが進む可能性もある」と話している。【山口敦雄】

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190201-00000000-mai-bus_all

既に小規模書店は死にかけ、大型書店も独自色をつけて生き残りを図っている現状で、再販制度というシステムはその役割を終えつつある。
とりあえず、再販制度の功罪は横に置いて、「アマゾン書籍買い切り」という話だけで考えれば、それでなくても弱りつつある取次店が更に弱くなり、出版社にとって「商品を売れる窓口がアマゾンに独占されかねない」というリスクがある。
今はまだ、取次店も紙の書籍を売る書店も残っているから、目先の売り上げを目当てにアマゾンへ便宜を図る余裕が出版社にあるけれど、書店が減り続け、取次店が零落した時には、電子書籍も紙の書籍も流通をアマゾンに握られて、出版社側の立場が殆ど無くなってしまう未来すら、現時点で十分見えつつある。
そして、その頃には、流通数の少ない専門書を発行する出版社の多くは、潰れて無くなってしまいかねない。
ぶっちゃけ、電子書籍だけで良いなら、出版社を介さず、自力でアマゾンで出版販売が可能だからだ。
そもそも、今現在、出版社が「作者に手弁当でSNSで広告活動までさせている」現状は、出版社が本来の仕事もせずに中間搾取だけしている、という歪な構図を浮き彫りにしてしまっている。
紙の本が売れると、その利益は取次と流通で5割、小売り書店で2割、作者が1割、出版社が2割取る、と言われている。
電子書籍は、「取次と流通と小売り書店」の3者を兼ねているので、アマゾンなどは55%程取っているらしいのだが、紙の本の20%に比較して、出版社の取り分が全体の35%…金額ベースだと紙の本の75%ほどに増えているのが判るだろうか。
だから、本自体の総販売数が減っているにもかかわらず、出版社の利益が伸びているという不思議な現象が起きている実体は、電子書籍の取り扱い割合が増えているから、というオチになる。
在庫リスクの無い電子書籍で儲けて居る癖に、広告費までケチって作者に転嫁しているのだから、本当にいい商売である。
ちなみに、作者は自力だけで電子出版する場合、アマゾンに55%取られても、45%が手取りになる。
出版社に作品を委託する場合の印税が10%なのだから、自力電子出版の4倍ぐらい売れて初めて、出版社に委託して「トントン」だ。
だから、自力で出版社の1/4以上は売る自信があるなら、自力で電子出版した方が、手取りは大きい、と言う話になる。
これは、紙の本を無視した数字なので、現実的にはまだ出版社に作品を委託して売る方が主流であり続けるだろうけれど、今のまま出版社が中間搾取組織に甘んじるなら、紙の本が廃れるだろう近未来には、この想定が荒唐無稽ではなくなっているだろう。
もし、出版社の役割である「校正・編集・デザイン・イラスト発注」を代替する「独立プロ編集者」という商売が生まれるとしたら、この辺りに商機が転がっていると思う。*1
…今のところは、出版詐欺の温床になっているようだが。

*1:再販制度の無いアメリカではこーいう個人の敏腕プロ編集者みたいなのが実際に居る