gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

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「相手の射程外から攻撃可能」戦闘機ミサイル開発へ : 政治 : 読売新聞オンライン

「相手の射程外から攻撃可能」戦闘機ミサイル開発へ : 政治 : 読売新聞オンライン

防衛省は、航空自衛隊の戦闘機に搭載し、相手の射程外から敵艦艇を攻撃できる国産初の長距離巡航ミサイル(スタンド・オフ・ミサイル)を開発する方針を固めた。中国海軍の攻撃能力の急速な進歩に対応するもので、射程を400キロ・メートル以上に伸ばして抑止力を強化する。数年以内の実用化を目指す。
複数の政府関係者が明らかにした。新型ミサイルは、敵の射程外から攻撃することを意味する「スタンド・オフ防衛能力」の一つと位置づける。スタンド・オフ防衛能力は、昨年12月に閣議決定された「防衛計画の大綱」(新防衛大綱)に明記された。
防衛省は2017年度に国産空対艦ミサイル「ASM3」の開発を完了した。空自のF2戦闘機に搭載し、従来型の国産空対艦ミサイルの約3倍のマッハ3程度の超音速で飛行できる。敵に対処する時間を与えず、迎撃されにくいが、射程は百数十~約200キロ・メートルにとどまるとされる。
新型ミサイルは、ASM3の燃料を増やすなどの改良を加え、400キロ・メートル以上の射程を想定する。
念頭にあるのは、中国海軍の艦艇に搭載された対空ミサイルの性能向上だ。2000年代には、射程150キロ・メートルとされるミサイルを搭載した「中国版イージス艦」と呼ばれる高性能艦が登場した。13~18年だけで15隻以上就役したとされ、さらに増える見通しだ。
10年度に本格開発が始まったASM3は、「敵基地攻撃能力につながるという見方への政治的配慮」(防衛省幹部)から、射程が従来型と同程度に抑えられた。しかし、中国軍のミサイルに効果的に対応するには、その倍程度の射程のミサイルが必要とされる。
開発が終わっているASM3は、射程の短さから防衛省内でも実用性が疑問視され、18、19年度予算案では調達が見送られた。同省は新型ミサイルの開発費について、早ければ20年度予算に計上する方針だ。
中国念頭 抑止力強化
防衛省が国産初となる空対艦の長距離巡航ミサイル(スタンド・オフ・ミサイル)の開発に乗り出すのは、政治的な配慮でミサイルの射程を抑制する考え方が限界に来たためだ。
日本では長い間、「他国への脅威」との批判を避けるため、長射程ミサイルの保有を避けてきた。政府は2004年、中期防衛力整備計画(中期防)の策定で射程300キロ・メートル以下の地対地ミサイルの研究開発方針を示したが、与党の一部からの反対で断念した。
しかし、17年には射程900キロ・メートルの米国製空対地ミサイルの導入が決まった。中国の軍拡が日本にとって脅威と映ったからだ。
憲法9条に基づく自衛隊の防御的な任務に照らしても、長射程ミサイルの必要性は自明になった。完成時に時代遅れとなった空対艦ミサイル「ASM3」の改良は妥当な判断と言える。(政治部 上村健太)

https://www.yomiuri.co.jp/politics/20190317-OYT1T50060/

記事にある通り、日本は他国の批判を恐れて、射程150km以上の兵器を自主規制してきた。
ただ、巡航ミサイルに必要な要素研究だけは、80年代にはすでに行っており、88式地対艦誘導弾は、150kmと短い射程を除けば、殆ど巡航ミサイルと変わらない「ロケットではなくジェットエンジンによる推進」で「地形回避飛行能力」や「匍匐飛行能力」といった要素を備えており、開発系譜としては、ASM1の改良型とされているが、内容的には殆ど「別物」と言って良い内容だった。
この88式地対艦誘導弾は、この後にASM2や12式地対艦誘導弾(GSM)、90式艦対艦誘導弾(SSM)、91式空対艦誘導弾(ASM)と、3軍全体に発展型を広げていく、日本のミサイル開発におけるマイルストーン的なミサイルである。
何が言いたいかと言うと、90年代には日本は巡航ミサイルを自国開発できる蓄積はあったが、政治的理由で「持てなかった」という話である。
正味の話、敵基地攻撃能力の保持に関して、絶対NGが基本だった00年代初頭までは、日本が射程1000kmを越えるような巡航ミサイル保有する価値は、殆ど無かった。
そもそも、日本の周囲に、最強戦闘機であるF15を200機も配備する空自に対抗できる空戦力を持つ国が無く、制空権は安泰。
絶対的な制空権確保の元、海自の防衛線を越えて、日本本土まで肉薄できる海軍なんてものは無く、北朝鮮の短距離弾道ミサイルにしても、核も持たず、中国の制御下にあった北朝鮮が周辺国に使用する可能性は低く、MDがあれば、十分に対処可能だった。
つまり、ミサイルの射程にしても、防御戦に際して「短い事が不利につながる局面」も少なかったのだ。
しかし、00年代中盤が過ぎ、中国の一足飛びの軍拡と、韓国の赤化、北朝鮮の核保有、とまあ、日本を取り巻く環境は、刻一刻と悪化し続け、民主党率いるアメリカは、中国の台頭より日本を警戒して、F22の禁輸をする始末。
結果として、日本の空軍力がF15の老朽化により大幅に弱体化し、入れ替わりに中国空軍の機種更新が進むと、日本の防空識別圏内で、空自の絶対的航空優勢が崩れてしまい、制空権の無い海軍が、十分な制海権を得られる筈も無く、日本は「射程の短さが不利」になる局面があらゆる面で現出するようになった。
という訳で、記事にある通り、現代戦で「射程150km縛り」が、死命を制する不利になってしまった以上、ASM3の射程伸長および、敵基地への「反撃能力」確保として、巡航ミサイル保有論まで進むのは、当然の結果だと思う。
かつて中国が、劣勢の海軍力で日米を阻止すべく、「(巡航ミサイル弾道ミサイルなどの)長射程兵器によるスタンドオフ攻撃」を選択したように、日本も、長射程兵器を持たなければならない時代に突入している。
かつてのように、「(自衛隊の)両手両足を縛ってなお国防出来る」時代は、とうの昔に消え去った、今は「自衛隊が持てる全力を出してなお、国防に際して国民の犠牲は避けられない状況」だと国民は自覚するべきだと思う。