gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

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サイバー攻撃にミサイルで対抗:イスラエルはサイバー・ルビコン川を渡ったか | 土屋大洋 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

サイバー攻撃にミサイルで対抗:イスラエルはサイバー・ルビコン川を渡ったか | 土屋大洋 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

イスラエルハマスサイバー攻撃への反撃としてミサイルで対抗。サイバー攻撃に対して火力を直接的に用いられたことはこれまでなかったが、今後、他国にとっての先例となるのだろうか>
日本で10連休のゴールデンウィークが終わろうとしていた5月5日、イスラエル国防軍ツイッターが「機密解除になった」として、ハマスのサイバー拠点を空爆としたと発表した。つまり、イスラエルに敵対する武装組織ハマスが行ったサイバー攻撃に対して、ミサイルで対抗したということだ。
攻撃の様子をとらえたとされる12秒のビデオも公開された。これを見る限り、無人機が上空からパレスチナ自治政府ガザ地区にある建物を一撃したようだ。人的な犠牲があったのかどうかは報道されていないが、拠点とされる建物の中に人がいれば、少なくとも負傷は避けられなかっただろう。

もともとイスラエルハマスは兵器を用いて互いを攻撃している状態だった。その点では全くの平和状態でこの事件が起きたわけではない。5月5日の交戦中、ハマスイスラエルサイバー攻撃を行ったことがきっかけだった。
何が狙われたのか、イスラエルは詳細を明らかにしていないが、「イスラエル市民の生活の質」を損なうことを目的としたサイバー攻撃だったとしている。おそらく重要インフラストラクチャを狙ったのだろう。しかし、ハマスサイバー攻撃はそれほど洗練されたものではなかったためにすぐに阻止された。そして、すぐさまイスラエルハマスのサイバー拠点にミサイルを撃ち込んでサイバー攻撃ができないようにした。
もはやサイバー攻撃は密かに行われるものではなく、米国もイスラム国などにサイバー攻撃を行っていることを公言しているし、程度や質の差はあれ、中国、ロシア、北朝鮮、イランなどはサイバー攻撃の黒幕として見られることが多い。しかし、それへの報復がこれほど短時間で、そしてサイバー攻撃ではなく火力を用いて行われたことが注目を集めた。
すぐさまこの事件に関する論説がウェブ上で戦わされるようになった。イスラエルルビコン川(古代ローマにおいてユリウス・カエサルがローマ本国の境界を越えて進軍した際に渡った川)のサイバー版を渡ったとする意見も現れた。
国際法上は、制裁や報復は、均衡性の原則に基づかなくてはならないとして批判する声も多い。かつてはサイバー攻撃核兵器を使うという勇ましい声が出たこともあったが、それはさすがに行き過ぎだろうと多くの国際法学者は考えている。しかし、誰がやったのかわかりにくく、攻撃そのものが潜伏型で行われることが多いサイバー攻撃では、何をもって均衡がとれているとするのか、判断がきわめて難しい。

過去を振り返ってみれば、2012年に米国のメディアや政府が中国からと見られるサイバー攻撃を受けた際、米国政府は中国人民解放軍の関係者を指名手配し、被疑者不在のまま米国で訴追する措置をとった。
2014年末にソニーピクチャーズ・エンタテインメントがサイバー攻撃を受けた際、米国政府はすぐに北朝鮮政府に責任があるとアトリビューション(名指し)を行った。その後、北朝鮮のインターネットが一時不通になったため、米国が報復措置をとったのではと見られたが、米国国務省は「コメントしない」とした。事件によって北朝鮮と中国をつなぐ回線にアクセスが殺到したためではないかと見られているが、米国政府が行ったのか、民間のアクターによるものかははっきりしなかった。
2015年に米国の政府の人事局(OPM)から大量の個人情報が盗まれ、経済的なサイバースパイ活動も大規模に行われたことから、バラク・オバマ米大統領は、中国の習近平国家主席との首脳会談で詰め寄り、経済目的のサイバー攻撃を相互に行わないという合意を取り付けた。
2016年の米国大統領選挙でロシア政府が介入を行ったと判断すると、オバマ大統領は政治的制裁に踏み切り、スパイ活動を行っていたロシアの外交官を追放し、ロシア政府が使っていた米国内の拠点2カ所を没収した。
しかし、今回のようにサイバー攻撃への反撃として火力を直接的に短時間で用いたことはおそらくなかっただろう。仮にそういうことがあったとしても、政府や軍がそれを明言したことはなかった。その点が今回の事件は新しい。イスラエルは、サイバー攻撃に対して火力を用いて反撃する可能性があることを実力で示したことになる。
(後略)

https://www.newsweekjapan.jp/tsuchiya/2019/05/post-35_1.php

インフラ狙いのサイバーテロは、戦争で言うなら、民間人に対する無差別爆撃に等しい暴挙であり、イスラエルがドローンによる精密爆撃で、サイバー攻撃の拠点を破壊したのは、「穏当」だと個人的には思う。
インフラ狙いの攻撃は、その被害が目に見えにくいだけで、とても深刻な物だと思うからだ。
加えて、イスラエルハマスは、互いに武力行使の応酬をしている状態である訳で、ハマスサイバー攻撃は、文字通り「攻撃」だった訳だから、成功して居れば、どれだけの被害が出ていたか、イスラエルの反応が、その深刻さを物語っていると思う。
ただ、記事にある通り、今回は「攻撃元」すら特定できるような「お粗末」なものだった事も事実で、その意味では「物理的な反撃はやり過ぎではないか」と言い出す連中が出るのも仕方が無いのかもしれないが、もし日本政府が「北朝鮮が命中率ガバカバのオンボロ核ミサイルをぶっ放してきたが、イージスBMDからのSM3で余裕で撃墜できた」ときに、「被害は無かったので、何も反撃しない」と言い出したら、どうだろうか?
そんな事は、日本国民として許せない愚挙・愚行だと思うが、イスラエルサイバー攻撃に対して物理で反撃した事に非難する連中の意見と言うのは、ソレと同レベルだ。
この件は、「妥当な範囲の反撃エスカレーション」だと思う。