gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

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米国の新型ミサイルが中露のステルス戦闘機の脅威に?それは考えが甘い―中国メディア|レコードチャイナ

米国の新型ミサイルが中露のステルス戦闘機の脅威に?それは考えが甘い―中国メディア|レコードチャイナ

2019年7月3日、参考消息は、米国のAIM-260ミサイルが中露両国のステルス戦闘機にとって脅威となると米メディアが伝えたことについて、「問題に対する考え方があまりにも単純すぎる」とする記事を掲載した。
記事は、米メディアで「AIM-260ミサイルは中露両国が開発した新型ステルス戦闘機を追跡し威嚇する。そして技術的には他国の同類装備を超越しており、米空軍にとっては巨大な戦力上のアドバンテージを受けることになる」などと報じられているとした。
その上で、「米メディアが紹介する情報を見ると、AIM-260は確かに画期的なミサイルであり、米空軍が長年あたためてきた超長距離空中戦の概念を現実にしたものと言える」と評する一方、「たった1つの兵器が持つ指標上のアドバンテージだけで他国のステルス戦闘機の『脅威』になるとするのは、あまりに安直すぎる」とも論じている。
そして、「現代の空中戦は複数の兵器と作戦支援システムが集まって体系化されたもので、ミサイルの性能を語る際も支援システムの能力や体系などに注目しないと正しく認知することは難しい」と指摘。「たとえ射程距離と電子性能指標が優れていても、米軍の戦闘機がステルスレーダーをめぐる問題点を解決できない限り、長距離ミサイルの効果は十分に発揮できない」と論じた。
さらに、「遠距離ミサイルは長さも体積も従来のミサイルよりかさばるため、1機あたりに搭載できるミサイル数が減ってしまい、戦闘機の攻撃力、作戦実行力が低下してしまう」と伝えた。
記事は「総じて、AIM-260は確かに優れた性能を持つ空中戦兵器だが、他国の戦闘機の脅威になると断言するのは、複雑で刻々と変化する現代の戦争においてはあまりにも単純すぎる考えだ」と自らの見解を繰り返して結んでいる。(翻訳・編集/川尻)

https://www.recordchina.co.jp/b727049-s0-c10-d0135.html

むしろ、中露…特に中国が接近阻止・領域拒否(A2/D2)ドクトリンを元に、各種弾道ミサイルから巡航ミサイル、空対空ミサイルまでアホみたいに長射程化しまくった訳なんだが、自分で自分の否定は楽しいのか?
アメリカがF14のフェニックス(AIM-54)で得た苦い教訓は、長射程空対空ミサイルは「当たらない」というものだった。
弾道ミサイル巡航ミサイルは、固定目標を相手にするから、何千キロ先でも命中させる事が出来る訳だが、目標が超高速で移動し合う空対空ミサイルは、最強戦闘機と呼ばれたF15C/Dの主力装備だった中距離AAMであるスパロー(AIM-7)ですら、命中率は惨憺たるものであった。
その3倍もの長射程を誇るフェニックス(AIM-54)が、目標に命中させる為に、専用のレーダー/火器管制装置を必要とし、ミサイルに搭載されたレーダーも、高価な赤外線とアクティブ・レーダーの複合式であったが、アメリカ自身のキルスコアはゼロ。イラン空軍で25機の撃墜がある、とされているが、本当にフェニックス(AIM-54)によるキルスコアなのかの確証はないし、当時イランに存在していたフェニックス(AIM-54)285発のキルスコアが25機だとしても、命中率は1割以下と言う話になる。*1
そんなフェニックス(AIM-54)を目指してソビエトで開発されたのが、R33ミサイルである。
アメリカは、費用対効果が悪く、命中率も悪い長射程AAMの開発をフェニックス(AIM-54)で打ち切って、撃ちっぱなしが出来る上に変態機動性で超当たる短距離AAM、サイドワインダー(AIM-9X)と、中距離AAM、アムラー(AIM-120)を開発し、一気に近から中距離における空戦力を強化した訳である。
対して、青息吐息で崩壊寸前のソビエトは、通常戦力でアメリカに差を付けられつつあり、中国がA2D2でアメリカとのアウトレンジ戦を望んだように、ソビエトも同じ弱気からか、視界外戦闘を望んで、後継であるR37の開発に着手する。*2
そして、中国は接近阻止・領域拒否(A2/D2)ドクトリンに基づいて、R33をロシアから買い、更にR37をコピーして開発したのが、中国が誇るPL15長射程AAMとなる。
何の事は無い、90年代初頭から「射程を長く取って、相手が撃つ前に撃てば、ワンチャンある」と単純に考えて、射程偏重の装備を整えていたのは、中露の側だったのだ。
90年代に入って、ソビエトが崩壊して、アメリカはF22を実戦配備したものの、使う相手が居なくなった。
中国もロシアも、射程250kmを越える長距離AAMを持っているが、それを運用する戦闘機が、F22を発見できるのは、どんなに頑張っても15km以下まで接近しないと無理なのだから。
当然、アメリカは思った。
「射程50km…いや、余裕を見て100kmもあれば、こっちから一方的に攻撃できるし、必要十分やん」と。
これが、今までアメリカが、アムラー(AIM-120)より射程の長いミサイルを必要としなかった理由である。
では、射程300kmのAIM-260って、なんで必要なの?
という話だが、どちらかと言うと、これは戦闘機相手に使う装備じゃないんじゃないかと思う。
空中給油機やAWACSなどの空域後方に展開する、高価値目標をピンポイントで狙うためのミサイルなんじゃないかと。
ステルス機相手だと、どんなに頑張っても70km以下まで近づかないと発見できないが、その強力なレーダは、非ステルスの第4世代機なら、400km以上先から見つける事が出来る。
ステルス性が無くて、高価値な目標と言ったら、空中給油機とかAWACSとかぐらいしか思いつかんし。
あとは、兵站狙いで輸送機をブッ飛ばすとか。
まあ、何にせよ、アメリカが本気でJ20やSu57相手に、AIM-260を使うとか、考えていない事だけは、間違いないんじゃないかと。
だって、J20やSu57が、開発国の誇張宣伝(ビッグマウス)の100分の1でもステルス性能があるのなら、アメリカ側の対ステルスレーダーだって、100km以上先では探知できないんだし。*3

*1:実際に撃った数が不明なので、本当に命中率1割って事は無いと思うが…。そもそも当時の短距離ミサイルは赤外線ホーミングのみだったし、当時のスパローはアクティブ・レーダーを採用したものの、小型化が出来ず、性能が微妙だった為に、途中で発射機体のレーダー誘導に頼るセミアクティブ・レーダー・ホーミングに切り替えている。結果、発射機体がロックオンし続けないと当たらない、微妙な性能に留まる結果となった。大型なフェニックス(AIM-54)は、その分、レーダー性能が高いアクティブ・レーダーを乗せられた上、赤外線ホーミングも併用していたのだから、スパローよりはマシだったと思う。今となっては複合式は珍しくないが、電子機器が高額だった当時は、使い捨てのミサイルに複合式の誘導装置を乗せるのは、非常に贅沢な話だったのだ。それでも、命中率は…

*2:一方で、短距離・中距離AAMはアメリカの1世代落ちをコピーするのがやっとだった訳で、そんな状況でコピー元の無い長射程AAMに開発リソースを割り当てる、と言うのは明らかにそれを重視する意図があったと思われる

*3:記事中で、「米軍の戦闘機がステルスレーダーをめぐる問題点を解決できない限り、長距離ミサイルの効果は十分に発揮できない」という指摘が、まさにそれ。ソレを理解した上で、中露が長距離AAMを誇っているのが謎なんだが。お前ら自分の問題点を理解した上で、ソレなのか!と