gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

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数千億円かけたサウジ防空システムに欠陥 わずか数万円のドローン攻撃に無防備 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

数千億円かけたサウジ防空システムに欠陥 わずか数万円のドローン攻撃に無防備 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

サウジアラビアは、高高度からの攻撃を抑止するため、数十億ドルを費やして西側から最新鋭の防空システムを購入してきた。だが、同国の巨大な石油産業の施設が大打撃を受け、安価な小型無人機ドローンや巡航ミサイルによる攻撃からの防御には、全く役立たないことが、図らずも証明されてしまった。
14日の攻撃で、サウジの原油生産量は約半分に落ち込んだ。隣国・イエメンとの4年半に及ぶ戦争で何度も重要資産が攻撃を受けながら、同国が適切な防衛態勢を整えていない実態を露呈した。
(中略)
限定的な攻撃でも、サウジにとって手に余ることが分かっている。例えば最近フーシ派は、サウジの民間空港や石油ポンプ設備、同国東部のシェイバー油田などの攻撃に成功した。
サウジのある安全保障関係者は「われわれは無防備だ。どの施設にも実質的な防空態勢が存在しない」と話した。
(中略)
実際、フーシ派がサウジの都市に向けて発射した高高度飛行の弾道ミサイルは、首都・リヤドを含む主要都市で見事に迎撃されてきた。
ところが、ドローンや巡航ミサイルは、より低速かつ飛行高度も低く、パトリオットにとって検知・迎撃が難しい。
ペルシャ湾岸諸国のある高官は「ドローンは、サウジにとって非常に大きな試練だ。なぜなら、しばしばレーダーをかいくぐって飛んでくる上に、イエメンやイラクとの国境線が長いためで、大変脆弱な状況に置かれている」と指摘した。
(中略)
たかだか数百ドル程度のドローンに対し、1発約300万ドルの高額なパトリオットミサイルで撃ち落とすのは、あまりにも割に合わない面がある。
(中略)
武装されたドローンは入手しやすくなる一方で、重要なインフラへの脅威は過剰なほどに高まりつつある、と専門家はみている。
サウジの政策担当者がずっと前から恐れているのは、中部と東部に淡水を供給している同国東部・ジュバイルの淡水化施設が攻撃される事態だ。
この施設が破壊されれば、数百万人が水を利用できなくなり、修理に長い期間を要する可能性があるとみられている。

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/09/post-13027.php

本当に呆れるしかない。
…この記事の雑さ加減について。
まず、地対空兵器ってのは基本的に「拠点防御兵器」であり、1個部隊で防御できるエリアは、基地一つとか、そーいうレベル。
日本の弾道ミサイル防衛の一翼を担うPAC3ですら、概ね直径二五kmとかいうレベルである。*1
平時から国土全体をカバーできるようには、最初からつくられていないのだ。
調達に数兆円もの巨費を費やした、自衛隊のPAC3部隊にしても、更に一兆円以上の費用を費やしたイージスBMDにしろ、完全にはほど遠いのだ。
アホな連中が、「原発防衛に防空部隊が無いのは問題だ」とか妄言を抜かしているが、そもそも原発より高価値で、狙われたら困る場所に重点配備するだけで、手いっぱいなのだ。
…そいつらは、アメリカ並みに毎年60兆円の軍事費を費やし、核兵器も装備して、必要ならガンガン「先制攻撃」してでも国防に邁進する国になって欲しいのだろうか。
膨大な軍事費負担で貧困にあえぐ、北朝鮮並の失敗国家に転落するだけなのに。
「日本の、累計3兆円以上も費やしたMDシステム」ですら、そんな厳しい状況なのに、産油国原油マネーでウハウハのサウジですら、「たった数千億円」しか金を掛けていない防空システムで、完璧なんて望み得る訳も無い。
まあ、敵対国側の防空網で、兆候すら検知できてなかった様子なのは、確かに残念な話だとは思うが。
それに関しては、日本もソビエトのMig25を全く見つけられないまま、本土上空まで侵入された過去があるので、実戦経験の乏しい軍隊が、実戦で手痛い教訓を学ぶ、という事もまた、珍しくは無いのだけれど。
話がそれた。
まず、「数百ドル程度のドローン」とあるが、今回使用されたものは、実際には無人標的機に計器飛行能力を持たせた、巡航ミサイルに準ずるものであったし、生産するのも調達するのも、国家規模の後ろ盾無しには難しいものばかりであった。
アメリカが最初からイランの関与を疑うのも、無理は無いぐらいなのだ。
それと、民生用の小型ドローンを同一視する様な雑な記事の時点で、もう…ね?
民生用ドローンがテロの新しい攻撃手段として、広がりを見せているのは「平時に対空武装を持った組織が、正規軍しかない」という非対称性を利用したもので、今回の様に相手の警戒していない、それでいて出血を強いられるような施設を狙うやり口は、確かに簡単には防止できない。
…逆に言うなら、相手が「軍隊しか対処できない兵器」を使い始めた以上、警察や公安の対処可能な「かつてのテロリスト」ではなく、軍で制圧すべき「外敵」である。
つまり、初動から「軍」が出張って、相手を「非正規兵」として射殺可能にすべき、と言う話になるだろうし、協力者は「外患罪」を適用して死刑にする、かつてアメリカが「悪の枢軸」などと呼んだように、国内にテロ集団を抱えている国に対して、外国の軍隊が派遣され、鎮圧できるような取り組みが生まれるかもしれない。
上の話は極端にしても、テロリストに対する圧力が高まる結果になると思うけどね。

*1:防御範囲は単純な球・円状にはならない。向きによっては五〇km先の飛翔体も迎撃可能である