gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

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米海軍は戦う前に破産する? 米国、バージニア級原潜「ブロックV」は高すぎると批判 -航空万能論GF-

米海軍は戦う前に破産する? 米国、バージニア級原潜「ブロックV」は高すぎると批判 -航空万能論GF-

米海軍が調達予定のバージニア原子力潜水艦「ブロックV」は、これまでのブロックⅣに比べ大きな改良が加えられており、完全に新しい潜水艦として生まれ変わった。
バージニア原子力潜水艦の大きな特徴は「任務の多様性(多任務作戦能力とも呼ばれている)」で、敵の水上艦や潜水艦との戦闘や情報収集だけでなく、巡航ミサイルによる地上目標への攻撃任務、特殊部隊「SEALs」の隠密輸送や回収任務などを行える設備や装備を備えている。
このような潜水艦による「任務の多様性」は、世界各国の海軍で採用されつつあり、日本の「そうりゅう型潜水艦」のように対潜水艦・対水上艦戦に特化した潜水艦は、もはや時代遅れかと言えばそうでもない。
(中略)
バージニア級のステルス性については重大な告発があったので、本当にシーウルフ級並の性能を実現しているのか疑わしい。
(中略)
ハンティントン・インガルス・インダストリーズ社のニューポート・ニューズ造船所で働く、シニアエンジニアのアリ・ローレンス氏は、同社が建造したバージニア原子力潜水艦に施すステルスコーティング(無反響タイルの接着や防音処理のこと)は、特殊な接着コーティングを扱うため資格を持った技術者が処理する必要があるにも関わらず、無資格の技術者が不適切な方法で処理していると告発した。
(中略)
潜水艦の船体は水圧の変化によって膨張と縮小を繰り返すため、ステルスコーティングが剥がれ落ちるのは仕方の無い事かもしれないが、バージニア級のステルスコーティングは、ロサンゼルス級と比較しても「あまりにも脆すぎる」
(中略)
最後の問題は、素晴らしい性能を実現するかもしれないブロックVの調達コストだ。
(中略)
ブロックVを1隻調達するのに掛かる費用は約35億ドル(約3,800億円)も必要で、米国メディアに「高すぎる」と批判している。
(中略)
核兵器の運搬手段として原子力潜水艦は非常に有用だったが、通常兵器の運搬手段としては恐ろしくコストが高すぎ、このまま投資を続ければ本当に「破産」してしまうかもしれない。

https://grandfleet.info/military-trivia/us-criticizes-virginia-class-submarine-block-v-is-too-expensive/

中国とロシアが対米用に編み出した接近阻止・領域拒否(A2D2)戦略に基づき、粛々と整備された、各種超長射程ミサイルによって、戦場の定跡が変わりつつある。
高度なステルスが可能なサイズであり、1機当たりのコストも数百億円程度の戦闘機を主力とする空軍はともかく、海軍艦艇は、高度なステルスを得るには巨大すぎるし、1隻当たりの単価が1000億円規模に達するので、いくら超長射程ミサイルが1発数億から数十億円するとしても、30発も同時に打ち込んで撃沈できれば、攻撃側は黒字になる。
しかし、核兵器でも使わない限り、戦闘機が投射できる火力は、どうしても限定的であり、大国同士の戦争では、空軍だけで決定的な勝利を得る事は、不可能だ。
80年代の湾岸戦争のような、一方的なハイテク戦争による勝利、と言う幻想は去り、前大戦の様に、海軍でシーレーンを確保し、陸軍を送り込んで、ガツンと殴りつけなければ、勝負がつかない時代へと回帰しつつあるのだ。
湾岸戦争の勝利に気を良くし、90年代に入って唯一の超大国となり、非対称戦ばかりやってきたアメリカの軍隊は、大国同士の戦争を想定した軍隊とは言い難くなっている。*1
対して、中露は最初から「打倒アメリカ」を掲げて、アメリカを倒す為の軍隊を準備している。
中国海軍が、とうとうアメリカ海軍に匹敵する規模を持つにあたり、ようやくアメリカも「大国同士の戦争を想定した軍」へと回帰し始めようとしているのだろうけれど、その手始めが「付け焼刃」になってしまうのは、如何ともし難いと思う。
多分、多任務作戦能力を強化した原子力潜水艦ってのは、そういう事なのではないかと。
日本の場合、良くも悪くも、専守防衛と目的がはっきりしている軍隊なので、潜水艦に多任務作戦能力が必要ない。
必要があるなら、専用の通常動力潜を建造した方が、安くつく。
アメリカも、太平洋を越えて戦争するって縛りが無ければ、通常動力潜を大量に使うんだろうけれど…。
その場合、日米安保も切れて、アメリカがヒキコモリ国家になって、世界の覇権を諦める時だろうな。
余談だが、対潜水艦戦を考えた場合、艦隊随伴して長躯する様な必要が無ければ、同じ攻撃型なら、原子力潜水艦と通常動力潜水艦との間に、戦力の優劣はあんまり無い。
最新世代の原子力潜水艦は、通常動力潜水艦並の静粛性があるし、一方で通常動力潜水艦も、全力で逃げる原子力潜水艦を、半日以上も追い回すような羽目にでもならない限り、高容量化したバッテリーで十分に活動可能だし。
そして、共に装備する大型魚雷は同じものだし、探知性能については、動力源によって差がつかない。
これが何を意味するかと言うと、自国近海で使うなら、安価な通常動力潜水艦を揃えた方が、安くて同等の戦力、という事。
中国が、アメリカを真似てガンガン原子力潜水艦を増産しているけれど、この点は、防御側となる日本にとっては朗報なんだよね…。
ただし、原子力潜水艦は、通常動力潜水艦に比べてエネルギーに余裕がある分、大型化が可能になる。
デカい、という事は、沢山武装を積めるので、強い、という分かりやすい構図はあるから、同じ数なら、原子力潜水艦の方が優位にある。
…ただ、原子力潜水艦1隻の金額で、通常動力潜水艦が5-10隻買えるって事は、忘れずにな。

*1:実際、大国同士の戦争を想定した軍隊で、非対称戦を戦うのは、あまりに非効率だったし