gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

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トルコ大統領、ロシア製ミサイル導入明言へ 首脳会談開催 (写真=AP) :日本経済新聞

トルコ大統領、ロシア製ミサイル導入明言へ 首脳会談開催 (写真=AP) :日本経済新聞

【モスクワ=石川陽平】トルコのエルドアン大統領は8日、ロシアを訪れ、プーチン大統領と会談した。米国が撤回を求めるロシア製の最新鋭ミサイル防衛システムを導入する計画ついて、見直す考えはないと表明する見通しだ。経済関係の強化や内戦が続くシリア情勢での連携も協議する。対ロ接近を強めるトルコに米欧は懸念を強めており、トルコも加わる軍事同盟、北大西洋条約機構NATO)の亀裂を広げる可能性がある。
エルドアンプーチン両大統領が会談するのは2019年に入って3回目。両首脳は8日にモスクワでトルコとロシアの2国間協力を話し合う定例会議に参加するほか、文化・観光交流の促進イベントの開幕式に出席する。
トルコは17年12月、ロシアとの間でミサイル防衛システム「S400」4基を25億ドル(約2800億円)で購入することで合意した。エルドアン大統領は4月5日、訪ロを前に「S400の合意は完了している」と指摘し「7月の納入を待っている」と語った。
トルコのS400導入計画を巡っては、NATO軍の基準に合わず、軍事機密が漏洩する恐れがあるなどとして、米国が激しく批判。ペンス米副大統領は3日「同盟関係にとって重大な危機になる」と述べ、NATO内でトルコと欧米加盟国との亀裂が広がることに強い懸念を示した。NATOはそもそも旧ソ連に対抗するために結成され、ロシアを実質的な「仮想敵国」としている。
(後略)

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43477000Y9A400C1FF8000/

つまり、7月までトルコに引き渡したF35を「処分」しないと、ロシアにF35のレーダー特性が流出確定するって話か。
もし、本件が放置されるようなら、F35調達国からアメリカが吊し上げ食らっても不思議じゃなくなる訳だが…。
どうする気なんだろう。
余談だが…。
「S400」4基を25億ドル(約2800億円)で購入ってのは、クソ高いように見えるが、PAC3を4個火力単位(FU)と必要な弾薬一式を揃えるだけで、3600億円ぐらいかかる。*1
PAC3は、射撃管制車輌、レーダー車輌、アンテナ車輌、情報調整車輌、無線中継車輌、電源車輌、再装填装置付運搬車輌、整備車輌、4連装の発射機3両の計11両を基本的な火力単位(FU)として運用される。
上記の3600億円ってのは、これを4個揃えたスウェーデンの調達価格だ。
対して、ロシアのS400は、移動指揮車とレーダー車輌、電源車輌等を含めて5両程度とコンパクトで、その指揮部隊で最大8両までの発射機を指揮可能であり、レーダー探知距離、同時目標補足数、ミサイルの射程などなど、ほぼあらゆる面でPAC3の性能を凌駕している…とロシアは主張している。
これを4ユニット買っても2800億円なら、そりゃトルコが「バトリオットミサイルが我が国の要求性能を満たしていない、価格面でも条件が折り合わなかった」と言われても、しゃーないというか、アメリカとトルコの関係悪化を差し引いても、バトリオットミサイルを蹴られるのは当然と言うか、日本の様にロシアから兵器を買っちゃダメ、とアメリカに国防を盾に脅迫されているような国を除けば、当然の選択としか。
この高性能なS400ミサイルシステムは、開発当初、ロシアとしては最高機密兵器に近い扱いを受けており、輸出なんてとんでもない、という虎の子扱いをされていた。
ウクライナ問題で、アメリカの経済制裁を受けて、2014年に中国相手にしぶしぶモンキーモデルの輸出を決めた頃はともかく、最近は来年ぐらいに開発完了するS500があるので、むしろ輸出には積極的になっている感もある。
ただ、トルコの調達価格を見ればわかる通り、中小国がおいそれと買えるお値段ではない為、中東とかインドとかに注目されているが、まだ輸出実績は殆ど無い。

*1:なお日本は、PAC3を16高射隊分も揃えており、機材調達だけで1.3兆円近くを費やしている。もちろん、訓練で消費した弾薬費だとか、初期に導入した20年前の機材やミサイル本体をアップデートする費用は除いて、の話だ