gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

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劇場版 "文学少女"

最近原作を通読してハマっていたので、当初は原作者書下ろしの短編が載ったパンフレット目当てで、映画館に行こうと思っていたのだが、水曜日割引で1000円という価格に後押しされて、観て見ることにした。
お客は10名程度と非常に少なく、平日だからだろう、と思いつつ、チケット購入時に予約した席へと移動。
15分の邦画予告編の後に本編が始まった。
以下、ネタバレ。
非常にキツい事を書いているので、劇場版に満足だった人は回避推奨。



パンフレットを読んだ時点では、監督も原作の良さや、アニメ化の難しさを理解しているようだし、声優さんたちもキャラの事をしっかり理解しているなぁと期待が止まらなかった。
しかし、登場人物を見る限り、文庫8巻までの内容全部に跨る話になる訳で、本当に尺が足りるのだろうかと不安はうっすらと感じてはいたのである。
視聴して、監督の言う「慟哭の巡礼者を主に」という発言の理由がわかったというか、なんというか。
文庫8冊の内、慟哭の巡礼者1冊分に、神に臨む作家下巻のラストだけを繋ぐ為、いろいろなものを切り落としたというシロモノだった。
美羽に心中を迫られて、一度は承諾した心葉に心中を止めさせたのは、竹田千愛のエピソードが重要であるにも拘らず、改変で竹田千愛のエピソードは「無かった事になっている」し、美羽がどのようにして心葉とすれ違い、そして初稿にはあったが、出版された「青空に似ている」から改稿されてしまったが故に決定的にすれ違いを生んだ、最後のエピソード部分の話が完全にカットされ、積み上げた過去のエピソードが描写不足な故にななせが何故「書かなくてもいいんだよ」と言ったのかは意味不明となり、芥川くんはほとんど空気。姫倉さんに至っては、登場する意味すらなかったという。

なんというか、声優さんたちが熱演しているだけに、構成レベルからの失態は、痛々しいわ。
劇場版の出来が良かったら、“文学少女”メモワールを買おうかと思っていたけれど、これは回避するしか…。
化物語は、「原作に忠実」で「原作未読の人は置いてきぼり」な演出なんだけど「アニメ単体として最低限楽しめる」というキワドイバランスで作られていて、原作ファンとアニメファン双方から人気を博したが、この劇場版 "文学少女"は、原作の重要なエピソードや積み重ねを「無かった事」にしてしまったのが、致命的なミスだと思う。
特に、竹田千愛のエピソード。
飢え渇く幽霊、穢名の天使、月花を孕く水妖はともかく、死にたがりの道化と繋がれた愚者は、慟哭の巡礼者のバックボーンとして外せないエピソードなのに。
せめて、「語られなかっただけ」というレベルなら良かったのに。