gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

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首相、TPP週内にも強行突破 交渉参加へ世論も後押し - 政治・社会 - ZAKZAK

安倍晋三首相は25日、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉参加に向けた国内調整を本格化させた。与党党首会談や自民党役員会で、オバマ大統領との日米首脳会談で関税撤廃の例外が事実上認められた成果などを報告。世論調査でのTPP支持も上昇しており、与党から一任を取り付けたうえで、週内にも参加表明する構えだ。
オバマ大統領は当初、瀬踏みしていたが、安倍首相がメモなしで外交政策を語ったことなどで見直した。蜜月になるかは今後次第だが、『民主党政権より格段いい』という評価だ」
日米外交筋はこう語る。民主党政権が壊した日米同盟はひとまず修復された。さらに両国の絆と信頼を深め、日本の経済再生の起爆剤に期待されているのがTPPだ。
「そんなに長引かす必要はない」
菅義偉官房長官は24日のNHK番組で、TPP交渉参加の表明時期をこう語った。政府内には、今月28日か3月1日に想定される国会での安倍首相の施政方針演説で表明する案も浮上している。
ただ、「聖域なき関税撤廃」が前提ではなくなったとはいえ、農業団体の選挙支援を受ける議員を中心に、自民党内には交渉参加への慎重論がくすぶる。
党の農林水産など関係部会の幹部は25日の役員会前に党内で意見交換、「TPP参加の即時撤回を求める会」(森山裕会長)は26日に会合を開き、政府に具体的な例外品目を含めた説明を求めるとみられる。
民主党海江田万里代表も「首相は『聖域が認められた』としているが、聖域は交渉の中で決まる。中身を精査する必要がある」と、説明を求める方針を示した。
こうしたなか、報道各社の世論調査では、TPP交渉参加への賛成論が、反対論を上回っている。共同通信の調査では、前回1月調査から一気に10ポイント増の63・0%になった。
高い内閣支持率とともに、安倍首相への追い風になりそうだ。

http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20130225/plt1302251213001-n1.htm

TPPについては、どうにも賛成派の積み上げているプラス要素のデータモデルが信頼できず、TPPではなく主要国とのFTAと比しても、特に差が無いどころか、デメリットに対して得られる効果が薄いと聞いているので、どうにも胡散臭い。
プラス効果として上げられている数字が、10年でGDPが2.7兆円増加。
これって、年ベースではたった2700億円でしかない。
2011年と2012年の実質GDP成長率が2.2%。増分で言えば11兆2千億円に達する。
500兆円を越える日本のGDPに於いて、2700億円というのは、成長率0.05%、2000分の1に過ぎないのだ。
これは、もう殆ど「誤差」である。
対するデメリットは、ほとんど「健康」と「安全」に関わる部分に集中している。
例えば、日本では諸外国に比べると高い食品の安全性を要求しているのだが、食品添加物・遺伝子組み換え食品・残留農薬などの規制は、ほとんど「緩和」となる。
日々の食卓には、ほんのり安いが、今までより安全ではない食品が押し寄せてくる。
加えて、米以外に関しては日本の輸入市場は殆ど解禁されており、関税ゼロの食品は過半を越えている。これは、世界4位に緩い国に入り、米に代表される高関税品を加えてすら「農作物に関してだけは、世界平均よりやや高く、それ以外は世界平均より低い関税率」となっている。
下記のエントリがその辺りに詳しい。
参考:TPPBOT | Blog | 日本は鎖国しているのか?−関税率について−
ぶっちゃけ、TPPで解禁しても、米に代表されるごく僅かな高関税品(コメ、小麦、乳製品、砂糖)を除けば、値下げメリットなど発生し無いのだ。
加えて、米にしても加工品に関しては関税対象外であり、安価な米菓の材料に使われる米粉なんかは随分輸入しているので、米関連商品だって安くなるとは限らない。
一方で、食糧生産というものは文字通り国の生命線である。
何故なら、国民が生きている限り、食料は常に必要とされるからからだ。
戦車不要論者同様、近視眼的にしか物事を理解できない連中は「狭い日本で農業するより、農業国から輸入したほうが効率的でグローバルだ」と言うが、日本が今次FXでさんざん足元を見られたように、食料を国内調達できない日本相手に、生きるために必須な食料を売る国が、足元を見ない事なんて有るだろうか?
ある訳が無い。
「なら他所の国から買います」なんて贅沢は、中国の膨大な食料需要が世界を覆い、水汚染が進んで世界的に農地面積が減少する直近の未来にまで通用するはずも無く、金を積んで高い食糧を買うか、改めて農業をやり直すしかない。
その時になって日本の放棄耕作地を改めて農地転用するためには、喪われた農業従事者の再教育に加えて、農地改革からスタートする事になり、少なく見積もっても10年単位の時間が掛かる事になるだろう。
つまり、TPPによって国内農家が採算が取れなくなり廃業しても、TPPで喪われた分の収益を国から補填して貰って生活保護世帯化した農家が、ソビエトの国営農場の例に習って農業への情熱を喪っても、多くの日本人にとっては、非常に困った事になるのだ。
日本の農業には重大な欠陥と問題があり、修正が必須と言うのは理解している。
が、TPPと日本の農業改革は別の問題であり、切り離して考えなければいけないのに、「ついで」で大鉈を振るおうとするから、議論が更にねじれるという悪循環ェ…。
あとは、医療保険に関わる問題。
自由診療によるメリットは確かにあるが、金持ちも貧乏人も、等しく医療を受ける権利を担保する公的医療保険が使えない医者が増えれば、結局しわ寄せを受けるのは、貧乏人。
医療格差の拡大が懸念…というより、間違いなく発生して、救急車に乗っても貧乏人で混雑する医療保険適用病院をたらいまわしにされるうちに死亡、なんて未来は、かなり確度の高い未来となるだろう。(一方で金持ちは専用の救急車で、悠々先進的な医療を優先的に受けられる。もちろん大金を支払って)
これだけのデメリットを受けてなお、得られるのが年0.005%の成長率増加だといわれて、納得できる人たちは、まあ、TPPのメリットを最大限に享受できる層(金持ち)か、農家や医者に対するヘイトが高すぎてとりあえず既得権益なら何でもぶっ壊したい層(貧乏人)なんだろうなぁ、と思う。
経済のグローバル化なんて、既に資産を持ってる金持ちか、大企業に所属しているならともかく、個人レベル、大多数の内需に関わる日本人にとっては、メリットよりデメリットの方が大きいって事は、考えるまでもなく明らかだと思うんだ…。
問題は、国内に影響力が大きい政治家や企業、インテリ層が、大体メリットを受ける側に存在しているだけで。