gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

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東京新聞:F35の設備費補助 輸出なら返還請求へ:政治(TOKYO Web)

安倍晋三政権が武器輸出を事実上、解禁したことを受け、防衛省は防衛産業が武器類を輸出する場合、防衛費から支払った設備投資費(初度費)の一部を返還させる方向で検討を始めた。防衛産業は返還額によっては利益が出なくなり、武器輸出をしない可能性が出てきた。(編集委員・半田滋)
防衛省が返還請求を検討しているのは、米国で開発されたF35戦闘機の電子機器を製造する三菱電機(本社・東京)と、エンジン部品を製造するIHI(同)の二社。
F35は航空自衛隊の次期戦闘機で、防衛省は四十二機を調達する。米国から完成した機体で輸入する四機分を除き、二社で残り三十八機分の部品を生産する。防衛省関係者によると、二社は輸出も予定している。
防衛省は外国機向けとなる部品を輸出する場合、防衛費から支払った設備投資費の一部を返還させる方針だ。その理由を防衛省幹部は「設備投資に防衛費を充てるのは自衛隊用の武器製造に必要だからだ。同じ設備を使って輸出し、利益を上げるならば本来の目的と異なる」と説明する。
自衛隊向けの戦闘機を開発・製造してきた三菱重工業(本社・東京)は、F35の後部胴体の製造が見込まれたが、輸出による利益と防衛省から返還を求められる見込み額との折り合いがつかず、参画を見合わせた。部品とはいえ、武器輸出にストップがかかった形だ。ただ、同社は自衛隊向けとなる三十八機分の最終組み立て・検査は受注した。
防衛省から三菱電機、IHI、三菱重工業に支払われる設備投資費は、来年度予算の概算要求額を含め、三年間で約一千四百八十億円。このうち部品製造を見送り、輸出もしない三菱重工業は返還対象から外れる。防衛省は他の二社について返還額の算出法を検討している。
三菱電機広報部は「日本政府の指導・方針に従っている」と述べ、IHI広報・IR室は「輸出については白紙」という。三菱重工業広報部は「個別案件についてコメントしない」としている。
<F35戦闘機> 米国を中心に9カ国で共同開発したレーダーに映りにくいステルス戦闘機。2011年、防衛省はF4戦闘機の後継機に決定した。17年3月、青森県三沢基地に配備される計画だが、米国での開発は遅れている。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014110702000115.html

アパッチの時も思ったけれど、日本政府は防衛産業に対して全く感謝の念も敬意も無いモンスターカスタマーの類になって居ると言う自覚が無いのだろうか。
F35のサプライチェーンに組み込まれ、継続した受注があると言う前提で請けた話を、後から「輸出した分は補助金返せ」と言い出して利益を相殺させるとか、非常識極まるとしか言い様が無い。
三菱重工業が即座に輸出を諦めたのも、輸出利益を見込んだ見積額だったのを、後から前提をひっくり返されたので、その分の損を防衛産業が被ったという話だろう。
そもそもの話、F35の調達を急がされている最大の原因は、日本政府が第4次FXの選定を遅らせたからで、FACOやF35の国内生産施設の整備で急かされた分を、国が負担するのは当然の話。
それを「補助金」という形で支出しているのも、「特急料金」を調達価格に組み込まれると価格が上がり、国民の理解を得難いからと言う政治の問題であって、防衛産業にとっては、本来なら関係が無い話なのだ。
加えて言うなら、三菱重工業を始めとする防衛産業企業にとって、国からの受注は本業の1割にも満たない額でしかなく、機密保持に関わる費用や手間を考えれば、利益率だって良い訳でもない。
それでいて、対外的には「人殺しの兵器製造企業」というレッテルを張られ、特定国には「戦犯企業」と罵られる。全く割に合っていない。
日本の防衛産業が、私企業に甘えていると言われる所以である。
万が一、三菱とIHIが「それならウチは利益が出ないので手を引く」と言い出した場合、日本政府は代わりの調達先なんて存在しないので、全数アメリカからの輸入に切り替えるしかなくなり、かつ、国内における戦闘機関連技術の継承が絶たれるので、今後は戦闘機開発はおろか、現用戦闘機の部品調達にすら事欠く状況になると言うのに、コレである。
別に、独占企業として暴利を貪らせろ、とは言ってない。無茶な値引きや条件を付けてで疲弊させるのはヤメレという話。
ぶっちゃけ、三菱が防衛産業から手を引いたら、日本は護衛艦も戦闘機も戦車もロケットも作れなくなり、国防を論ずる以前のレベルでガタガタになるくらい依存している一方で、三菱の側は日本政府が顧客から外れても総売り上げの1割程度しか減らない状況って事くらい、いい加減理解しておけと。
…これ、アメリカの軍需産業だったら、こんな甘い対応しないで、平然とえげつない手札を切ってる所だと思うわ。