gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

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海法紀光氏による「小説家になろう」系の異世界チート物についての解説 - Togetterまとめ

(前略)
なお、なろう系長編で、自分が一番よく見かけるテーマが、「現実世界で不遇/不真面目で孤独だった主人公が、異世界という第二のチャンスで、ちゃんとした人間関係、社会性を築くこと」というもの。わりとちゃんとしたビルドゥングスロマンですよ。
(後略)

http://togetter.com/li/932488

異世界でなら出来る努力を、なぜ現世では出来なかったのか」という点を説明できている作品は非常に少なくて、結局は、チートと言う「人を出し抜く何か」が無ければ、フテ腐れて何もしない点は、異世界でも現実でも変わらないんじゃないの?そんなものが「成長」なの?
…と考えた時、基本的になろう系作品は、どうしようもなく「代償行為」の産物だと気付かされる訳で。
ちなみに、そういう作品を貶すつもりも、非難するつもりも無い。
それは、作者と一部の読者にとっては、この苦痛に満ちた現世を生きる為に必要な麻酔薬だと思うから。
実際に、自分もなろう系作品を楽しんでいる身だし。
大人気作品である「魔法科高校の劣等生」を初めて読んだ時なんて、自分の中学生の頃の妄想がそのまま出てきた産物としか思えなくて、悶絶もしたし。
ただ、「なろう系作品の大衆化」という件に関しては、「ザンヤルマの剣士」におけるイェマド文明の「行きついた先」という物が、非常に示唆に富んでいる。
ネタバレなので、一応見えなくしておくけれど、簡単に言えば、文明の発達が行きついて、人が生きる為に働く必要が無くなってなお豊かな物質的充足が得られるようになった先で、人は「自分の生きる世界」すら「自分専用」にしてしまい、自分専用の仮想現実の中にヒキコモった。
これは、読者が代償行為として「異世界にチート転生して、活躍する主人公の物語」に耽溺するのと、根底にある物は一緒に思える。
なろう系作品では、主人公は友情、愛情、平等、公平を口にしつつ、相方は奴隷と言う立場だったり、勇者とその従者、と言うように立場の差があったりする事が多い。
結局のところ、ヒロインですら本当の意味で主人公と対等な存在ではなく、あらゆるものが自分にとって都合の良い舞台装置であり、なろう作品の「異世界」とは、イェマド文明の「自分専用の仮想現実」と何も変わらないのではないか、と。ザンヤルマの剣士」がイェマド文明にどのような問題を提起し、傷つきやすく不器用な主人公が最後にどんな決断を下したのか、は作品を読んでほしいのだが、まあ、生きる為には「なろう系作品」だけではいけないよね、とも思う。
大陸の方では一足飛びにネット環境と入れ物が用意され、普通の文学作品が発達する前に、なろう系作品の様な「代償行為」の産物が飽和するほど供給されてしまったおかげで、「ままならない」日本のラノベは「面白い」という評価だったのが、最近のなろう系作品のラノベ進出で「つまらなくなった」と言われているんだとか。
読み専の読者は、面倒くさい事は考えずに、自分の好きな作品を読む、でも良いと思う。
加齢と精神的成長に伴い、読む作品という物は変わっていくものだから。
しかし、売れるからと安易になろう系作品を書籍化し、従来の様な小説家の育成をしなくなった出版社の方は、自分の足を食うタコというか、世紀単位で金の卵を産みつづけてきたガチョウを、今少し不調だという理由で潰して肉にしてしまおうとする類の愚かさを感じる。
文学は多様性だよ、アニキ!(byドズル)
…あ、なんか話が逸れた…