gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

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米、スーパー301条復活に含み…通商年次報告 : トランプ大統領 : 読売詳報_緊急特集グループ : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

【ワシントン=山本貴徳】米通商代表部(USTR)は1日、議会に提出したトランプ政権の通商政策に関する報告書で、米国が不公正と判断した貿易に対し、制裁関税などを課す「スーパー301条」の復活に含みを持たせた。
世界貿易機関WTO)の紛争解決の判断より、米国の法律や慣例を優先させる考えも示し、米国の利益を優先する「米国第一」を通商分野で徹底させる構えだ。
スーパー301条は、貿易相手国に不公正な慣行があると米政府が判断した場合、制裁関税などの措置を一方的に発動できる規定だ。対日貿易赤字の解消などを目的とした時限立法として、1988年の米包括通商法に盛り込まれ、米国が相手国に市場開放を迫る際に使われた。
クリントン政権が一時、復活させたが、2001年以降は失効している。
(後略)

http://www.yomiuri.co.jp/feature/TO001479/20170302-OYT1T50081.html

まさか、トランプがここまでアホだったとは…。
ビジネスマンであるのなら、国際ルールを一国の横暴で覆すデメリットを一番理解して居なければならなかったというのに、一番安易な手段を取りやがった。
実を言うと、冷戦後に日本を都合の良い仮想敵国として祭り上げ、経済戦争を仕掛けてきたアメリカが、その武器として使ったのが、「スーパー301条」であった。
当時、誰の目から見ても露骨で無茶苦茶な経済制裁として付きつけられた「スーパー301条」は、後にWTO違反であった判断されており、アメリカはこっそり廃止する事で日本からWTO違反の訴訟を起される事を回避している。*1
それを復活させるという事は、つまり正面からWTOに喧嘩を売るに等しい暴挙なのだ。
アメリカにとって、WTOは対中国経済政策における、重要なバッシングツールであり、アメリカが「国際正義」の名の元に経済解放を押し付ける手段として使われてきたシステムだった。
中国がWTOに加盟してから、ずっとマイルールを世界に押し付けて安価な製品で市場を奪い、しばしばWTO違反のレッテルを貼られて改善要求を食らっているのだが、アメリカが率先してWTOを無視する、と宣言した事により、WTOと言うカードが中国に対する経済制裁カードとして効果を無くしたに等しくなる。
アメリカと中国と言う2大経済大国がWTOを率先して無視するなら、EU経済圏が揺らいでる今、WTOの実効性は著しく低下する事になるだろう。
この状況で最大の利益を得るのは、これからWTO違反をするアメリカではなく、既にWTO違反の数々を問われていて、これからも守る気が無い中国だ。
こうなると、日本としては、トランプを適当な飴で宥めつつ、TPPをアメリカ抜きで成立させる事に、大きな価値を持つ事になるだろう。
トランプの要望で日本がアメリカとFTAを結ぶにしても、それはロクでもないものになる事は間違いないのだから。
いやー…しかし、本当にトランプはアホだと思う。
日本が失われた20年で塗炭の苦しみを味わう切っ掛けとなる、プラザ合意を日本に飲ませた後、円高になってなお貿易赤字の膨らむアメリカが、WTO違反を承知で「スーパー301条」を吹っかけた事を、日本人は、決して忘れてはいない。
当時のアメリカの傲慢さを知っていて、アメリカが望んだとおりに日本が不景気の底に沈んだ後、ジャパンバッシングに夢中になって中東を軽視し、アメリカ同時多発テロ事件(911)を迎えたアメリカを自業自得だと嘲笑った高級官僚は、少なくないだろう。
そんな日本政府のトラウマである「スーパー301条」を持ち出してきた以上、日本政府はアメリカに対する内心の警戒度を最大限に引き上げたに違いなく、数少ないトランプの味方であった日本ですら、潜在的な敵に回した事になる。
加害者は、被害者の気持ちなんてこれっぽっちも理解できないって、事実を端的に抉り出した事例だと思う。

*1:まあ国防という生命線を握られたアメポチ日本が訴訟を起こす筈も無かったのだが…