gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

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人件費は上昇したのに、中国製品はなぜ今も安いのか 中国流「ローコストオペレーション」の強みと弱み | JBpress(日本ビジネスプレス)

6月29日、中国の通信大手の華為技術(ファーウェイ)が千葉県に工場を設立する方針であることが報じられました。工場は研究開発を主とするR&D拠点になると見込まれています。これまで製造業の進出というと、日本から人件費の安い中国への一方通行だったのが逆方向での進出になるということで、各所で驚きをもって受け止められています。
今回のファーウェイの日本進出は、中国企業が大きく力をつけてきたことと、日中間の人件費の差がもはやそれほど大きくはないということを端的に示しています。しかし中国製品の価格は日本製品と比べ、いまだに大幅に安い傾向があることは周知の通りです。この相変わらずの価格差はどこからくるのか? 筆者は、中国企業が持つ最大の強みである徹底的な「ローコストオペレーション」によって差が開いているのではとみています。
(中略)
中国製品というと、安価だけれども品質が著しく低いことから「安かろう悪かろう」の代名詞として扱われてきました。現在も、建材や鉄鋼製品などいまだに品質面で目も当てられない製品分野は少なくありません。
ただし、携帯電話をはじめ家電や日用消費品などは、中国の経済発展とともに年々品質が向上し、先進国でも実用に耐えるレベルにまで向上してきました。
(中略)
中国よりも人件費の低い東南アジア諸国も存在する中、中国製品はなぜいまだに高い国際競争力を保っているのでしょうか。
結論を言えば、無駄な費用や経費を極力抑えて低価格化を実現し、その一方で、国際市場で必要とされる最低限の品質を確保しているからです。必要最低限の品質を低コストで実現しているのが今の中国企業の姿なのです。
(中略)
ローコストオペレーションとは読んで字のごとく、無駄な費用や経費を極力抑え、企業の業務活動におけるコストの低減化を図ることです。日本の「カイゼン」もある意味、ローコストオペレーションの一種とも言えますが、実際には日系企業の場合は原料価格などを無視して下請けから安く買い叩いているだけ、という状況が多い気がします。
(中略)
第一の理由として挙げられるのは、すでに他の様々なメディアでも指摘されている通り、中国企業は決断が非常に早く、投資を果断に実行するという点です。
(中略)
中国企業の決断が早いのは、単純に中国人が全体的にせっかちな性格をしているという要因もありますが、やはり大半の中国企業において現在の経営者がその会社の創業者であることが大きいでしょう。会社の業務拡大に熱心な創業者兼社長(総経理)が施策を決定すると、トップダウンで会社全体が一気にその方向に舵を切るのです。言い換えれば中国にはそれだけ若い企業が多いということかもしれません。
(中略)
第2の理由として挙げられるのは、資金の調達環境が日本よりも恵まれていることです。
(中略)
日本では資金提供者として、まず銀行など公的金融機関が挙げられますが、中国の場合ですとベンチャーキャピタルなどプライベートファンドが数多く存在します。創業期のベンチャー企業はこれらファンドの支援を受け、あっという間に設備や拠点を整えるという特徴があります。

(中略)
第3の理由は、「品質への割り切り」があることです。
中国の経営者は、やみくもに高い品質を目指すのではなく、エンドユーザーが求める最低ラインの品質を見定め、そのラインぎりぎりまでコストを下げることに長けています。
(中略)
筆者は一時期、中国の工場で品質管理を担当していたことがあります。その際、実感したのは、中国人の品質意識は想像以上に低いということでした。
製造工程に不良対策を施してマニュアル化しても、「これでもっとコストが下がるから」などと言って、勝手に現場で工程や使用材料を変えてしまいます。また、サプライヤーも、何も言わずに原材料を安価な粗悪品に変えてくるので、まったく油断できません。中国企業における最大の弱点は、やはり上から下まで低すぎる品質意識でしょう。
(中略)
日本企業には、顧客の要求以上の品質を追い求めるあまりコストが増大し、価格面で競争力を失うという過剰品質問題がかねてから存在します。
(後略)

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50392

まあ、当たり前の話だけど、「改善」には「金が掛かる」。
ボトルネック工程の大規模改善に、最新の工作機械を入れれば簡単に解決するのに、「金が無い」という理由で小手先の改善を積み重ね、古い機材で精度や品質を求めるのが、失われた20年の日本企業のやり方だった。
黒字倒産なんてアホみたいな現実が日本で合ったように、この記事で挙げられた「第2の理由」は、実はとてつもなく重く、根本的な問題だったりする。
どんなに社員が頑張っても、どんなに社長が有能でも、資金を引っ張って来れなければ、何もできないのだから。
日本の不景気の根本原因に、日本の銀行における投資機能の劣悪さは、間違いなくあり、結局のところ、あらゆる業界で発生している「中抜き」構造の存在も、結局は「大企業しか相応の資金を調達できないから」という点に原因がある。
銀行には、与信、という言葉がある。
これは、銀行が取引先企業に対して、「どこまで信用(資金)を預けられるか」を示す値で、これは実は比較的単純な計算式で機械的に付けているだけにも拘らず、この金額以上の取引は絶対に出来ないようになっている。
つまり、ある企業が飛躍的に成長するチャンスを掴んだとしても、与信以上の資金が調達できないので、仕方が無く間に大企業を挟んで、中抜きを甘んじで受けなければ、どんな大取引も受注できないのだ。
もちろん、間に大企業を挟む事で、発注側には失敗時のリスクを緩和できる、と言うメリットはあるのだが、大企業が中抜きする分の価格上昇を、発注側が負担するか、最終施工側が利益を削って負担するしかない。
ハッキリ言って、これが日本のあらゆる業界でコストを上げ、末端が貧困に苦しむ原因になっている。
全て、銀行が金を出さないから発生している問題なのだ。
バブル崩壊の際に、銀行は公的資金で救って貰えて、絶対に倒産しないという安心を得たにもかかわらず、彼らは羹に懲りて膾を吹くような状況になり、国内企業への資金供給を絞り、手堅い国債とか、超安定のインフラ企業か、海外のミドルリスクハイリターン案件にばかり金をつぎ込むようになった。
成長力は無いが手堅い国内企業には金が回っても、成長力がある国内企業に資金が回らないのだから、景気が上向く筈が無い。
日本経済を立て直すためには、まず銀行を改善するのが一番最初なんだけど、一見、銀行システムは特に問題が無いから、誰も手を付けないという…。
追記。
追加で調べたら、工場労働者の人件費の比較で、上海と横浜で6倍以上の賃金格差がある時点で、まだまだ人件費だけで価格優位があるだろ案件だった…。