gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

はてなダイアリーが更新できなくなったので、泣く泣くこちらに移行。使いづらいようなら、別なサービスへの引っ越しも検討する予定。元ダイアリー:http://d.hatena.ne.jp/gayuu_fujina/

日本に突きつけられる現実、「核の傘」は開かない 核戦力の弱体化に危機感を抱く米国、核戦略を抜本的に転換 | JBpress(日本ビジネスプレス)

(前略)
昨年(2017年)末にホワイトハウスは「安全保障戦略」を公表した。また、ペンタゴンは2018年1月に「国防戦略概要」を、2月には「NPR(核戦略見直し)-2018」を公表している。これらの安全保障戦略、とりわけNPR-2018によって、外交国防の舵取りをする首脳人事が大幅にテコ入れされているのは避けられない流れといえる。
なぜならば、NPR-2018によって明示されたトランプ大統領核戦略は、これまで半世紀にわたって歴代アメリカ政権が維持し続けてきていた基本的方針を抜本的に(180度)転換するものであるからだ。
(中略)
アメリカ歴代政権の核戦略の基本方針は、共和党政権・民主党政権を問わず、「核戦力削減」方針であった。米ソ冷戦の先鋭化に伴い躍起となって核戦力を強化し続けたために「over-kill」状態になってしまった。それに加えて財政的にも逼迫してきたため、ニクソン大統領は核戦力を削減する方針を打ち出した。それ以降、歴代アメリカ政権は核戦力削減を核戦略の基本方針として踏襲し続けていた。
(中略)
歴代政権による核戦力削減の結果、アメリカの核弾頭保有数は現在6800〜7000発レベルに減少した。ちなみにロシアは7000〜7290発、保有数第3位のフランスは300発、中国260〜270発、イギリス215発となっている。それら国連安保理常任国かつNPT(核拡散防止条約)加盟国以外の核弾頭保有状況は、パキスタン130発、インド120発、イスラエル80発、北朝鮮数発(未確認)である。
(中略)
核戦力とは核弾頭の数量だけではなくそれらの性能や核弾頭を攻撃目標に送り込むミサイルや航空機それに潜水艦などの総合力で判断しなければならない。よって、ロシアのほうが若干弾頭数は多いかもしれないものの、性能などをトータルで考えると米軍核戦力は群を抜いて世界最強であるというわけだ。
(中略)
伝統的核戦略から決別しようとしているトランプ大統領の登場により、アメリカの核戦略は「核戦力削減」から「核戦力増強」へと180度変針させられたというわけだ。
(中略)
北朝鮮が核弾頭搭載長距離弾道ミサイルを実戦配備につかせた場合、アメリカ本土を直接核攻撃できる敵対勢力が2カ国(中国・ロシア)から3カ国(中国・ロシア・北朝鮮)になってしまう。さらには、イランやリビアパキスタンなどアメリカがいうところの“ならず者国家”やテロリスト集団に核弾道ミサイルをはじめとする核兵器が拡散してしまう恐れがますます高まることになる。
(中略)
トランプ政権が核戦力増強方針に踏み切ったのは、「アメリカの核戦力は極めて弱体化してしまっており、抑止効果を失いつつある」と判断した結果である。これは日本にとって深刻な事態を意味する。つまり、日本政府が信頼し続けてきた(本心かどうかは定かではないが)、そして全面的に頼り切っている、アメリカの「核の傘」が「いざというときには開かない」可能性が低くはないことをトランプ政権が暗に認めているということになるのだ。
(中略)
いずれにしても、日本政府や国会には、「アメリカの『核の傘』というレトリックを全面的に受け入れ、それに対して疑いを持たない」といった日本の核戦略の基本方針を見直そうという意思も勇気も存在していないことだけは明らかなようである。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52638

改竄された文書が公開されても、”ソンタク”と叫んで現実を理解しない識者が居るように、同じアメリカの発表を聞いても180度違う解釈をする人も居るって話かなぁ。
トランプのNPR2018を読めば「核の傘が開かない」なんて弱気な事は一言も言っておらず、むしろ核の傘を強化する為の施策だと序盤で明言している。
関連:米国の「核態勢の見直し(NPR)」 2018 (核不拡散・軍備管理)(PDF)

(前略)
米国が軍備管理・不拡散核セキュリティーという長期的な目標から離れることはない。核不拡散条約(NPT)の目的に対する米コミットメントは、依然強固である。しかし、現在の環境が、近い将来核兵器削減に向けた更なる進展を極めて困難にしていることを認識すべきである。我々の核抑止が依然強固であると保証することが、有意義な軍備管理イニシアティブに関与するよう他の核保有国を納得させるのに最良の機会をに最良の機会を提供してくれるだろう。
(後略)

同じ文書を読んでも、最初からバイアスが掛かっている人には、正しく読めないって話の典型かと。
そもそも、アメリカの「核戦力削減」方針が始まった経緯を考えれば、その前提が悉く崩れている、と言う事が判っているべきなのに、そうした前提は一切無視だ。
東西冷戦のピーク時までは、「核の使用を前提」とした核戦力増強が打ち出されてきたが、80年代中盤にソビエトの体制に罅が入るにつれ、米ソは同時に核軍縮へと舵を切った。
相互確証破壊によって、米ソ共に核兵器が「使え無い」にも拘らず、その製造・維持に莫大な費用が費やされていた為、ソビエトは、屋台骨をへし折りかねない軍事費の拡大を止める為、アメリカも、際限ない軍拡に疲れていたという、相互に経済的な理由で軍事費の削減を目指したのが出発点だった。
しかし、その試みは既に遅く、ソビエトは崩壊。
90年代には、アメリカが唯一の超軍事大国として君臨したが、中東や対テロの非対称戦が増加した事により、「使え無い核や(高価な)超高性能兵器より、使える(手頃価格の)通常兵器」を優先して調達する必要が出来て、核戦力は最低限を残して削減と言う路線が継承された。
中露の核に対しては、MDを強化する事で「相互確証破壊」をアメリカ優位に立たせ、明言こそしないが、「アメリカが核戦争の唯一の勝者になり得る可能性」を示す事で、ロシアの核抑止をしていたのが従来のアメリカの立場になる。
米露中、3者の核兵器(矛)が同じ性能ならば、MD(盾)を保有するアメリカが有利なのは、言うまでも無い。
しかも、金も技術も無く、ロシアの後追いしか出来ない中国に、ソビエト崩壊で核戦力の削減すらアメリカに金を出して貰わないと出来なくなったロシアが相手なら、アメリカも従来の核戦力を維持するだけで、十分に核兵器(矛)の性能的優位も維持できた。
これが90年代から00年代中盤までの流れになる。
しかし、中国が経済発展し、旧ソビエトの遺産を買い叩いて手にし、急速に宇宙技術と弾道ミサイル技術を伸ばしてきたのが、ここ10年程になる。
ロシアも、00年代の原油高騰で経済が息を吹き返し、ようやく老朽化した核戦力の更新に着手した。
その成果が、つい先日プーチンが高らかに歌い上げた最新核戦力であり、中露の核戦力は、アメリカと同等、部分的には上回ったかもしれない状況に達している。
つまり、中露に合わせて古いまま放置していた核戦力を、アメリカもしっかり再整備する時期に至ったと言う点で、「(相対的に)弱体化した」と言っているだけで、現時点でも中露と同等以上の核戦力は持って居るし、MDによる優位もあって、アメリカの核戦力の優位は、現時点では十分に確保されている。
ただ、ロシアがINF条約に違反する核戦力を整備しており、既に対応する中距離核戦力を放棄してしまったアメリカとしては、ロシアが中距離核戦力を放棄しない限り、対抗しての再整備(核弾頭の追加)をしなければならない訳で、「核戦力増強」が必要になると言う話。
…どこが「(アメリカの)核の傘が開かない」なんて話に繋がるのか、さっぱり理解できない。
この状況で、日本が「アメリカの核の傘を疑う」なんて言い出したら、韓国と同レベルの池沼国家と馬鹿にされるだけだと思う。
むしろ、オバマ政権時代よりずっと、「核の傘」は機能していると思うよ。