gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

はてなダイアリーが更新できなくなったので、泣く泣くこちらに移行。使いづらいようなら、別なサービスへの引っ越しも検討する予定。元ダイアリー:http://d.hatena.ne.jp/gayuu_fujina/

韓国に売った日本人「実行犯」の告白「技術流出-新日鉄の場合」  | 経済の死角 | 現代ビジネス 講談社

韓国籍の〝産業スパイ〟が、中国の鉄鋼大手に機密情報を売り渡した。蓋を開けると、その技術は日本企業が開発したものだった---。アジアを舞台に繰り広げられた熾烈な企業間競争の内幕に迫る。
■損害は1100億円
〈損害賠償等請求事件?訴訟物の価額 金1105億4120万円〉
〈被告POSCOが、(中略)田中氏、大蔵氏、被告瀬田及び山下氏(仮名、原本では実名=編集部注)らをはじめとする日本に居住する原告の元社員、その他の日本における複数の協力者と共謀の上、(中略)高額の対価を支払うのと引き換えに、(中略)高品質の方向性電磁鋼板の量産を極めて短期間で成功させたことにより、原告に対して巨額の損害を被らせた〉
請求額約1100億円、印紙代だけで1億1657万円(!)という超巨額の賠償請求訴訟が今年4月、東京地裁に提起された。
原告は日本最大の鉄鋼メーカー・新日鉄(現・新日鉄住金)、被告は韓国の鉄鋼最大手・ポスコ。原告側代理人には、日本最大のローファーム・西村あさひ法律事務所の15人の弁護士の名前がずらりと並ぶ。
訴状によると、ポスコ新日鉄元社員が結託して門外不出の技術をポスコへ漏洩していたというのだ。
ただし、一方のポスコも7月にこの訴えが無効だと韓国国内で地裁に提訴。両国にまたがった法廷闘争に発展している。
(中略)
ポスコは複数の新日鉄OBを介して、いくつかのルートから最先端技術を入手しています。もとより私の頭の中にある知識や、体に染み込んだノウハウは私のものです。それを正当な手段でポスコに提供しただけです。
新日鉄を退社した後、私の持つノウハウは同業他社との公平なコンペを経て、ポスコが鋼板の技術として正式に採用しました。
このビジネスで、オペレート指導も含めてポスコから数億円を得ました。設計士に設計料を支払ったり、何年間にもわたって毎月のようにポスコに出向いて現地指導を行ったりしています。そう考えると、この報酬は法外な金額ではありませんし、また提供した技術はすでに特許が切れているものです。新日鉄がそのノウハウもすべて自社のものだと主張していることに正直、不満を感じます。
(中略)
新日鉄が技術者に報いることは少なかった。電磁鋼板の技術を集中的に開発していた'70年代から'80年代にかけて、技術者が発明した特許には1件につき、わずか1000円から1500円程度の手当が支払われただけでした。
たとえば、鉄鋼生産でトン当たり2万円のコストダウンができる設備方式を開発したとしましょう。月に1万tの粗鋼を生産したら、2億円のコストダウンになる。しかし、これだけの功績を残しても、会社からもらう給料は何の発明もしていない社員と同じなのです。
(中略)
瀬田氏は約32年間新日鉄に勤め、研究職社員として電磁鋼板の技術開発に従事してきた。しかし、ある日会社から、「明日から出てこなくていい」とリストラを示唆された。そのため、韓国の大学に研究者として応募し、転職したという。
その大学がポスコの前身、浦項総合製鉄が設立した浦項工科大学校だった。瀬田氏は語学が堪能だったこともあり、客員教授として迎えられ、ポスコとの共同研究を行う。この研究によっても電磁鋼板の技術が流出した可能性がある。
(中略)
サムスンが狙っているもの
このような事例は、氷山の一角にすぎない。
(中略)
サムスン電子の日本人顧問から突然、自宅に電話がかかってきたのは'00年春のことでした」
こう話すのは元ソニーの技術者、小黒正樹氏である。21年間勤めたソニー時代に、300件を超える特許を取得した小黒氏がサムスンに転じる決意をしたのは、会社に対する不満があったからだ。

「一言で言えば、ソニーは次世代の商品を発明できるエンジニアよりも、管理者を優遇する会社になってしまったのです。
(中略)
用意された肩書は、日本企業の役員待遇にあたる「研究委員」。家族を日本に残しての単身赴任だったが、110m2以上のマンションに、ルノーサムスン製自家用車と運転手、日本語が堪能な秘書も用意された。年俸はソニー時代の約1・5倍だったという。
(中略)
「やがて気がつきましたよ。要するに彼らは技術者が欲しいのではなく、技術者が持っているノウハウが欲しいだけだと。ところが日本の技術者のなかには、それが分からない人もいて、親切にノウハウを教えたら、そのとたんお払い箱にされる例をいくつも見てきました」
(中略)
パナソニックの創業者・松下幸之助氏は「松下は人をつくる会社です。あわせて電気製品もつくっています」と、人材の重要性を強調した。だが、今の日本が行っているのは目先の帳尻を合わすためのリストラばかりだ。技術者たちの目は死んでいないか。そこから問い直さなくては、日本企業の復活はない。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/34294

まあ、日本企業の技術者軽視は、間違いなく問題だからなぁ…。
終身雇用が成立していた頃ならともかく、終身雇用が崩壊した現状、情報流出を止められるのは、会社への忠誠心*1ではなく、実際に待遇(給料)で結び付けておくしかないのだが、上に居る役員であればあるほど、そういう感覚とは無縁だから…。
加えて、管理する側(人事・総務)が文系馬鹿だと、本当に必要な技術者と、ただ居るだけの技術者の区別がつけられないから、適正な評価で報いる事もできないというオチ。
そりゃ、技術が流出するのも当然だよね…。
つか、手当て1000円の技術なら、請求額も1000円でいいだろ?
本質的には、技術者の貢献に対する適正な対価を支払っていない、そういう話なので。

*1:実体は終身雇用を盾にした沈黙強要