gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

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News & Trend - 特許庁がシステム刷新に再挑戦、足かけ8年の巨大プロジェクトをスタート:ITpro

一度は失敗したシステム刷新に、特許庁が再挑戦する。2015年3月までに新システムのアーキテクチャー案や移行計画をまとめた上で、3月末か4月から同案の妥当性について意見を募集(図)。集めた意見を基に計画を修正し、要件定義と調達活動を開始する予定だ。
要件定義や調達手続きに1年以上かかるため、新アーキテクチャーに基づくシステム開発が始まるのは2017年頃、刷新完了は2022年頃となる。「次の失敗はない」(特許庁)。同庁は、不退転の覚悟でシステム刷新に臨む。過去の失敗から5つの反省
特許庁は基幹系システムの全面刷新を2006年に始め、設計・開発業務を東芝ソリューション、管理支援業務をアクセンチュアがそれぞれ落札した。だが開発は難航し、5年後の2012年1月に開発中止に追い込まれた(関連記事1:55億円無駄に、特許庁の失敗、関連記事2:2012年の特許庁システム開発中止、開発費全額返納のなぜ)。
同庁はこの失敗を受け、2013年3月にシステム刷新計画を改訂(関連記事:特許庁、システム刷新の新計画を公開)。その後2年間かけて調達再開に向け作業を進めていた。
前回の失敗の反省から特許庁は、計画の進め方について5つの点を見直した。(1)全システム一括刷新の方針をサブシステムごとの逐次刷新に変更して開発の難易度を下げる、(2)特許庁長官をトップとするプロジェクト管理体制を整備する、(3)特許庁職員自ら業務を徹底的に分析し見える化する、(4)分割調達の方針を見直しサブシステムごとに設計からテストまで一括で調達する、(5)経験豊富な第三者が進捗状況を定期的に監査する──である。この方針に基づき、移行計画や新アーキテクチャー案を練り上げた。
すべての業務をBPMNで記述
アーキテクチャーでは、業務プロセスの標準記法であるBPMN(ビジネス・プロセス・モデリングノーテーション)で特許庁の業務を記述した上で、BPM(業務プロセス管理)ツールを基盤にシステムを構築する。庁内業務については、2年間でUML(ユニファイド・モデリング・ランゲージ、統一モデリング言語)での記述を完了しており、これをBPMNに書き直す。
(後略)

http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/column/14/346926/031000193/

これ、昔、詳しい記事を幾つか読んだけど、計画立ち上げ時の現実的な路線で仕様を固めていた担当者を、人事異動で吹き飛ばして、それまで積み上げた仕様がご破算になった後、後任が営業的な売り文句に騙されて夢を見ちゃったのが最大の問題だった。*1
これは、別に特許庁だけの問題じゃなくて、人事で簡単に人を動かしちゃって、プロジェクトの引き継ぎもしない、なんてのはザラに良くある事であり、企業と担当者の癒着防止とかメリットもあるけれど、現実的には「決め直しなら、それまでの仕様策定分の金をくれ」と請求できない日本のIT請負契約文化にべったり甘えた構造問題とも言える。
まず、この辺りを改革すれば、気軽に「担当者を飛ばしたので、前提から組み直しね」なんてアホな事を言い出す企業や組織は相当減るんじゃないかな。*2
当然、そのプロジェクト発起人と元担当者の評価は「ムダ金乙、責任取れや」になるんだから。
ちなみに…「2年間でUMLでの記述を完了しており、これをBPMNに書き直す」と、さらりと書かれているが、このUML資料を作る為に、東芝はのべ人数だと万人単位の人間を投入しており*3、「書き直す」なら簡単、何てことは一切ない。
何故なら、この手の文書は記述一つに対しても、確認のレビュー工程を経ており、作成には膨大な打合せの背景にあるのだが、何らかの文書に書き下す際には、「結果」だけが表記される。
だから、全く別な記法であるUMLからBPMNへ書き直す場合、UMLにあってBPMNに無い情報は抜け落ちて失われ、BPMNにあってUMLに無い情報は、改めて膨大な打ち合わせて埋めていくしかない。
それは、「書き直す」というより「やり直す」に近い作業である。
下手に、UMLという資料がある分、むしろ事態が複雑化している可能性まである。
正直言って、この案件、また失敗するんじゃないかな。

*1:そのあと、炎上したので慌てて戻した元担当者が癒着で訴えられたり、グダグダは他にもあるのだが…

*2:もしくは、今よりずっと素直にパッケージに組織を合わせるって事をするようになる

*3:しかもタダ働き!