gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

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泡噴く幼児…塩素ガス攻撃の惨状 シリアで働く医師証言:朝日新聞デジタル

泥沼の内戦が続くシリアの病院で働く医師が16日、米ニューヨークの国連本部で会見し、市民が塩素ガスの攻撃にさらされたとして当時の病院内の映像を使いながら被害を証言した。医師は「私たちはミサイルやたる爆弾で殺されてきたが、ここに毒物が加わった」と述べ、国連安全保障理事会に行動を求めた。
証言したのは、シリア北西部サルミンの病院で働いていたモハメド・テナリ医師。安保理の非公式会合で証言後、会見に応じた。シリアの医療機関を支援するNGO代表者も同席した。
説明によると、3月16日、勤務先に患者が次々と搬送された。口から泡を吹き、せき込み、ゼーゼーとあえぐ息づかい。医師たちは服を脱がせ、全身を洗った。子ども3人を含む一家が死亡する惨事も。映像には混乱に陥る院内で、目を見開き、鼻から泡を吹く幼児らに心臓マッサージをする医師の姿が収められている。安保理では涙する大使もいたという。
(後略)

http://www.asahi.com/articles/ASH4K2J5KH4KUHBI00D.html

ぶっちゃけた話、アサド政権が毒ガスを未だに使い続けている最大の理由が、「アメリカが実質的に黙認してるから」なんだよね。
2013年8月にアサド政権が最初のガス攻撃を行った際に、アメリカは即座に非難決議と共に武力介入を匂わせる発言をしたのだが、その化学兵器使用の証拠を出さずに「黙って日本は武力行使を是認しろ」と無理難題を吹っかけてきた。
日本政府は当然のように「証拠が無いなら、賛成できない。証拠を出してほしい」と拒否した。*1
同盟国たる日本にお断りされる状況で、欧州諸国が納得する筈も無く、特にシリアと仲が良いフランスが強くゴネて、アメリカの「即時攻撃」という論調はあっという間にトーンダウンし、「化学兵器を引き渡せば攻撃回避してやる」に後退。
この間にようやくアメリカは日本政府を納得させる証拠を出して、日本はアメリカ支持とシリアの資産凍結を宣言。
そして、運命の9月。
ロシアがシリアと「シリアの化学兵器を国際管理下に置き、シリアが化学兵器禁止条約に参加する」という同意を取り付け、アメリカとオバマの面目丸つぶれ、プーチン大勝利となった。
この結果、「米国は世界の警察官ではないとの考えに同意する」とオバマ自ら宣言して、腰砕けになった。
国連主導で、シリアの化学兵器禁止処置は進められ、2013年内の化学兵器搬出こそできなかったものの、2014年1月までに危険度の高い化学兵器類の搬出が完了。危険度の低いものも6月まで廃棄する事とした。
…んが、イスイス団が暴れだし、欧米の目がそちらに向いている隙に、アサドは塩素ガスのような特別な設備が不要な低難易度で合成できる化学兵器を使用開始。
アメリカは、イスイス団と敵対してくれるアサド政権を積極的に潰す事を止めてしまったので、アサド政権は大手を振って反体制派へ化学兵器をぶちまけ続けている。(イマココ)
この問題の面倒くさい所は、では、アメリカがロシアやフランスの反対を無視して空爆していたら、回避できたのか、と言う点。
これは、かなり難しいとしか言えない。
仮に、空爆でアサド政権を倒し、反体制派が改めて政権を取ったとする。
しかし、アメリカの支援を受けて成立した反体制派政権に、どれだけの国民の支持が集まるか、と言えばかなり疑問がある。
更に言えば、イスイス団の問題もある。
元々イスイス団は、反アサド政権過激派が、イラクの反政府過激派と手を組んで生まれた組織であり、アサド政権が健在だから、シリアがイスイス団に対しても抵抗が出来ている、ともいえるのだ。*2
もし、アメリカが空爆してアサド政権を吹き飛ばしていれば、シリアは短期間のうちにイスイス団に制圧されていた可能性すらある。
イスイス団のイカレっぷりは、アサドの虐殺・化学兵器使用すら霞むレベルな訳で。
結果論と歴史イフは不毛な話だけど、アサドの非道とイスイス団の非道、とっちがマシ?という罰ゲーム的2択について、部外者たる自分には、容易には判断できない。
理想を言うなら、シリア国内で第3の選択を見つけて、自力で解決してくれることなんだけど…。
無理だよね、やっぱり。

*1:イラク戦争アメリカは証拠なしに戦争に踏み切り、日本はそれに黙って追従した事で、大変不名誉な戦争に巻き込まれた挙句、7100億円もの債務放棄を強いられた。これについてアメリカから謝罪は当然、無い。たった12年前の話である

*2:それでも1/3程イスイス団に取られているが