gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

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プーチン「脱税2000億?ちがうちがう、2千億分楽器買っただけ、文句あるやつは前に出ろ」

【モスクワ時事】ロシアのプーチン大統領は、タックスヘイブン租税回避地)を利用して親友の音楽家らが20億ドル(約2200億円)を取引したとされる「パナマ文書」の疑惑に対して「(親友は)ロシアのために楽器を買っていただけ」と弁明した。
しかし、これを信じる国民は少ないようで、批判はさらに広がっている。
「親友を誇りに思う。副業で稼いだほぼ全額を楽器に費やし、国家に寄付した」。大統領は、パナマ文書が公表されて5日目の7日、親友を通じたオフショア(非居住者向け)取引疑惑に初めて口を開いた。
汚職の証拠と受け止められかねないパナマ文書について、それまで国営テレビなどに事実上の報道規制を敷いたが、インターネット上で疑惑が拡散。大統領選の前哨戦となる9月の下院選前に、自ら火消しを狙った。
独立系メディアは、この発言の信ぴょう性をすぐさま検証。「単純計算で20億ドルあれば、平均的なピアノ約5万台、バイオリン約13万丁、チェロ148万丁、フルート139万管、ビオラ44万丁を全部購入し、お釣りで(バイオリンの名器)ストラディバリウスも2丁買える」と伝えた。
有力経済紙ベドモスチ(電子版)は「2015年に輸入された楽器は(20億ドルの40分の1に当たる)総額5000万ドル弱」との統計を伝え、プーチン大統領の発言に疑問を呈した。 

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160409-00000064-jij-asia

元が共産主義国で、プーチンは「新興財閥の脱税摘発」と「強いソビエトへの回帰」を主張している事で国民の人気を得ている人だから、この件によるイメージダウンは避けられないし、下手を打ては失脚するか、軍を率いて軍政開始、くらいはしかねない。
ロシアって、ゴルバチョフペレストロイカ以降の話が判っていない人が多いんだけど、簡単にまとめると、ペレストロイカで内部改革を開始…したものの、結局は明らかになった負債の大きさを前にゴルバチョフは舵取りを仕切れずに、失脚してソビエトは崩壊。
その後、エリツィンへと政権交代し、ロシアは自由主義経済へと舵を切ったのだが、長年社会主義のぬるま湯で甘やかされていた国民や公営企業の大半は、競争力なんてものは無く、その技術と製品を二束三文で外国に叩き売り、そうした中で一部の目端が効くロシア人により国営企業の民営化の際にそれらを安く手に入れて「新興財閥」が立ち上がる。*1
しかし、中国を見れば判る通り、社会主義国が資本主義に転換すると、どうにも「銭ゲバ」が力を持つ傾向があり、ロシアの「新興財閥」は国益より自らの成長と利益を優先する。
結果として、ロシア経済は急成長する「新興財閥」とは裏腹に、ハイパーインフレによる経済悪化の一途を辿る事になった。
そしてとうとう1997年にロシア通貨危機が発生し、ルーブルを変動相場制へと移行。デフォルト発生。
その責任を取ってエリツィンは1999年に退陣。
そんな状況で、剛腕を以て「新興財閥」の脱税を摘発して、その財力を奪い、「強いロシア、ソビエト時代への回帰」を謳って登場したのがプーチン
この頃、原油価格の急騰でロシアの天然ガスが高く売れていた事も、ロシア経済回復要因としてプラスに働き、プーチンの人気は不動のものとなる。
以降の流れは、ご存じの通り。
リーマンショックからの欧州経済危機、アメリカの「世界の警察辞職」からのISIS団台頭、中東の政情不安とアメリカのシェール革命により、産油国カルテルを維持できず、原油価格が暴落。
ロシア経済を支えていた天然ガス輸出の利益が無くなり、ウクライナ問題による経済制裁を受けて、今ロシアの経済はガッタガタとなり、プーチン指導力に陰りが見えた所で、この爆弾。
プーチンの人気を支えていた、「天然ガス輸出による好景気」「新興財閥を叩いて国民の不平等感を解消」「かつての強いロシアの復権による国民の誇りを取り戻す」という3本柱の内、プーチンの失政で好景気が失われ、今回のパナマ文書プーチン個人が不平等の源泉でもあった事が暴露された。
…普通に考えて、ヤバいよね。

*1:この辺りは日本でも財閥誕生の際にはあった話。官営企業を二束三文で政府高官が手に入れて…という奴