gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

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苦戦続きの三菱重工、「国家」の看板を下ろしたら? 航空機、造船、宇宙事業・・・足を引っ張る三菱の顔 | JBpress(日本ビジネスプレス)

「国家と共に」という理念を掲げ、日本のもの作りを支えてきた三菱重工が、同社の顔ともいえる事業で苦戦続きとなっている。
祖業でもある造船事業において巨額損失を計上したことに加え、初の国産ジェット旅客機MRJは5度目の納入延期が検討されており、後がない状況に追い込まれた。
(中略)
三菱重工の子会社で航空機の製造を担当する三菱航空機は、同社が開発中のジェット旅客機MRJについて、5度目となる納入延期の検討に入った。三菱航空機はこれまで4度、納入時期を延期しており、9月にはようやく試験拠点である米国の空港への移送に成功していた。しかし、量産にあたって設計の見直しが必要なことが明らかとなり、関係者には納入延期を通知したという。
(中略)
日本の航空機産業の復活を掲げたMRJの開発には、政府も全面的な支援を行っていたが、開発は思いのほか難航。これまでに4回、スケジュールの延期が発表されており、初号機の納入は当初予定から5年遅れの2018年半ばとなっている。
(中略)
見た目の派手さとは裏腹に、航空機製造のビジネスは、以前ほど儲かるビジネスではなくなっている。その理由は、他の産業と同様、この分野にもコモディティ化の波が押し寄せているからである。
(中略)
かつては航空機を製造することができれば、その企業は高い付加価値を獲得することができた。しかし、航空機産業の分野は、近年、急速な勢いでコモディティ化が進んでおり、最終製品を作るメーカーの付加価値は低下している
(中略)
MRJは設計と組み立てを三菱が担当しているので、日の丸ジェットということになるが、使用されている部品のほとんどが外国製である。これは三菱特有の話ではなく、現在の航空機産業では、メガサプライヤーと呼ばれる大手の部品メーカーが、航空機の各ユニットを半完成品の状態まで作り上げ、完成機メーカーは最終組み立てだけを行うというのが主流となっている。
(中略)
極論を言えば、パソコンメーカーに近い産業構造となりつつあるのだ。
(中略)
三菱重工はこの造船事業でも手痛い損失を被っている。同社は2011年に米国のクルーズ会社であるカーニバル社から2隻の客船を受注した。総トン数12万5000トン、3250人乗りの大型船で、本来であれば2015年3月に納入する予定だった。
しかし、2014年10月にこれを2015年9月に延期すると発表。2015年9月に今度は12月に延期すると発表したものの、再び延期となり、最終的には2016年3月にようやく1番船が納入された。三菱は受注獲得を焦り、細部を詰めずに受注したともいわれている。結局、カーニバル側が求める内装を作れず、工事をやり直すという事態が頻発した。2隻の受注金額は1000億円だが、最終的には受注金額をはるかに上回る2300億円の損失を出している。
(中略)
これに加え、船の建造中に火災を起こすという不祥事もあった。実は同社は2002年にも、建造中の大型客船を炎上させるという事故を起こしている。この時にも巨額損失を計上しており、大型客船事業における失敗はこれで2度目だ。
(中略)
こうした事情が重なり同社の決算は冴えない状況が続いている。2016年3月期の売上高は前年比マイナス4.5%の4兆4855億円、当期利益は客船事業の特別損失が影響し638億円にとどまった。さらに最新の決算(2016年4〜6月期)では、三菱自動車の特別損失や為替差損などで166億円の経常赤字に転落している。
(中略)
日本は欧米と異なり、防衛産業に特化した企業なく、財閥系の企業がそれぞれ独自に取り組むという図式になっている。一方、欧米の防衛産業はM&Aを繰り返し、少数事業者の寡占市場へと移行している。専門的な分野は集中化した方が圧倒的に効率がよく、日本の場合にもそれが当てはまる可能性が高い。
(後略)

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48065

なんか見当はずれな分析してるなぁ、と著者略歴見たら、全く分析が当たった例がない野村證券グループのコンサル出身だった。
そりゃ、自分の見たいようにしか現実を見れないわな。
まず、MRJの納入延期だが、アメリカの耐空証明取得ってのは、かなり要求が厳しい上に多くの飛行実績を要する難関資格であり、今年の2月にようやく問題点を改修した試験機がロールアウトしたばかりのMRJが2017年度内に資格取得と言う計画自体がかなり無理のあるもので、その要求自体が政治色の強い、現場を無視したものだというのは、外からニュース記事を見ているだけで読みとれるぐらい露骨な物だった。
飛行実績(時間)を稼ぐため、試験機を複数同時に飛ばすなんて無茶をやっており、当然だが、途中で一つ問題が発生すれば、全部の機体を改修する必要があり、雪だるま式に時間が取られる諸刃の剣な手法であったのだ。
そして、8月に空調システムの不具合、ロシアの経由地飛行許可の再申請など、やっぱり問題が発生して、それでなくてもタイトな計画が破綻した訳である。
これで納入延期が決まらなかったら、それこそ「信頼性が無い機体のゴリ押し」でしかなく、日本のモノづくりの根幹が揺らぐ話だろう。
メガサプライヤーの話は事実だが、相手国との関係で容易に調達が困難になるものであり、パソコンと同じ話で言うなら、中国がアメリカと関係悪化すればアメリカが独占している高性能CPUの調達が出来なくなる。
また、メガサプライヤーに互する技術が無く、価格だけで負けている状況でなければ、相手もそんなに値引きする必要が無く、高く買わされる事になる。
国家安全保障上、価格交渉上、国内に最低ラインの基礎技術を持たないというのは、あり得ない選択なのだ。
造船でのクルーズ船の巨額損失についても、まず受注したのが超円高・中国好景気の時代で、クルーズ船は内装の大半を高級内装を手掛けるフランスやイタリアの会社から輸入する必要がある。
実は、クルーズ船で一番金のかかる部分は、船体より高級な内装であり、円が80円から110円まで安くなった時点で、当初の受注額では利益なんて吹き飛んだも同然だった。
しかも、「初めての試み」と言う物は、リスクがあって当然で、それは織り込まれていたのだが、中国好景気で造船業は世界的に活況が続いていたので、赤字が出てもそちらで吸収できる見込みだった。
…んが、オリンピックの後、中国のバブルが崩壊し、リーマンショックでとどめを刺されて造船バブルも終了。
更には、納品期限の違約金狙いと思われる造船現場での連続放火もあり、赤字が膨らんだ。
三菱側に瑕疵が全くないとは言わないが、同情できる余地は十分にある流れだろう。
あと、防衛産業の集約化に関して言うなら、日本には全く適用できない。
何故なら、日本の防衛産業が、軍需を主要商品としていないからこそ、日本は安価に高性能な兵器を調達できている、と言う日本政府の民間企業への甘えとも言える現実があるからだ。
ぶっちゃけ言って、記事でも指摘されているが、日本の防衛産業は「儲からない」。
だから、集約して専業になってしまうと、倒産するリスクが爆上げしてしまい、倒産させないために不要不急の発注が行われ、防衛費が肥大する。
これは、アメリカの軍産複合体が抱える問題であり、アメリカを手本にするなら、当然同じ病気にかかるのである。
アメリカでは、年間60兆円もの軍事費が消費され、その何割かが軍産複合体を維持する為に使われている。
アメリカは、自由民主主義な国だけど、平和主義とは程遠い、超軍事国家でもある。
日本がアメリカの真似をして軍産複合体を抱えるなら、最低でも防衛費は今の3倍、15兆円は無いと足りないんだが、その財源はどうするつもりなんだろう。