gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

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F35では航空優勢は確保できない アメリカをはるかに凌ぐ中国の空軍力開発ペース(木村正人) - 個人 - Yahoo!ニュース

イギリスの有力シンクタンク国際戦略研究所(IISS)は14 日、世界の軍事情勢を分析した報告書「ミリタリー・バランス2017」を発表しました。ジョン・チップマン所長は「これまで当然とみなされてきた欧米の軍事技術の優位性はさらに試練にさらされる。特に空において中国は欧米と対等に近いレベルに近づいているようだ」と中国の軍事的な脅威を強調しました。
(中略)
日本の自衛隊アメリカの多用途性ステルス戦闘機F35が「中国、ロシアに対する航空優勢を確保するゲームチェンジャー」として調達を進めています。F35の実戦配備を進めるのに、どうして中国の空軍力が欧米と対等に近づいているのか、IISSの空軍専門家ダグラス・バリー氏にいくつか質問してみました。
――日本はF35を調達して対中国の航空優勢を確保しようとしているのに、どうして中国の空軍力が欧米と対等に近づいていると分析したのですか
「中国は過去20年に莫大な投資を行い、J20、空対空ミサイルPL10などの開発を進めています。中国の開発ペースは非常に短期間に進められ、アメリカのそれをはるかに上回っているからです」
「F35は非常に優れた性能を持つ戦闘機ですが、中国が短期間に開発を進めるすべての能力を総合すると、特に空対空ミサイルの射程の長さからF35を取り巻く作戦環境は難しくなります。空中給油機が作戦目標に近づけなくなり、F35の行動範囲も制約されます」
(中略)
17年度予算で値下げしてもらっても1機当たり147億円もするF35を28機そろえようが、42機そろえようが、100機以上そろえようが中国に対する航空優勢を確保するのは難しくなっています。
(後略)

http://bylines.news.yahoo.co.jp/kimuramasato/20170214-00067710/

なんだ、最後のは軍事知識の無いジャーナリストの「感想」じゃないか。
航空優勢と一口に言っても、「防空」なのか「敵国内での優勢確保」なのかで、必要な戦力がまるで違う。
日本の防空における航空優勢なら、空中給油機が中国の長射程AAM捉えられるなんて事はほぼ想定する必要が無いからだ。
つか、短距離AAMであるPL10は、中国共産党が性能に満足できなくて、主力である中距離AAMであるPL11の開発が終わっていて、更に最新のPL12まで開発が進んでいる。
まず、AAMの名前としてPL10が挙がって来る事に、違和感がある。
情報が古くない?
更にこれらは、「中国独自」と言いつつも、全てロシアに「原型」がある摸倣兵器で、アメリカの開発スピードを上回っていると言っても、アメリカの後追いであるロシアの後追い、それも現物を目の前に置いてのリバースエンジニアリングという立場を、最大限に利用した結果でもある。
事実、完全に中国独自の機体であるJ20の開発スピードは決して早く無い。
初飛行から6年が経過した現在も、配備開始されておらず、当初は2015年に配備開始予定だったのが、既に3年遅れの18年からの配備開始予定である。*1
そもそも、現時点でステルス戦闘機を唯一実用レベルで運用し、10年が経過したアメリカと、絶賛開発中で現物が無いロシアと中国で、対ステルス機戦術の成熟度が同じ筈が無い。
もちろん、時間と共に優位性は失われるだろうけれど、現時点のF35を、中露の戦闘機が同数で勝てる要素は、無いに等しい。
これは、次世代戦闘機と目されるT50やJ20を含めても、である。
正直、日本のF35Aが42機ってのは少々心許無い数字であるが、将来的に揃うだろう142機なら防空に限れば、中国が空母4隻(艦載機約300機)を全部こっちに振り向けたとしても、十分に勝ち目がある戦力になる。
まあ、朝鮮半島が完全に中国に支配されて、半島南端の空港が空軍基地化されると、陸上機が九州・中国地方辺りまでは飛べるようになるので、そうなると防空に限定しても、航空優勢を維持するのは、日本単独では無理になりそうだけど。
とりあえず、別に政府や自衛隊が何も考えていないなんて事は決して無いし、素人が思いつくようなリスクは、大体塞いであるものだ。
多分に政治的な要素の強い配備だったオスプレイはともかく、主力戦闘機の選定でF35の調達は、あの時点で最善であった。
それでも、日本が中国の侵略に対して全く無力な状況だと言うなら、それこそ政治の問題では無く、危機を見過ごしにした日本人、国民が悪いと言う話でしかないと思う。
…それとも、この記者は、おバカな中国人の様に、自衛隊が中国をはるばる遠征して侵略に行く状況でも夢想しているのかな?
それなら、F35が100機程度では、話にならないと言うのは判るが。
そんな状況は、侵略戦争の出来ない日本が相手では無く、米中戦争という別な戦争でのみ発生しているだろうから、日本の142機に加えて、アメリカのF35が2443機も居るので、中国本土の制空権なんて、紙屑より脆い状態になっていると思うよ。

*1:F22は初飛行から配備開始まで5年。日本のF2も開発遅延が叫ばれても5年、ロシアのPAKFAは7年を予定、国際共同開発で炎上したEF2000が9年、同様に開発が炎上して遅延しまくったF35でも10年である。F35模倣のJ31は航空ショーに出るまで早かったけど、これまた既に初飛行から5年目で、未だ配備開始されていない。これは輸出先が無いせいでもあるが…