gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

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【炎上】人気漫画家うすた京介先生が炎上 / アシスタント残業代未払い騒動で飛び火「嫌なら就職しなさい」発言 | バズプラスニュース Buzz+

人気漫画「ドラゴン桜」の作者として有名な三田紀房先生(60歳)が元アシスタントに11年間も残業代を支払っておらず、「元アシが未払い分の残業代を請求している件」が炎上しているが、この件に関して新たな炎上が発生した。
・人気漫画家のうすた京介先生に飛び火
三田紀房先生から残業代を支払ってもらうべく、元アシスタントの漫画家カクイシシュンスケ先生が公式ブログで「三田紀房先生に残業代を請求したことについて」という記事を掲載した。すると、人気漫画家のうすた京介先生(43歳)が自身の公式Twitterで以下のように書き込みし、炎上しているのである。カクイシシュンスケ先生の返答も併せて紹介する。
うすた京介先生のコメント
「この人何か勘違いしているけど漫画業界は使う側使われる側に関係なく結局は実力社会なんですよ。プロアシとして通用する人は一握りだし、そういう人はちゃんと実力で高い給料を得て家庭を持ったりしてます。どの職場を選ぶかも自由。そもそも漫画家なんてまともな仕事じゃないんだから嫌なら就職しなさい」
(中略)
・「残業代未払い」は別問題
うすた京介先生は実力や根性といった部分に趣を置いて話しているようだが、世間では「漫画業界論」と「残業代未払い」は別問題との見方をしている人が大多数で、そもそもどんな仕事でも残業代は払わなきゃダメだろうという声が出ている。皆さんは、今回のうすた京介先生のコメントをどのようにとらえただろうか。
(後略)

http://buzz-plus.com/article/2018/01/08/usuta-kyosuke-ashi/

まあ、「「漫画業界論」と「残業代未払い」は別問題」という結論自体は動かないよね。
それはさておき、漫画業界に限らず、搾取構造はあるんだけど、契約書が無い上に、徒弟関係が発生する漫画業界は、その搾取構造は複雑だ。
師匠にあたる漫画家にしてみれば、有能なアシスタントに育て、プロデビューまで世話している場合、払った給料以上に手厚く対応していると思っているだろうし、実力が無いのに売れてる作者の下で働く有能なアシスタントだと、背景から主線まで引いてる(下手すると瞳まで…)のに、作品の利益の大部分は作者がもって行くと言う酷い扱いに憤るのも当然だろう。
こうした搾取構造で搾取された後に成功した漫画家は、自然と「積極的に搾取する側に回る」か「搾取構造打破…とまでは行かなくても自分の所のホワイト化に尽力」するかの2派に分かれる。
もちろん、後者に成功しているのは圧倒的に少数派なのだが、多少なりとも苦労を共にしたアシスタントに報いたい、と考える作者自体は、決して少なくは無い。
しかし、それが出来ない。
何故かと言えば、出版社が上の取り分を増やし、出版技術と流通能力の向上で、初版部数を絞り、ジャストインタイム生産に近い、在庫を最小限にする仕組みを作ったからである。
元々、連載ではカツカツで、創作に必要な自転車操業分の原稿料しか支払わない代わりに、コミックなどの書籍化による印税で補てんする構造だったのに、原稿料を減らし、書籍化印税までカツカツに絞ったのだから、当然、個人事業主である漫画家の収入状況は悪化している。*1
金が無いのに社員にボーナスが出せないのは当たり前なので、アシスタントに報いたくても原資が無いのだ。
では、漫画家に金があれば、アシスタントは報われるのか?
しかし、金に余裕があった昔から、「アシスタント搾取」が伝統化しているように、金があった昔だってアシスタントへの搾取構造は変わらなかった。
何故なら、アシスタントへ報いる、と言っても漫画家の胸三寸であり、定量化した基準が無かったからだ。
とはいえ、この時代にホワイト化を目指して(ある程度)成功した事例が少なからず存在する事を考えれば、「漫画家に金がある事」が「必要条件」なのは明らかである。
本来なら、とっくの昔に成功し、悠々自適の生活に入った大物漫画家が、自身の名誉と後続の未来の為にと、業界組織を作って、待遇改善へと尽力するのが普通なんだけど、日本の場合、出版社と編集者が同一組織で癒着した特殊構造の為に、漫画家同士の横のつながりが非常に希薄で、殆どアシスタント繋がりでもなければ、交流が無い。
ツイッターやSNSといったツールの普及で、互いにリスペクトし合った漫画家の交流は進んだが、若い世代に限られ、金と権力を持った大物漫画家程に、そうした繋がりは生まれなかった。
結果として、幾つかの業界組織は生まれたのだが、実質的に出版社寄りの、漫画家を守らない業界組織となってしまった。
だから、日本が戦後70年以上経っても、司法は中世レベルで、大金飛び交う芸能界や出版界程に「契約書が無いのが業界習慣」なんてアホみたいな状況が横行してきた訳で…。
つくづく、共産主義に汚染された日本の国鉄労組の醜い反社会活動のせいで、日本人全体が労働者の権利を積極的に主張する事自体を「ダサイ」「害悪」と感じるようになった事は、日本のあらゆる業界に悪い影響を残したと思う。
ああ、話が逸れた。

*1:更に、絵に求められるクオリティも右肩上がりで、デジタル化で省力化したが、設備コストは上がってるし、省力化してなお負担は増える一方なのに、原稿料は下がる