gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

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台湾をめぐる米中対立が激化、その行方は?:日経ビジネスオンライン

米中関係の駆け引きで、半島問題と通商問題がクローズアップされているが、もう一つ大きな駆け引きが動いている。台湾問題だ。特に米国議会が台湾旅行法を2月末に可決して以降、中国の台湾への圧力外交がすさまじい。台湾旅行法可決直後、中国が英字紙チャイナ・デイリーを使って「戦争の可能性」にまで言及して警告。企業には巨大市場にものをいわせて中国台湾の表記徹底を通達した。またバラマキ外交によって5月だけで台湾と断交させた国家は2カ国となった。
一方で、トランプ政権は安全保障担当の大統領補佐官に、親台湾派で反中最右翼のジョン・ボルトンを起用して以来、台湾支持の立場を徐々に鮮明にしてきた。
(中略)
蔡英文政権になって台湾と断交した国はこれで4カ国。台湾と国交を維持している国家は過去最少の18カ国となった。
(中略)
軍事的圧力も目に見える形で強まっている。4月以降、中国の爆撃機H-6が連日、宮古海峡から台湾南方のバシー海峡を通過し、台湾を周回する形で飛行した。4月18日には台湾周辺での実弾演習を行った。12日に南シナ海で行った中国史上最大規模の海上閲兵式(観艦式)とセットで、台湾に対する軍事威嚇と受け取られている。
(中略)
中国が南シナ海の人工島にミサイルや爆撃機を配備し着々と軍事拠点化を進めているのも、対台湾作戦を想定したものとみられている。
(中略)
こうした中国の攻勢に対して、蔡英文政権はほとんどなすすべがない状態ではあるが、米国が台湾擁護の姿勢を鮮明にしだした。
(中略)
二大大国の駆け引き交渉のまさにカードとなっている台湾自身の危機感も当然深まっており
(中略)
台湾が統一を望まない場合に中国が一方的に武力統一を仕掛けてくる可能性はいまだかつてなく高まっていると感じているようだ。
(中略)
トランプ政権、習近平政権ともに、トップの判断がそのまま方針や決断に反映されやすい部分があり、これまでの官僚・省庁中心で良くも悪くも縦割りで交渉されていた通商問題や個々の外交問題が、今は一つテーブルの上ですべてを交渉材料としてダイナミックに駆け引きされうる状況だ。
(中略)
気になるのは両国にとっての優先順位で、私は中国にとっての最優先事項はおそらく台湾問題であろうとみている。
(中略)
米国の最優先事項はどこになるのか。
(中略)
コロンビア大学の中国専門家と意見交換した際には、トランプが大統領になった真の目的は、個人的経済利益(ビジネスにプラスになるなど)である、という見立ても聞いた。とすれば、ある一定の大統領としてのメンツが立てられれば、対中融和的姿勢に転じて、中国市場におけるビジネス利権を追求するといったことも考えられる。
(中略)
台湾と同様、米中関係の間で自国の安全が揺れる日本としては、自分たちの望ましくない展開もありうることを頭の隅にいれておくべきだろう。
(後略)

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/218009/052900154/

中国にとって「台湾」が「半島」より重要な「国家の核心的利益」と言う点については完全に同意。
これは、ある種の悲願に近いものなので、台湾が平和裏に合併できなければ、武力行使も辞さない、と言う点も間違いなく、また台湾を完全に手中に入れれば、日本のエネルギー輸入85%を担う重要なシーレーンを破断させる事ができ、ついでにシーレーンを共有するフィリピンと韓国も、日干しに出来る点で、アメリカの極東におけるプレゼンスを大幅に低下できる点からも、中国はアメリカを敵に回しても取りたい戦略要地でもある。
ぶっちゃけ、中国が最終的にアメリカを敵に回しても大丈夫なように、海軍の大幅増強を進めている事は、少し頭があれば馬鹿にも判る露骨な行動である。
実際、アメリカのシンクタンクでも、2020年代半ばには、中国の地域大国としての戦力は、アメリカの極東に派遣可能な戦力を越えて、米中の戦力関係が逆転する*1、と警告している。
そうなれば、中国は台湾合併に武力行使する事を躊躇わないだろう。
あ、でも南沙諸島の人工要塞島に関しては、むしろ台湾を取った後に効いてくる布石なので、台湾侵攻の際には使われないと思う。
閑話休題(それはさておき)
大統領としてのパフォーマンスなのか、本音なのかはさておき、トランプの政策は条理より情理を優先し、アメリカの感情論に近い部分を代弁し続けている。
個人的に、トランプがしばしば言及する「アメリカの富が外国に搾取されている」という、一種の幻想について、日本を含む中国や東南アジア、中東などの黄色人種国家に対する、プワーホワイトの根強い不信感と人種差別に基づく劣等感が根底にある、と考えている。
今のところ、日本国は世界で唯一トランプを全面的に支持する「味方」だから手加減されているが、もし中国のお行儀がもっと良く、知財軽視や露骨な為替介入に国家資本主義といったアメリカ経済にネガティブな直接要因を持たなければ、トランプは単純に「対米貿易黒字」を敵視し、日本も中国と同レベルの「敵」として糾弾されていた事は、言うまでもない。*2
その意味で、今、日米が「たまたま」同じ方向を向き、協力できているだけで、一つボタンを掛け違えるだけで、アメリカは日本にとって「望ましくない行動」を取り始める可能性は、決して低くない。
むしろ、そうなっていない事が、日本の外交が成功している証明ですらある。
世界で最も早く「ほぼ全面的なトランプ支持」を徹底しつつ、「インドとの親和関係とTPP維持による東南アジア諸国との連携」と「ロシアとの対話路線」も捨てなかった安倍総理がそれを理解して居ないとは思わないので、この点については、アホな国民がマスコミと野党に「また」騙されて安倍首相を退陣させない限り、問題ないと思っている。
問題は、北朝鮮に対する「対処」が終わった後であり、その頃には安倍首相の長期政権も流石に限界になっているだろう点。
後継者が居れば良いけど、現時点で安倍総理の代わりになりそうな人材は居ない。*3
麻生にしても、口が災いし過ぎてて、短命に終わりかねないリスクが高いし、今の国際状況で平然と安倍の背中を撃つような「自分の利益が最優先」という政治屋・石破が次の総理になったら、間違いなく日本は道を誤る。
特に、経済政策では官僚の操り人形で、緊縮思考な上に、経団連の犬で移民推進派なのが致命的かと。

*1:総戦力、と言う点ではアメリカが勝っていても、アメリカは遠く離れた極東に全戦力を派遣する訳には行かず、対する中国は印露を黙らせられれば、短期的に全力に近い戦力を投射できるので、局所的優勢が成立し得る。逆に言えば、印露関係が危うい限り、中国が日本海・太平洋側に投射できるのは海軍力全てと陸空軍力の3割程度なので、アメリカ優位は変わらない。…その意味で、民主党政権時代、日米関係が冷却化してて、中国が印露との関係改善して後顧の憂いを無くしつつ、尖閣に圧力を掛けていたのは、実はかなりヤバかったのである…。あの頃はまだ、中国の海軍力、具体的には強襲揚陸艦と空母が足りておらず、時期が悪くて中国が自制したが。

*2:事実、経済問題に関しては、日本も追加関税を掛けられているし…

*3:居たら即行退陣させられかねない程に、マスコミに寄るネガティブキャンペーンも酷いが…