gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

はてなダイアリーが更新できなくなったので、泣く泣くこちらに移行。使いづらいようなら、別なサービスへの引っ越しも検討する予定。元ダイアリー:http://d.hatena.ne.jp/gayuu_fujina/

ニコンと日立ハイテクが恐れる「インテルの選択」 インテルがファブレスになる道を選ぶと何が起きるのか | JBpress(Japan Business Press)

ニコンと日立ハイテクが恐れる「インテルの選択」 インテルがファブレスになる道を選ぶと何が起きるのか | JBpress(Japan Business Press)

世界半導体売上高1位であり、プロセッサメーカーのチャンピオンである米インテルは2016年、10nmプロセス(以下、プロセスは省略)の立ち上げに失敗した。その後、インテルは何度も「今度こそ10nmが立ち上がる」という発表を繰り返してきたが、現在に至るまで、それは実現していない。そのため、2015年以降、14nmを延命し続けている。
これに対して、半導体製造を専門とする台湾のファンドリーのTSMCは、2018年に7nmを立ち上げ、2019年には最先端露光装置EUV(Extreme Ultraviolet)を使った7nm+による量産を開始した。今年2020年には、5nmが立ち上がっており、来年2021年には3nmによる量産を始める。
(中略)
いずれにしても、EUVを適用した7nmや5nmを立ち上げているTSMCサムスン電子に比べると、14nmで微細化が止まってしまっているインテルは、最先端の微細化競争から脱落しつつあると言わざるを得ない。
(中略)
インテルが設計から量産までを一貫して行う垂直統合型(Integrated Device ManufacturerIDM)の半導体メーカーから、設計だけに特化するファブレスに移行する可能性が浮上したことになる。
(中略)
もう1つのプロセッサメーカーのAMDは、2008年に製造部門をGLOBALFOUNDRIESとして切り出し、既にファブレスになっている。そして、2018年以降、7nmを立ち上げたTSMCに生産委託して以降、プロセッサのシェアが急拡大している。
(中略)
では、インテルが、最先端プロセッサの製造をTSMCに生産委託したら、どのようなことが起きるだろうか? 
(中略)
TSMCにはあまり縁がないが、インテルに全面的に採用されていた製造装置メーカーにとっては、死活問題となる。
(中略)
では、そのように窮地に立たされる製造装置メーカーはあるのか?
(中略)
インテルの有名な哲学に、「コピーイグザクトリ(Copy Exactly)」がある。インテルは、アイルランドイスラエル、米国と3カ国に半導体工場を有しているが、すべての工場に同じ製造装置を導入し、同じプロセスに統一し、製造装置のメンテナンスから、工場の配管一本の仕様にいたるまで、徹底的に同じ状態にしようとしている。
(中略)
インテルのコピーイグザクトリは、「一旦決めた製造装置を変えない」というところにも適用されている。
(中略)
インテルファブレスになった場合、インテルでしか使われていない製造装置メーカーは、一転して窮地に立たされることになる。
(中略)
露光装置の企業別シェアを示す。1990年代中旬に、約50%のシェアを獲得し、「装置メーカーの帝王」とまで言われたニコンは、2000年台に入るとオランダのASMLに抜き去られ、2019年のシェアはわずか7%になってしまった。
(中略)
ニコンの7%のシェアのほとんどは、インテルに依存していると考えられる。
(中略)
恐らくTSMCでは、ほぼすべての露光装置がASMLであり、ニコン製は皆無であろう。
(中略)
したがって、インテルファブレスになる道を選んだ場合、ニコンの息の根が完全に止まってしまうだろう。
(中略)
ドライエッチング装置の企業別シェアを示す。2000年頃は、ラムリサーチ、アプライドマテリアルズ(AMAT)、東京エレクトロン(TEL)の3社がトップ争いをしていたが、2005年頃からラムリサーチがトップに立ち、シェア1位の座を不動のものにしている。
(中略)
日立ハイテクのシェア5.6%のほとんどは、インテル向けの導電膜ドライエッチング装置であると思われる。
(中略)
日立ハイテクマイクロ波プラズマを使ったドライエッチング装置を使い続けているのも、インテルだけである。
したがって、もし、インテルファブレスの道を選び、最先端プロセッサの製造をTSMCに生産委託した場合、ニコンの露光装置と日立ハイテクのドライエッチング装置のビジネスは、ほぼ消滅することになるだろう。
(後略)

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/61916

市場が狭く、寡占的な業界にべったりと依存している世界では、あるあるなお話である。
アメリカの軍産複合体*1とか、かつてのiPhoneの部材供給とか、膨大かつ独占的な環境と取引する場合、大口であるがゆえにサプライヤーがソレに依存してしまうのだ。
安定的に仕事をくれる内は、むしろ業績の安定化につながるし、依存相手の業績UPに連動して取引も増えるしで、理想的だが、逆に言えば、依存相手の業績が落ちれば、連動して取引が減り、今回のように方針が変わって仕事を切られれば、一気に存亡の縁に立たされる。
ニコンは、未だに新しい商売の柱を見いだせないまま、カメラのシェアをスマホに食われ続けてので、かなりヤバそう。
日立ハイテク関連は、元々日立は最近集約・統合を進めてる最中なので、どの程度、ドライエッチング装置の売り上げがあるのかは知らんけど、ダメージも大きそうではある。

*1:ボーイングの戦闘機部門とか…。ボーイング軍産複合体には珍しく、民間旅客機部門という別の収益の柱があったから、戦闘機部門が不調でもなんとかなってたけど、ボーイング747の生産終了とか、旅客需要を見誤って成長する中型機競争に負けてるとか、そっちの本業にも陰りがあるなか、F15の生産終了が見えてきた事で、民需・軍需共にやばたにえん。