gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

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生産中止?「ジャンボ機」が世界から消える日 | エアライン・航空機 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

「正直に言うと、エミレーツ航空との取引が実現できなければ、A380の生産を終了せざるをえない」
欧州航空機大手のエアバスは、2階建てで500人以上を収容できる超大型機「A380」の生産をやめる可能性を明らかにした。冒頭の言葉は、1月15日にネット上で中継された2017年の業績発表会見で、同社のジョン・リーヒーCOO(最高執行責任者)が語ったものだ。
(中略)
近年多くの航空会社が”大型機離れ”を加速させている。代わりに導入を進めるのは、ボーイングの「787」やエアバスの「A350」といった中型機だ。A380や、かつて「ジャンボ機」の愛称で親しまれたボーイングの「747-400」は両翼に4発のエンジンを備える。一方の中型機は2発しかないが、燃費がよく航続距離も伸び、使い勝手が格段に高まった。
(中略)
これまでの国際線は大型機で大都市のハブ空港まで飛び、そこから地方都市への便に乗り継ぐ「ハブ・アンド・スポーク」モデルが主流だった。A380が開発されたのは、発着枠の空きが少ないハブ空港同士を結ぶ路線でより多くの客をまとめて輸送するためだった。
(中略)
だが中型機の登場で地方都市であっても直行便を飛ばせるようになり、「ポイント・トゥ・ポイント」の路線展開が増えてきた。
(中略)
航空会社の戦略の変化に影響を受けているのは、ボーイングも同じだ。
(中略)
747-8の旅客機には現在受注残がない。
(中略)
いちばん恐れるのは、座席が埋まらないことだ。よほどの自信がないかぎり、超大型機の運航は難しい。LCC(格安航空会社)の台頭で、業界全体がコストに敏感になる中では大型機の復活は難しいといえる。

http://toyokeizai.net/articles/-/205018

船舶と違って、航空機は大型化すれば物流コストが比例的に下がるって簡単な話じゃないから…。
特に、ジャンボジェット滑走路も大型滑走路が必要なので、どうしても着陸できる空港に制限があるなど、運用面の制約もあるし、席数が多いが故に、空席リスクも高い。
対して中型機は地方空港のショボい滑走路で離着陸できるから、「ポイント・トゥ・ポイント」と記事で称された運用が可能だし、席数もそこそこだから、空席リスクも抑えられる。
何より、価格面でも、重量当たりの燃費でも、中型機の方が優れているのだから、原油高に苦しんだ記憶も新しい航空会社にとって、ジャンボジェットを中型機に置き換える、と言うは妥当な判断だろう。
ぶっちゃけ、これで困るのは、軍用の超大型機の開発、製造である。
エアバスボーイングも、元々は軍需企業であり、大型輸送機や爆撃機を開発、製造している。
例えばボーイングは売上の3割、エアバスは2割が軍需である。*1
これでも、民需としての旅客機を製造しているから、この程度*2だけれど、軍事用に転用できたジャンボジェットの民需が無くなれば、ジャンボジェットに相当する大型機は軍需専用になる。
つまり、日本のライセンス生産された兵器の様に、量産効果が得られないので、設計製造コストがガツンと上がってしまうのだ。
まあ、対空装備が進化した現代戦で、昔の様な超巨大爆撃機が大量に必要になる可能性は低いが、輸送機という分野では、それなりに需要がある。
あと、影響を受けるのが、宇宙産業。
空中発射型のロケットを大型化する為には、やはりジャンボジェットのような巨人機が必要であり、アメリカの宇宙ベンチャーが開発した双胴の巨人機「ストラトローンチ」なんかは、安価かつ短期間に製造できたのも、ベース機として中古のジャンボジェットをニコイチしたからであって、この事業を拡大するなら、将来的に亘って安価に中古のジャンボジェットが調達できなければ、コスト面で負けるしかないだろう。
航空宇宙産業、とまとめて呼ばれるように、航空機と宇宙開発はかなり近しい部分を持って居るので、エアバスがジャンボ開発を止めるなら、欧州でロケット関連の技術開発も停滞するかもしれんなぁ…。

*1:両社は基本的に空軍しか相手にしていないが、日本最大の軍需企業で、陸海空宙の3軍+1に装備を供給する三菱重工は10%に過ぎない

*2:ロッキードマーチンなんかは軍需8割