gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

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技術開発進む潜水艦の世界 カギを握るのは希少資源リチウムだ:朝日新聞GLOBE+

世界最大の軍事国家アメリカは、その最大の基幹産業である軍需メーカーを総動員し、ありとあらゆる兵器を造り出している。そのアメリカが現時点で製造することができない数少ない兵器の一つが、通常動力潜水艦である。その通常動力潜水艦で日本の技術陣が生み出した潜水艦が、世界中の注目を集めている。他方、この潜水艦を動かすための資源であるリチウムをめぐり、争奪戦が激しくなっている。
(中略)
限られた産地、競争リードする中国
このように期待されているリチウムイオン電池潜水艦ではあるが、このタイプの潜水艦を建造するためには高性能かつ、安全性の高いリチウムイオン電池そのものを作り出すことが大前提となる。
ところが、電気自動車や電子通信機器などリチウムの需要が急増しているのに対し、リチウムの産出量と産出国は極めて限られている。2017年には、チリはオーストラリアに次いで産出量が多く、アルゼンチンがそれらに続く。
この希少資源を巡ってアメリカや日本、ヨーロッパの企業などが開発・取得競争を始めているが、一歩リードしているのは中国だ。中国のリチウム開発会社「Tianqi Lithium」が世界最大級のチリのリチウム生産大手「SQM」の株式およそ24%を取得したことが12月に確認された。中国はそれ以外にも、希少資源リチウムの独占的支配に向け、積極的な動きを見せている。
(後略)

https://globe.asahi.com/article/12035540

別にこの動きはここ数年と言う短期的な物ではなく、00年代初頭には中国が世界中の資源を手当たり次第に食指を伸ばし、量的な確保に加えて、希少資源に関しては、独占を目論んでいる。
レアアースも戦略資源として、安価な価格を前面に押し出し、一時期は世界シェアの9割を握っていた事は記憶に新しいだろう。
当然、稀少元素であるリチウムを使ったリチウムイオンバッテリーの需要増はもちろん、とっくの昔に予想されていたもので、同時に「希少資源であるが故に、その採掘量がボトルネックになる」と早い段階から予想されていた。
ぶっちゃけ、日本がテスラの様にリチウムイオンバッテリー式のピュアEVではなく、水素燃料電池を併用したハイブリットEVに重点的な投資と開発を行っていたのは、将来的にリチウムの需要増による高騰が明らかである一方、水素は普遍的に存在して枯渇の心配が無い点を考慮していたのは、少しでも日本のエネルギー事情と資源輸入国という弱点を理解して居れば、いざとなれば世界の半分を敵に回した戦争まで外交手段として使えるアメリカの企業のように、楽天的に利益最優先できない日本政府と企業の苦肉の策だと判る筈だ。
それ以外にも、非リチウム式の大容量バッテリー開発も並行して進めており、今のところ固体電池が有力視されている。
尤も、コストや効率の面でまだ研究途上であり、同時に進められているリチウムイオンバッテリーの改良によって更なる効率化を求められるなど、リチウムイオンバッテリーもまだまだ競争力が十分にある。
しかし、リチウムイオンバッテリーの原型が生まれたのは1983年、プロトタイプ開発が86年、商品化されたのは1991年と、研究室から商品化までの道のりは長く、最低でもあと10年ほどはリチウムイオンバッテリーの優位性があるだろう。
逆に言うなら、10年後にはポストリチウムイオンバッテリーと言うべき固体電池か、水素燃料電池が実用化される可能性も十分ある訳で、10年分のリチウム備蓄があれば、仮に中国に全リチウムを押さえられたとしても、何とかなるし、そもそも、そんなのは無理。
日本がかつて、中国の不当なレアアース禁輸を受けても、素早く代替技術でフォローして、レアアース需要を削減してしまったように、中国がリチウムの独占を狙った所で、世界は「次の手」を常に模索しているのだ。
結論から言えば、日本にとって「リチウムバッテリー搭載潜水艦」は「水素燃料電池搭載潜水艦」の「つなぎ」でしかなく、今の所、この分野でも日本がトップランナーである、というお話。
もちろん、今の研究費を絞りに絞っている状況は問題だし、スパイ防止法も無い為、日本で生まれたリチウムバッテリーのシェアが、韓国と中国に猛追され、首位陥落も間近になっているように、新型固体電池や水素燃料電池が、隣国に盗まれるのは、時間の問題でしかない訳だが。