gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

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「象牙の最大の輸出先は日本」というフェイクニュース - Togetter

「象牙の最大の輸出先は日本」というフェイクニュース - Togetter
確かに、これはフェイクニュースだと思う。
象牙は「日本に」輸出されているのではなく、「日本が」輸出しているからだ。
日本ではハンコ文化のお蔭で、「最高級の判子は象牙」という常識から、長い間、象牙の最大消費国だった事は間違いないのだけれど、長い長い不況のお蔭で、40代以下の世代だと、プラスチックの三文判とかシャチハタしか買わなくなった。*1
そして、89年には高度経済成長末期に締結されたワシントン条約によって、新規輸入の道が閉ざされているのだが、それまでに約6000トン以上*2と言われる象牙が国内に輸入された。
もちろん、その後も細々とした密輸はあっただろうし、美術品(彫刻)の素材としての需要もあったし、過去の輸入象牙に関しても、管理はガバカバと言う指摘も間違いではないのだが、中国産毒ウナギ以降、日本でウナギ消費量が激減し、最盛期の1/3以下に落ち込んで回復する事が無かったように、象牙に関しても、「小金持ちになった一般国民の市場」がゴッソリ消えてしまった結果、象牙市場は1/10まで激減し、これからも回復する見込みが無い。
一方で、日本と同じ「宝飾品としての象牙」文化を持つ中国で、象牙の消費量は激増しており、この20年でとっくに日本を越えた世界最大の象牙消費国になっていた訳だが、2017年末を以て象牙の合法取引が禁止される。
今なお、旺盛な経済成長を続けている中国で、世界最大まで膨れ上がった象牙マーケットが、政府の鶴の一声で無くなる訳も無く、上に政策あれば下に対策がある中国人は、サクっとブラックマーケットへと移行するのは、必然と言えた。
彼らは、世界で数少ない象牙の合法取引を続けている日本に目を付けており、むしろ「日本の死蔵された象牙」を中国に密輸するほか、日本の在庫管理がガバガバであることに目を付け、近年密輸された象牙ロンダリング等に活用している訳である。*3
だから、「象牙密輸の抜け穴になっている日本も規制しろ」という声も小さくない訳で、その辺りは改善して行くべきだとは思うが、中国人の様に「公式には無い事になっている事にして、平然と大規模取引を続ける」という、恥知らずな真似をするぐらいなら、クジラの様に世界の批判を浴びても、文化に基づく合法市場を残す事に意味はあると思う。
クジラの時にも「世界の批判を浴びてまで鯨を守る必要は無い」とか言い出す、自称良識人は大量に居たけれど、他国の偏見に基づく差別を理由に、文化を圧殺する方が、よっぽど野蛮だと思うので。
まあ、クジラや象牙に関しては、それで絶滅して入手不可能になるリスクがあるのだから、同時に、持続的な調達をする努力とかしろ、とは思うけれど。

*1:一部会社印や金持ちの実印など、需要は根強く残っているのだが…

*2:これはアフリカゾウ10万頭以上を殺さないと得られない量である…この罪深さは忘れるべきではないだろう

*3:日本から密輸された2.4トンの象牙の95%が中国向けだった、その逆に日本への密輸は40キロ程度らしい、その差は60倍…。情けない事に、この2.4トンの内、日本の税関で補足できたのは僅か6%。残りは中国当局による押収である