gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

はてなダイアリーが更新できなくなったので、泣く泣くこちらに移行。使いづらいようなら、別なサービスへの引っ越しも検討する予定。元ダイアリー:http://d.hatena.ne.jp/gayuu_fujina/

中国「米国債売却」で報復も 避けたい「日本の二の舞い」 - MSN産経ニュース

【上海=河崎真澄】超党派の米議員130人がオバマ政権に人民元の「為替操作」に関する書簡を送ったことに対し、中国が「米国債の売却」を切り札に、対米報復措置に動く懸念が広がっている。中国は1月末段階で8890億ドル(約80兆円)の米国債保有するなど世界最大の米財政スポンサー国で、政治的に発言力を高めているからだ。
14日の記者会見で温家宝首相は、米国の財政状況について「心配している」と述べ、財政赤字やドル安などによって米国債の安定性が損なわれることに懸念を表明した。輸出拡大に向けて人民元相場を維持したい中国として、米国が対中強硬手段に出ないよう牽制(けんせい)した発言と受け止められている。
このため関係者は、「為替操作国の認定などに米国が動けば中国は政治的対抗措置を取らざるを得ず、米国債の売却の有無が焦点になる」とみている。1997年に当時の橋本龍太郎首相が訪米時に「米国債売却の誘惑にかられたことがある」と発言、市場で米国債が下落(金利は上昇)した過去の“実績”もある。
温首相は会見で、「金融危機で中国が人民元相場の安定を保ったことが世界経済の回復を促進した」と相場固定を正当化し、政治的に元高圧力に屈しない姿勢を改めて強調した。
上海対外貿易学院の陳子雷副教授によると、中国当局は、日本が85年に欧米の圧力に屈して「プラザ合意」による円高を受け入れ、日本経済のその後の成長路線を狂わせた経緯を克明に分析しているという。このため「日本の二の舞いを避ける政策に全力を挙げる」(陳副教授)可能性が高い。
米議員130人の書簡について、中国政府は明確な対応を示していないが、人民元をめぐる米中摩擦は今後、米国債の扱いなどで政治問題に飛び火する危険性をはらんでいる。

http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/100316/fnc1003162307027-n1.htm

中国の人民元が、未だにドルベッグなんぞやっているのが、世界中が景気浮揚しない理由のひとつ*1でもあるので「金融危機で中国が人民元相場の安定を保ったことが世界経済の回復を促進した」なんて発言は、主客が転倒しているのだけれど。
閑話休題
ここ10年くらい、アメリカは腫れ物に触るように接してきた中国に対しても、世界同時不況以降、厳しい要求も求めるようになった。
怖いもの知らずのオバマだからこそできる事、という見方も出来るが、むしろ「中国が国としての体裁を整えたので対等な外交関係が必要な国家」として認めたという意味合いの方が強いのではないかと思う。
一方で、日本に対しては、トヨタなどの企業を狙い撃ちにした「報復」はしても、政府に対しては冷淡とも言える対応に終始している。
ミンス党が与党になってから、日本の国際ニュースは鳩山のバラ撒きか、アメリカの普天間基地問題以外に無く、日本と言う国にとっては価値の無い、北朝鮮、韓国などと言う弱小国相手の話が増えている程度。
ぶっちゃけていえば、既に国際社会は日本政府に対して「傍観者」である事を決め込んでいるという訳で。
これは、「現状維持」を良しとする日本人には良いことに思えるかもしれないが、常に何かを奪い合う国際外交の世界で、省みる価値が無いというのは、発言力も無い事を意味する。
元々日本政府は外交無能で、世界に対する影響力の割に発言力は著しく少なかったが、それでも土下座外交とまでいわれても、日米関係は必至で維持して安全保障を保ってきた。
しかし、これからは米中関係は更に緊密化を進める一方で、日米関係は疎遠になっていく。
今の日本の戦力で、中国の侵略圧力に単独で抵抗って不可能なのになぁ…。
余談だが、中国のプラザ合意が日本経済のその後の成長路線を狂わせたというのは、割とまっとうな分析である。
実際、プラザ合意のあと円は一気に倍以上まで値上がりし、日本の購買力が跳ね上がって「円高還元セール」が全国的に広がり、一大消費ブーム、投機ブームでバブル経済を現出させたわけだし。
もし、もう少しゆっくりとしたペースで円高に移行していたなら、あそこまで壮絶なバブル経済にはならなかっただろうし、その後の反動とも言うべき失われた二十年も、違ったものになっていた可能性は、ある。(結局、政府が無能な事には変わらないので、経済対策は後手・斜め上という可能性も高く、あくまでも可能性でしか無いのだが)
ただ、中国と日本が大きく異なるのは、プラザ合意が得られた85年には、日本の貯蓄率が国民全体のレベルで高く、「一億総中流」なんて言葉が生まれるほどに、貧富の差が小さかった事が挙げられる。
今、中国がドルペッグを止めて、元高になれば、中国の富裕層は「大富豪」にランクアップされる一方で、貧乏人は「貧乏人」のまま、急激なインフレで苦しむ事になる。
この壮絶なまでの貧富の差が、国内に火種を生む事は、ほぼ確実だろう。
ただ、救われない事に、中国にはこの経済格差が是正される機会が無いのである。
つまり、今時間を稼いでも、元高になれば、バブルと経済格差の拡大が避けられない。
結局、今やっている中国の時間稼ぎは、文字通り、時間稼ぎ以外の何物にもならないというあたりに、中国の焦りはあるのかもしれない。
だからこそ「敵としての日本」が重要であり、国民の不満を逸らす為の生贄として、日本を仮想敵国とした軍拡に熱心という面もあるのだろう。
…中国政府の都合で、敵扱いと占領後の無慈悲な扱いを決定付けられている日本人こそ、可哀想としか言えないのだけれど。

*1:金は儲かりそうなところに流れる。実体の価値より安い上、通貨切り上げというボーナスが期待できる人民元は、世界中の投資家にとってリスクに見合った以上の魅力があるのだ