gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

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中国の金融外交:資金は潤沢だが性急:JBpress(日本ビジネスプレス)

(前略)
中国の銀行は2007年以降、ベネズエラに500億ドル融資した。ベネズエラ経済が深刻な不況に陥っているため、これらの債務を返済する同国の能力は極めて疑わしくなっている。ベネズエラの債券を売買している投資家は、中国の関与がなければ、デフォルト(債務不履行)は事実上避けられないと見るだろう。
すでにベネズエラにこれほど多額の融資を行った中国は、ベネズエラが崖から落ちてしまうのを防ぐために、マドゥロ氏にさらに多くの資金を提供するだろうか?
(中略)
中国は過去5年間、政治的理由であれ(ロシア)、経済的理由であれ(アルゼンチン)、西側の貸し手からほとんど相手にされない国々と取引することで、国際融資残高を劇的に増やしてきた。
(中略)
中国は2008年以降、カナダからパキスタンに至るまで30カ国近い国々と約5000億ドル規模の通貨スワップ協定も結んでいる。この通貨スワップ協定では、問題が起きかけた時に相手国に人民元へのアクセスを与えている。
その一方で、中国は、世界銀行IMFの支配に挑戦することを目的とした開発銀行を設立しようとしている。中国の行動は、部分的には、中国や他の発展途上国世界銀行IMFの運営についていまだにごくわずかな発言権しか持っていないことに対する不満から来ている。
新興国の議決権を増やすために2010年に結ばれた合意は、重要な決定については米国に拒否権を残すものだが、それでも米議会はこの不満足な取り決めでさえ、繰り返し批准せずにきている。中国が10年以内に米国を抜いて世界最大の経済大国になろうとしている中、グローバルな経済統治の時代錯誤的なあり方がより鮮明になりつつある。
(中略)
中国が提供するスワップは象徴的な意味では重要だが、流動性を必死に求める国にとっては「生命線というよりはむしろ藁のようなもの」だとコーネル大学エスワー・プラサド教授は言う。
(中略)
アルゼンチン、ベネズエラ、ロシアに対する中国の支援には危険も伴う。こうした支援には逆選択の要素がある。世界中でコモディティー(商品)を探し回る中で、中国は他国に敬遠される国々と取引しているからだ。貿易協定が金融支援に姿を変える時、それは中国が損失を被るリスクを高める。
より大きな懸念は、人民元に関する中国の野心が、世間から隔離された自国の銀行システムの準備が整う前に資本規制を弱めるよう中国に促してしまうことだ。
(中略)
中国が既存の秩序をひっくり返そうとしているというよりは、むしろ何とかして既存秩序に入り込もうとしていることを示唆している。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42834

ずいぶんと中国に好意的な記事だと言うべきだろう。
世界銀行IMFに対する中国の不満は、単に経済規模が大きくなっただけで、経済安定性が低く、また政治理由による一方的な禁輸や経済圧力の行使など、世界経済の安定とは真逆の不逞行為ばかり繰り返す中国は、先進国から市場として狙われてはいても、信頼できる経済的パートナーとしては全く思われていないからだし、事実上のドルペッグで自由為替とは程遠い人民元を国際通貨として市場が認めるなんてことはあり得ないのだから、中国の不満はすべて、身から出た錆に過ぎないのだ。
にも拘らず、身の丈に合わない権力を求める為に、利益度外視で先進国からは無視されるような国々に投資して発言権を得ようとしたり、世界銀行に対抗した中国のための開発銀行設立など、時代錯誤な努力を重ねているのは、滑稽ですらある。
中国の通貨スワップにしても、チェンマイ・イニシアティブのような相互扶助ではなく、明確に中国の国益を重視した経済侵略の一環でしかなく、日本が四半世紀にわたって中国に提供したような、相互扶助的な援助とは程遠い、独善的なものである。
そんなものに乗るのは、政治的理由より目先の金が大切な、泡沫のような経済規模の小国か、政治的立ち位置が近いロシアのような国だけなのは、参加国リストを見れば明白だし
冷静な視点で見れば、記事で語られている中国の経済施策はハイリスクローリターンであり、人民元自体が米ドルに連動する通貨でしかないのに、国際通貨になる意味も意義もない訳で、そんなレガシーな通貨な人民元建てのスワップなんてのは、記事中にあるように「生命線」ではなく「藁」でしかない。
これが冷戦期の50年近い冷たい平和が維持される時代だったならば、時間が味方してくれたかもしれないが、皮肉にも中国の台頭がこの先の平和な期間を短くしてしまっている。