gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

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ブロック塀の違法性見逃しか、補強設備もなし : 社会 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

女子児童が下敷きになって死亡したプールのブロック塀には、建築基準法施行令で定める「控壁ひかえかべ」と呼ばれる補強設備がなかった。
この塀は地震で倒壊する前、高さが同施行令の規定(2・2メートル以下)を超えて約3・5メートルあったこともわかっており、大阪府警などが現場の状況を調べている。
(中略)
同施行令はブロック塀の倒壊を防ぐために、高さが1・2メートルを超える場合は控壁の設置を義務付けているが、高槻市によると、今回の地震で倒壊した塀には控壁はなかったという。
建築基準法では、一定規模の公共施設について3年に1度の点検を義務付けており、寿栄小では2017年1月に実施されたが、塀の違法性は見逃されていた可能性がある。
(後略)

http://www.yomiuri.co.jp/national/20180619-OYT1T50064.html

実際に被害が出た後なので、ブロック塀に対する運用が誤っていた事は議論の余地は無い。
こうした危険なブロック塀が、これから対策されていく事に、否やは無い。
が…この問題は「単純に違法建築がやらかした」案件という見方は、正しくもない。
まず、3.5mという数字が、1.9mコンクリート土台を含んでいて、ブロック塀自体は、1.6mと「既定の2.2m以下」だった点。
これに関しては、法の解釈にも関わるのだが、解釈によっては「OK」なのだ。
もちろん、コンクリート土台は事実上、道路とプールとの間を隔て、覗き行為を阻害する物理的な障壁として機能していた訳で、記事の通り、道路面からの高さで言えば3.5mの壁という解釈も出来る訳だが、同時にプールサイドから見れば、1.6mのブロック塀なのだ。
解釈の問題なんて、都合が良いように使われる話で、立場によって幾らでも都合よく使われるなんてのは、言うまでもない。
本件に関して言うなら、現場写真を見れば判るとおり、「塀」という言葉から想像される「薄い仕切り構造」は、高さ1.6mのブロック塀部分だけだし、地震で折れて倒れたのも、その部分だけなので、道路面からの高さで報道される3.5mという数字が、独り歩きしている感がある。
また、2.2mの規定は1978年の改正で、このブロック塀は最低でも10年以上前に建てられており、開校時点から存在していた場合、1974年。
設置当時は合法だった可能性がある点。
つまり、設置当時は合法で、後に法改正で「違法状態」になった可能性がある。
こうした建物は、「違法建築」ではなく「既存不適格建築物」と呼称され、区別されている。
定期点検があったとの事だが、「点検」記録によると、「−」と記載。
これは、「点検対象となる壁が無い」という意味だそうで、そもそも点検されていないのだから、「違法状態はそのまま放置された」訳である。。
仮に点検で「違法状態」が発覚していたとしても、建築時点で合法だった建物に、法が過去遡及して適用される訳もないから、予算の都合で放置された可能性は高いだろう。
さて、保守的な老人有権者に支えられた与野党の緊縮派による妨害で頓挫している「公共事業による国土強靭化」というアベノミクスの三本の矢の一つがあった
もし、建築債をじゃんじゃん刷って、公共施設の再整備が進められていれば、こうした公共の「既存不適格建築物」も改修されていた可能性があった。*1
「単なる違法建築」だと、関係者の脱法行為だけが責められる話だが、これが「既存不適格建築物」だとすると、将来に対する投資を嫌い、公共施設の再整備に必要な金をケチった老人たちのシルバー民主主義が、悲劇の根本要、と言う「解釈」もある。
はてさて、こういう「不都合な現実」を、本件に憤る老人たちは、受け止めて反省する事が出来るのだろうか。

*1:アベニクシーの脳内意見だと、強靭化で強化されるのは軍事に転用できる分野だけ、らしいが内閣官房の国土強靭化資料には、災害対策を明確に謳っているし、「公共施設に係わる被害の最小化」が明言されている