gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

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アジアインフラ投資銀行(AIIB)の「ナマズ効果」 アジア開発銀行と世界銀行にも刺激 : 大艦巨砲主義!

2015年5月26日、アジアインフラ投資銀行(AIIB)が「ナマズ効果」(イワシの群れにナマズを入れるとイワシが緊張して鮮度が保たれるという話から、あるグループに異質な要素が加わって活力が高まる現象を指す)をもたらしている。国際経済秩序の今後の変革は「競争によって協力を求める」という原則に従ったものとなるだろう。また、多角的な組織同士の競争は大国間の競争を緩和し、地縁政治の競争の色合いを薄めるものともなる。新京報が伝えた。(文・孫興傑[スン・シンジエ]吉林大学公共外交学院博士)
AIIBは少なくとも2つの面で日本を刺激した。まずアジア開発銀行(ADB)の増資と議決権改革を促した。アジアの経済情勢はADB設立当時とは様変わりしており、日本と米国が議決権を握る状態はADBの「アジア」性を損なっている。次に中国がAIIBにこれほど多くの国を呼びこむことができた一方、これに距離を取る日本は自ら孤立することとなった。
ADBと日本のアジア経済の中での地位を再構築するため、安倍首相は対抗的な色彩の強い1100億ドルの融資を決定した。安部首相はさらに講演などで中国とAIIBへの中傷を重ね、「安物買いの銭失い」をしないようにと聴衆を説得し、「質の高い」インフラ施設をアジアに普及することを約束している。
相手の足を引っ張ろうとするあからさまな試みは日本の大国としてのイメージを損なっている。シンガポールの学者の馬凱碩氏は「日本の策略は少しも変わっていない」というが、それもうなずける。安倍首相は中国を意識しているのだろうが、自らの奉仕の対象がアジア諸国であることを忘れているようだ。カンボジア商務相は、AIIBの資金を使った国に世界銀行とADBが懲罰的措置を取らないことを求めた。
AIIBの融資を受けた国は世界銀行やADBに融資を申し込めないといった排他的な措置を取るならば、ADBや世界銀行は自らを窮地に追いやることとなる。3つの機構は良好な競争の状況を保つ必要がある。(提供/人民網日本語版・翻訳/MA・編集/武藤)

http://www.recordchina.co.jp/a110037.html

ADBの中印尼重視で固定化した状態に揺らぎを入れた、と言う点で、AIIBに価値はあったけれど、本来なら日本がADBに増資した1100億ドルをAIIBに取り込みたかった中国としては、むしろ悔しくてたまらんという話だろう。
また、日米という世界経済の3割近くを握った経済大国2国が不参加で、組織の透明性も信頼性が低く、ADBより不利な資金調達となっているAIIBは、当初の目的であった、中国単独開発に比して2倍の資金を使える「うまみ」はあるが、相応の金利を付けないと債券が売れない上に、被災したネパールへの支援のように、立場上、融資しなければ存在意義を疑われる事例には金を出さざるを得ないという、中国単独での開発では必要の無かった「しがらみ」も生まれている。
更に言えば、「日本は自ら孤立することとなった」と言うが、「何から」孤立したというのか。
日米が率いるADBから離脱国が出た訳でもなく、政治的にも国際的にも「孤立」とは縁遠く、経済的には日米合わせて世界GDPの28%以上を握っている訳で、これを「孤立」と言い張るのは無理があるだろうし、むしろ日米関係の深化を象徴する出来事となって、今回の件で孤立したのはアメリカを裏切って評価を落とした韓国と、兄弟国の筈の中国に加盟を断られた北朝鮮ぐらい。
「AIIBの融資を受けた国は世界銀行やADBに融資を申し込めないといった排他的な措置」と言うが、ADBに対して最も借金している国が、金貸しを始めるという異常事態を考えれば、「政治的な排他という話ではなく、貸す金があるなら、借金返せ」という当たり前の理由で、AIIB主要構成国である中国とインドとインドネシア*1に対して融資枠を減らし、中小国への支援を手厚くするのは、十分国際的理解が得られる話だろう。
もし、後者の話に言及すれば、インドとインドネシアは即座にAIIBからの脱退を宣言するぐらいのインパクトあるで?

*1:この3国で、融資枠の57%を食いつぶしている