gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

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騙されるな、空前の電気自動車(EV)ブームは空振りに終わる(大原 浩) | マネー現代 | 講談社

相変わらず次世代環境車の議論が盛んで、その本命として扱われるのが電気自動車である。
(中略)
欧州あげて次世代環境車として推進していた「ディーゼル車」が大コケした後、ドイツを中心とした欧州の各国政府が急速に電気自動車普及へ舵を切ったのは明らかである。
また、中国が電気自動車導入に必死なのもアナログなガソリン自動車やハイブリッドでは日本勢に永遠に追いつけないからである。
しかし少なくとも現状では「ハイブリッド」が環境車の本命である。自動車自身で発電するため送電ロスがほぼない(つまり超電導が必要無い)だけでなく、これまで無駄に捨てていた、ブレーキを踏んだ時の抵抗力などもエネルギーとして再利用できるすぐれものである。
しかしこの分野ではトヨタやホンダ(特にトヨタ)が市場を席巻している。欧米や中国の政府が、自国メーカーが太刀打ちできない分野を無視するのも当然である。
(中略)
今回の「電気自動車ブーム」が始まってすでに10年は経つと思うが、読者が街で電気自動車に遭遇することはまず無いはずである。逆にハイブリッド車とは数え切れないほど出会っているはずである。消費者目線で考えれば結論は明らかなのである。
(中略)
電気自動車が伸びなかったのは「電池」という決定的弱点があったことが大きな原因である。
化石燃料と比べ、単位質量あたりのエネルギー量が全く少ないうえ、それを補充するのに相応な時間が必要になるのである。
(中略)
また充電時間はもっと絶望的だ。日産「リーフS、X、G」(EV)の80%の充電を行うのに、急速充電で40分かかる。テスラ「モデルS」は専用充電器で80%から満タンにするのに30分から1時間必要である。
(中略)
電解質を全く新しいものに変える「全固体電池」のような技術的ブレーク・スルーが無ければこの問題は解決できない。
(中略)
欧州各国や中国政府の電気自動車が普及する、させるという話は、官僚が頭で考えた机上の空論である。
(中略)
そもそも、燃料のガソリンの安定供給が長期に見込めるのに、電気自動車が脚光を浴びた理由は何か。
説明するまでもなく地球温暖化が世界的な問題として急浮上し、ガソリン自動車は二酸化炭素排出の元凶としてやり玉に挙がったからだ。
確かに電気自動車そのものは二酸化炭素を排出しないかもしれないが、いまだ発電所化石燃料を燃やす方式が主流を占めている。
(中略)
一時期は「火事が起こらない安全性」が強調されて人気を博していた「オ―ル電化」だが最近はほとんど耳にしない。東日本大震災の際に、オール電化は停電したらどうしようもないということがよくわかったからであろう。ガスの供給が止まるリスクよりも停電のリスクの方がはるかに高い。
(中略)
地球温暖化よりもはるかに恐ろしいのが「太陽風」による「磁気嵐」である。この「太陽風」は美しいオーロラを楽しませてくれるが、大規模なものは、電磁波によって地上の電気システムをすべて破壊してしまうのだ。
(中略)
電気自動車と並ぶ次世代環境自動車の花形は水素自動車だが、こちらも普及への道のりは平坦では無い。
水素ステーションの建設がネックなのだが、トラックやタクシーなどの決まったルートや範囲を走る業務用自動車においては、ステーションの数の少なさは問題になりにくい。トヨタ自動車が、業務用での水素自動車普及に力を入れているのは当然とも言えよう。
(中略)
しかし、それよりもはるかに合理的で普及の可能性が高いのがLPG自動車あるいはその延長上のLNG液化天然ガス)自動車である。
(中略)
二酸化炭素排出量を全くゼロにするというのであれば水素しか選択枝が無いが、LPG、LNGもガソリンやディーゼルに比べれば二酸化炭素などの環境負荷はかなり低いのだ。しかも燃料費が安い。
(中略)
自動車産業は政治的思惑に左右されることも多いが、投資家などは消費者フレンドリーなこのLPG・LNG分野にこそ注目すべきである。発電においても、石炭・石油から環境負荷の少ない天然ガスLNG)への移行が着実に進んでいることを見るべきであろう。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57205

色々と認識がおかしいから、結論もおかしいタイプの駄文。
原子力は、地球温暖化の観点では間違いなくクリーンエネルギーだし、オール電化は今でも進行中で、IHクッキングヒーターはどんどん普及しているし、震災時は1日以内に50%、3日以内に80%以上の復旧を果たした電気に対して、80%復旧に1か月以上かかったガスの方が災害に強いとか、事実誤認も甚だしい。
ついでに、磁気嵐で電子部品が死んだら、ハイブリッド車だって動かねーよ!
そもそも、ハイブリット車の歴史は古く、試作車がベンツで作られたのが1982年、世界初の量産ハイブリッド車*1としてプリウスが発売されたのが、1997年だ。
この間、15年。
そして、原油高でシェアを飛躍的に伸ばしたハイブリッド車が普及した今日まで、プリウス発売から21年掛かっている。
普及開始から20年も経って「巷で全く見かけない」なんて状況なら、そもそも「普及」とは言わんし。
ハイブリッド車は自社のエンジンにプラスアルファで作れるから、トヨタ以外の参入障壁も小さかったし、ガソリンが主燃料である事に代わりは無いから、供給インフラを新しく作る必要も無い訳で、プリウス以降、原油高によるガソリン高騰で各社ともに生産を進めた訳だが、バッテリーの問題をリチウムイオン電池で解決できるようになったピュアEVの歴史は、00年代後半からと、まだまだ浅いし、新規に給電インフラが必要なので、普及に時間が掛かるのは当然。
更に、テスラが2009年にピュアEVの量産販売をスタートしたが、ハイブリットカーで言うなら試作車レベルの成熟度の内に量産販売をスタートしたようなもので、その完成度が低いのも、当然と言うべきだろう。
LNG車に関して言うなら、技術的に「先が無い」のが一番の問題になる。
ピュアEVは、上記したように「課題が多い研究・試験レベル」を無理やり実用化した結果だが、逆に言えば課題が克服されれば、これが最終的な主流になる事は、疑いようが無い。
そして、日本が進めている水素燃料電池車は、バッテリーの代わりに水素燃料電池を使っている事以外は、ピュアEVと基本的な構成が変わらず、仮に水素燃料電池の開発に失敗しても、無駄になるのは「電池」の部分だけで、水素燃料電池車の研究自体には無駄が無い。
…そもそも、水素燃料電池の研究も、安全性向上・効率向上・コストダウンの研究段階なので、今から総ゴケするリスクは極小なのだが。
対して、LNG車は現時点で技術的にほぼ完成しており、化石燃料からの脱却、CO2排出量の削減という目標に対して、改善の余地が微塵も無い。
つまり、LNG車を研究開発しても、近い将来には「全部無駄」になってしまうのだ。
最大限、楽観的に見積もっても、ピュアEVや燃料電池車が量産普及されるまでの過渡的な一時利用にしかならないので、それなら既存のハイブリッドカーを開発継続した方が、追加の研究投資が必要ない。
第一、日本のパクリで成長してきた中韓が、揃って「燃料電池車に投資を」と叫んでいるのが、日本が特許を独占して主導研究している*2燃料電池の有望性を証明して居るって話。
タイトルの「騙されるな」は、この記事自体に、と言うオチですな…。
尤も、本来なら水素燃料電池も、潜水艦に導入できるぐらいの実用度に達している予定だったのが、搭載がまるっと延期*3されるぐらい開発が遅延しているのも事実なので、燃料電池車も、あと10年くらいは研究・試験レベルだという、長い目で見る必要があると思うけど。

*1:厳密には、少量生産だが市販された世界初だと、アウディが世界初になる

*2:中韓は日本からパクれば良いと考えているが、知財の怖さを知る欧米は特許を握られているので燃料電池車を作りたくない

*3:リチウムイオン電池搭載も、軽く10年ぐらい遅延して居るぐらい、潜水艦が安全性に慎重だ、と言う話でもあるが